アイスランドを代表するポスト・ロック・バンド、シガー・ロス。そのフロントマンであるヨンシー・バーギッソンが、初のソロ・アルバム『GO』をリリースする。シガー・ロスのどのアルバムとも、昨年発表したアレックス・ソマーズ(シガー・ロスのヴィジュアル・デザイナー)とのコラボレーション・アルバム『ライスボーイ・スリープス』とも異なるサウンドが詰まった、注目作だ。まずは、ソロ・アルバムを制作することになったきっかけについて、彼の言葉を聞いてみよう。
「これまで書いてきた曲の中に、“バンドとしてはどうもしっくりこない”というものがたくさんあって、それらをエレクトロニック、アコースティック、アンビエント、ポップというように、別々のフォルダーにしまっていたんだ。いつか、何かのプロジェクトにしようと思ってね」
そして'09年の春、アレックスの助言を得て、素材となる曲を25曲から11曲に絞り込んだヨンシーは、インターポールとの仕事で知られるプロデューサー、ピーター・ケイティスと共に、彼のスタジオでレコーディングを開始した。しかし、その制作作業は、当初目指していたものとは全く違う方向に変化していったという。
「取りかかった頃は、落ち着いたアコースティックなアルバムにしようと思ってたんだけど、なんか途中から爆発しちゃった感じなんだ」
その結果、ヨンシーに対する従来のイメージからはなかなか想像できない、華やかにして開放的な音世界が完成した。彼自身の予想をも越えたカラフルな楽曲群は、正に“GO”というアルバム・タイトルに相応しいものとなっている。ヨンシーの代名詞であるファルセット・ヴォーカルも、伸びやかで印象的だ。
それにしても、なぜヨンシーは途中で“爆発”したのか? その原因は、本作のコラボレーターであるニコ・マーリー(ビョークやアントニー&ザ・ジョンソンズとの仕事で知られる作曲家/ピアニスト)にあるという。
「ニコと知り合った最初の夜に、もう五種類のアレンジを思いついたほどなんだ。二人で、ある曲について、“小鳥や動物がたわむれる、おとぎ話のような庭をつくろう”とか話し始めると、ニコがちょっとコードを弾いてみるんだよ。すると、信じられないようなことが起きるんだ」
さらにもう一人、元ムームのドラマー、サムリ・コスミネンの存在も、本作には欠かせなかったそうだ。
「サムリときたら、何にもないところからつくり出すんだ。ガラクタを持って現れて、そいつを叩きだす。ケースでさえね」
ギターやピアノはもちろん、ハーモニウム、ストリングス、パープ、ブラス、鉄琴、カリンバ、ウクレレ、さらにはミツバチの羽音や、小鳥や動物が戯れる音までも導入し、“正気の沙汰とは思えない密度”とピーター・ケイティスが語るほど、自由奔放な音響世界を構築している『GO』。本作は、ヨンシーの新たなる魅力を満喫できる、爽快にしてマジカルなアルバムだ。


