昨年2009年、約三年ぶりに待望のニュー・アルバム『ジュニア』をリリースした、ノルウェー出身のエレクトロ・ポップ・ユニット、ロイクソップ。彼らが、その『ジュニア』の姉妹作として、かねてより話題を集めていたアルバム『シニア』を、9月8日に日本先行リリースします。同作品は、従来の華麗な音世界とは異なる、趣味性の高いディープなサウンドを探求した注目作です。彼らが本作を制作した理由とは、何なのか? ここでは、その背景を探るべく、メンバーのスヴェイン・ベルゲに話を聞きました。
――昨年『ジュニア』を発表したときから、対の関係となる『シニア』の存在を明かしていましたが、そもそもこのアイディアは、どこから出てきたものだったんですか?
「『ジュニア』と『シニア』を2枚組のアルバムにしてしまったら、リスナーが内容を受け止めきれないボリュームになってしまうんじゃないか、って思ったんだ。曲どうしが、お互いの良さを吸収し合ってしまうとも思った。だから、2枚に分けることにしたわけさ」
――ちなみに、『ジュニア』の反響はいかがでしたか?
「『ジュニア』は、評論家のウケも良かったし、商業的にも成功したけど、まぁ、リリースする度に賛否両論、いろんな反応があるよね。すごく気に入ってくれる人達もいれば、がっかりする人達もいる。そして、この『シニア』には、もっとがっかりする人達がいるかもしれない(笑)。でも、別にいいんだ。『シニア』は、僕らが出さなきゃいけないって感じたアルバムだから」
――そんな本作『シニア』の内容は、あなたの言う通り、『ジュニア』とは正反対の、インストで、内省的なものとなっていますね。
「『ジュニア』は、エネルギーにあふれた、外交的で、若さを感じさせるアルバムだったけど、『シニア』はもっと内向的で、よりダークな世界に傾倒したアルバムになっているんだ。イマジネーションの栄養になるようなアルバムじゃないかな。現在の僕らっていうのは、“若者”と呼べる年齢でもなければ、“年寄り”にもなっていない(笑)。今、僕らは、ちょうど“ジュニア”と“シニア”の狭間にいるんだ。このアルバムを制作する際には、年をとっていって最終的に死に向かうっていうのは、どんなことなんだろう?って、ちょっと想像したね」
――なるほど。「シニア・リヴィング 」や、「ジ・アルカホリック」「ザ・ドラッグ」といった曲名は、実際にあなた達が感じたこと、体験したことがインスピレーション源になっているんですか?
「そうだね。僕らはいつも好奇心旺盛で、いろんなことにトライするタチだから(笑)、音楽に表現されることは、実際の体験が多いのも事実さ。自分たち自身や、身近で起こった何かがね」
――曲づくり/音づくりで意識したことは何でしたか?
「この『シニア』では、自分たちがやりたいことは何でもやりたいって思っていたから、曲の長さも含めて、作品をアートとして妥協なく、つくり上げていったよ。『シニア』のサウンドは、自分たちのイメージ通りになるよう、相当コントロールした。だから、セッションで曲をつくりあげるようなことはしていない。'70年代の電子音楽に入っているようなヒス音(ノイズ)を、意識的に残したりもしたね。そういう雰囲気を大事にしたかったから」
――ちなみに、『ジュニア』リリース後、『シニア』の内容には何か手を加えたりしましたか?
「ちょっと変更した部分もあったけど、大きな変更はなかったよ。もっと一貫性が出るように調整したような感じ」
――本作全体のムードを決定づけた曲は、どれでしたか?
「たぶん、「シニア・リヴィング」だね。年をとっていくことに関する曲だから(笑)。あと、最後の2曲、「カミング・ホーム」と「ア・ロング・ロング・ウェイ」も、正しいアルバムのエンディングを表現している、重要な曲になったと思う。すごく良いエンディングになった」
――あなた達は、本作の内容に関して“各トラックを単体で分けて聴いて欲しくない”というコメントを出していますが、本作には、トータル・アルバムとしての価値をリスナーにもう一度思い出してほしい、という思いも込められているんですか?
「“そういう聴き方でこのアルバムを聴け!”なんて言うつもりは全くないんだけど、オプションの一つとして、そういう聴き方もあるってことを伝えたかったんだ。ある意味、昔のアルバムへのノスタルジーとリスペクトっていうのかな。僕らが子供だった頃、例えば親のステレオでビートルズの『サージェント・ペパーズ』を聴いたりした時は、一曲ごとに区切って聴くアイディアなんて、もちろんなかった。でも、僕らよりも若い年代の人たちは、全然そういう聴き方をしないよね。それが“今”って時代だと思し、それも悪くはないよ。ただ、この作品にはそういうコンセプトがあるっていうオプションを、リスナーに提案しただけさ」
――分かりました。では最後に、ロイクソップの次なる目標を教えてください。
「次の目標は、もうちょっと分かりやすい作品をつくること(笑)。それは『ジュニア』的になるかもしれないけど、方向性はまだ決まってないね。今、新しい作品に取り組み始めたところなんだ」
interview & text Fuminori Taniue
translation Nanami Nakatani
photo Stian Andersen


