マグナス・ジングマークとオスカー・シモンソンの二名からなる、スウェーデン出身のジャズ・ユニット、クープ。ボーカルとスウィング・リズムにこだわった『Waltz For Koop』を2001年にリリースし、クラブ・ジャズ界に旋風を巻き起こした人気アーティストだ。
彼らが、10年の音楽活動を総括する初のベスト・アルバム『best of KOOP』をリリースした。メンバーのオスカーに、まずは本作をリリースした理由について聞いてみた。
「ここまでの僕らの活動は、アップダウンの連続でね。人気の出る土地や時期がバラバラだから、世界はまだ僕らの音楽を発見している段階なんだなって、実感させられているんだ。このベスト盤を出したのは、クープをもっと知ってもらおうと思ったからさ。単なるベスト盤にとどまらない、良いレコードをつくったつもりだよ」
そんな本作は、大ヒットした「Koop Island Blues (Vo:Ane Brun)」('06)や、「Summer Sun (Vo:Yukimi Nagano)」('01)を筆頭に、彼らの重要曲を網羅したもの。エレガントなクープの音世界を、ストレートに楽しめる内容となっている。彼らにとって特に思い出深い楽曲は、どれになるのだろう?
「「正直な話、今は最新アルバムの制作に意識が集中しているし、過去への執着心はほとんどないね。アーティストにとって、昔の曲を聴くのは古い写真を眺めるのと同じ感覚なんだ。変な髪型や服装の自分を見て恥ずかしくて笑っちゃう、みたいなね。特に、「Glömd」('97)はかなり遠い昔のものに思えるよ。でも、まだ20歳くらいだった僕らが、何者でなぜ音楽を始めたのかってことを、改めて理解させてくれる曲かな。あの曲が誕生した経緯については、CDブックレットに詳しく書いたから、ぜひ読んでみて欲しいな。あと、「Koop Island Blues」も大切な曲だね。 “売れた曲”だし、クープらしい感情が伝わってくる、これまでで最高の歌詞を持った曲だと思う」
では、名作として名高い『Waltz For Koop』時代の楽曲に対しては、今どのように感じているのだろうか?
「あのアルバムは、「Summer Sun」のヒットで大成功を収めたけど、僕らの音楽が間違って解釈される原因にもなった。最初は、僕らのことをレトロ・ジャズ・バンドだと思い込む人達が多かったね。最新テクノロジーがあってこそ実現したサウンドだから、本当はモダンなバンドなのに...」
加えて、オスカーはこんなことも語ってくれた。
「あの頃は、“ジャズ”じゃないジャズが巷にあふれていて、ムカついていたんだ。それらは、ハウス、ソウル、ファンク、ヒップホップではあっても、“ジャズ”ではなかったからね。ただサックスのソロが入っているっていう理由だけでは、絶対ジャズにはならない! それで、スウィング・リズムを取り入れたアルバムをつくろうと思ったんだ」
卓越した作曲センスと確固たるポリシーを武器に、真のモダン・ジャズをクリエイトしてきたクープ。本作『best of KOOP』とは何か、ということを語る結びとして、ここに“KOOPの七ヶ条”をご紹介して、筆をおくことにしよう。
1:ギターは使わない。
2:エレクトロニックでありながら、オーガニックな音を追求する(コンピューター上で、サンプリングを使って構成された音楽なのに、オーケストラが生演奏をしているようなイルージョンをつくり出す)。
3:恋愛をテーマにした、シンプルでダークな感情を秘めた歌詞にする。
4:メロディーはシンプルに。
5:曲の長さは、なるべく短く(曲にとって必要のない要素は、全て排除する)。
6:スウィング・リズムはお約束。
7:バス・ドラムは、極力使わない(バス・ドラムは存在感が大きすぎて、逆にリズムの流れが損なわれる。ロックやヒップホップのリズムに退屈なものが多いのは、バス・ドラムに重きを置き過ぎているからさ。リズムの役割はボーカルをサポートすることで、乗っ取ることではない。クープの音楽は、よくダンス・ミュージックと間違われるけど、正直驚きだよ)。
interview & text FUMINORI TANIUE
translation KYOKO WATANABE



