新境地が表現された
シングルとアルバム
――昨年12月のシングル「moment A rhythm」は、約17分に及ぶ一曲のみを収録したもので、時雨の持つ、“静”の部分に焦点を当てた作品でした。これまでとは違う側面を表現したことには、何か理由があったのでしょうか?
TK「これまでに時雨が表現してきた激しさとはまた違う一面を、アルバム中の一曲ではなく単体で出したかったんです。でも、「moment A rhythm」は、時雨にとって全く新しいテイストというわけでもなかったんですよ。曲の長さも結果的にこうなっただけで、初めから長くしようと思っていたわけじゃありませんでした」
――「moment A rhythm」には、TKさんがイギリスで撮影した写真のフォト・ブックも付いていましたが、このアイディアはどこから生まれたんですか?
TK「一曲だけで発表するなら、何か視覚的なものとリンクさせたら面白いんじゃないかと思ったんです。僕は昔からちょくちょく写真を撮っていて、それをメンバーが記憶していたので、“写真はどう?”ということになりました」
――ニュー・アルバム『just A moment』には、その「moment A rhythm」のショート・バージョンと「Telecastic fake show」という、既発のシングル二曲が収録されています。この二曲を軸にアルバムを制作していったんですか?
TK「制作の段階で、メインの曲を決めることはありませんでした。どの曲を特に押す、というのも実はなくて、フラットにつくっていきましたね」
345「一曲一曲つくりこんでいったんで、それぞれ印象深いですね」
――アルバムのコンセプトが先にあって、それに沿って制作していったわけではないんですね。
TK「そうですね。コンセプトというのは、アルバムが完成したときに自然とでき上がるものだと思っています。ただ、10曲が集まったときの、各曲の聴こえ方はすごく意識しました。イントロの数秒や曲間、音色の一つにも、各曲がお互いの良さを引き出し合う部分ってあると思うんですよね」
――なるほど。曲どうしのバランスに重きを置いていたんですね。サウンド面では、アコギや打ち込み、インストなど様々なテイストを取り入れていますね。
TK「これまで、曲の一部にアコギが登場したことはあったけど、メインの楽器として一曲を通して使ったことはありませんでしたね。「Tremolo+A」は、“アコギで時雨をやってみたらどうなるのかな?”と思い、ツアーで演奏するためにつくったんです。とても時雨らしいし、新しい一面も出た、幅が生まれた一曲ですね」
――アルバムの曲調もそうですが、歌詞においても、人の幸福や楽しさといったポジティブな感情ではなく、切なさや痛み、苦しさといったシリアスな感情を表現しているように感じました。そうした世界観はどのように生まれているのでしょうか?
TK「僕が作詞をしているけど、どうしてそのような詞になるのか全く分からないんです。それが聴き手にどう伝わっているかも、正直僕には分かりません。もちろん、ハッピーな詞だと思われていないのは何となく分かっています」
――作詞では、歌詞に明確な意味を持たせるというより、感覚的に言葉を紡いでいくんですか?
TK「言葉が意味を持つときと、楽器の一部のようになるときは、はっきりと分かれていますね。僕の場合、紙の上に歌詞を書くのが苦手なんですよ。なので、曲を何回も聴きながら、音が求めている言葉や自分の中で何となく見えている景色を歌って、それを書き下ろしていくことが多いです」
――なるほど。アルバムが完成して、全体を通して聴いたときの印象はいかがでしたか?
TK「次につながっていくというか、素直にいい作品になったと思いました。同時に、毎回そうなんだけど、つくり終えていない気持ちもありましたね。それは、あくまでポジティブな意味で、つくり直したいわけではないんですけどね」
ピエール中野「他のバンドにはない感じが出ているので、いい作品になったと思います」


