――重機を思わせるインダストリアル・サウンドが、本作の軸になっているように感じましたが、サウンド・メイキングのポイントを教えてください。
「工場では、超高周波や低周波、ランダムなプレス音など、様々な音が聞こえてくるんですよ。本作では、そうした、“いろんなものが組み合わさって、一つのシステムとして機能しているコンビナートの構造”も表現したかったんです。あと、フィールド・レコーディングした音素材も使おうかと考えたけど、それだと誰にでもできるし、作品としてアバンギャルドすぎるので、音も一つ一つゼロからつくりました。自己満足的な内容ではなく、聴き手のことを考え、ポピュラリティーのある作品になるよう心がけました。自分で聴くならフィールド・レコーディングの音や、サイン波だけで十分なんですけどね(笑)」
――無機質な機械音だけでなく、ピアノやギターといった生楽器も用いていますよね。
「ピアノとギターは、機械に対する人間としての主張という意味もありますね。結局、工場をつくったのも働いているのも人間なので。それは一番意識した部分で、自分が求めたのは、機能美だけでなく、その風景を見たときに、一体何を思うか、ということなんです。その感覚を聴き手と共有したいというか、自分が表現した音から、聴き手がそれぞれ何かをイメージしてくれたらと思っています」
――そういう面では、本作は、DJユースなダンス・トラックというより、リスニングにも向いた作品ですよね。
「そうですね。クラブ・ミュージックって狭義では、楽しく踊るための音楽だと思いますが、それだけじゃないと思うんですよ。チルアウトやアンビエント、IDMもクラブ・ミュージックですし。それに、本当に上手いDJって、四つ打ちだけじゃなく、様々なジャンルのダンス・ミュージックで楽しませてくれますよね。だけど、テクノDJの場合、あくまでビートを繋げていくのが前提となっていることもあって、四つ打ち以外の楽曲に対して排他的ですよね。それに、似通った楽曲も多いし、ちょっと保守的になりすぎているように感じています」
――なるほど。確かに、ごく近いジャンルとの交流で、少しずつ変化してはいるものの、“全く新しい音”は生まれにくくなってきていますよね。
「そうですよね。そんな中で自分が提示したいのは、“クラブ・ミュージックには様々なスタイルがある”ってことなんです。DJもリスナーも、もっと視野を広げて、新しい音楽に目を向けくれたらと思っているし、本作が、そのきっかけになったらいいですね。それに、テクノをはじめ、インストゥルメンタル音楽って、言葉がないゆえに、様々なカルチャーとコネクトしやすいんですよ。なので、音と他の文化が関係しながら、相乗効果で発展していったら嬉しいですね」
photo TETSU ISHII(コンビナート風景)
interview & text HIROKO TORIMURA


