2007年にテクノ・レーベル、AsianDynasty Recordsよりファースト・アルバム『Little Squeeze Propaganda』をリリースし、東京を拠点にDJ/ライブ活動を行っているJunichi Watanabe。クラブ・ミュージックのプロデュースのみならず、美術館への楽曲提供や舞台音楽演出、DVD作品や写真インスタレーション展のサウンド・プロデュースなど、さまざまなカルチャーとリンクしながら作品を発表している、新進気鋭のアーティストだ。
そんなJunichi Watanabeが自身のレーベル、ナインスリー・レコーズより、最新アルバム『コンビナートデ鳴ラスベキ音楽』をリリースした。現在、サブカル・シーンで注目度の高まっている工場観賞に、ビジュアルとサウンドの両面からスポットを当てたという本作。コンビナートの風景を、金属の重厚さを表現したインダストリアル・テクノ、歪んだギターが錆び付いた機械を想起させる重厚なスチーム・パンク、縦横無尽に駆け巡る配管をイメージさせるアシッディーなブレイクビーツ、巨大な迷宮のようなコンビナートを想起させる荘厳なエレクトロニカなど、多彩な切り口で表現した異色作だ。
また、本作に同梱される16ページのブックレットには、写真集『工場萌え』で知られる石井哲が撮影した、そびえ立つ煙突や、要塞のような工場群の写真を掲載。日常生活ではなかなか触れる機会のない、コンビナートの圧倒的な存在感を目でも味わうことができる。
そこで、CDとブックレットからなるコンセプチュアルな作品、『コンビナートデ鳴ラスベキ音楽』の制作背景と内容に迫るべく、Junichi Watanabeに対面で話を聞いた。

――まずは、エレクトロニック・ミュージックに興味を持ったきっかけから教えてください。
「最初は、小学校高学年の頃、クラフトワークのアルバム『放射能』から入って、純粋に、面白い音楽だと思って聴いていました。そのままエレクトロニック・ミュージックに興味を持ち出したわけではなく、中学の頃は、ニルヴァーナやソニック・ユースといった、オルタナ~グランジ系のロックをよく聴いていましたね。その時に、“ギターかっこいいな”と思って、音楽に漠然と興味を持ち始めたんですよ。で、僕が中学生だった1993年に、YMOが再結成したんですが、そのときに、見たことのない機械を無表情で操作しているYMOの姿に衝撃を受けたんです」
――テクノ・ポップからエレクトロニック・ミュージックに興味を持ったんですね。
「そうですね。しばらくYMOを聴いていたんですが、'94年頃、友達から、“今はエイフェックス・ツインが流行っている”と聞いて、エイフェックス・ツインの『Classics』を買ったんです。『Classics』は、今聴いたら、普通の四つ打ちではなくアシッド・ハードコアだと思うけど、当時はそれを聴いて、“これがテクノなんだ”って思ったんです。そこで、シンパシーを感じたというか、ロックとテクノが自分の中でつながったんですよ。YMOのポップな音よりも、ディストーションがかかったギターやベースと、エイフェックス・ツインの破壊的なサウンドがイコールになったんです」
――ユニークな共通点を見つけたんですね。
「それで、エイフェックス・ツインを全タイトル聴きまくっているうちに、曲の構造が意外とシンプルなことに気付いて、これなら自分にもできるかもと思ったんです。それまでに聴いてきた音楽と違い、ドラムやベースがグイグイとリードしていく音楽は初めてだったんで、機材を揃えたらつくれそうと思って。そこでシンセを買って曲づくりを始めたのが、高校一年頃でしたね」


