ーーなるほど。夜3時のフロアを見てひらめいた、ということですが、どんな要素を持つ楽曲が、『夜ジャズ』シリーズに適しているのでしょう?
「『夜ジャズ』をコンパイルする際にいつも意識しているのは、エドワード・ホッパーの『Night Hawks』という絵画の持つ世界観なんですよ。あとは、今回のジャケットには、名前もついてないような、NYの裏通りの写真を使ってるんだけど、こういう、夜のストリートの雰囲気を連想するような曲を、これまでに選んできました。夜ジャズを聴いてもらうと、サウンドスケープが浮かんでくるような、そういうイメージの曲ですね」
ーー作品と連動して、イベントも開催されていますが、そこには、現場でジャズを体感してほしい、という思いがあったのでしょうか?
「実は、イベントは後づけだったんですよ。ジャズ・シーンでは、古い曲から新しい曲まで体系立てて聴くスタイルがメインストリームなんですね。ただ、若い人にとっては、どこから聴いていいかわからないし、敷居が高いイメージがあるんですよ。それで、双方のリスナーをつなぐ接着剤の役割として、イベントを始めたんです。“クラブ・ミュージックを通過した耳で聴く、黄金期のジャズはこういうものだ”というコンセプトが自分の中にありますね」
【ダンス・ミュージックを通過した世代が生み出すジャズ】
ーーでは、今回の『須永辰緒の夜ジャズ・外伝~All the young dudes~すべての若き野郎ども』のコンセプトを教えてください。
「“~All the young dudes~すべての若き野郎ども”というサブタイトルが付いているけど、そもそもは、これが本タイトルで、“夜ジャズ外伝”はつけ足しだったんです。今までの『夜ジャズ』とは、全く違うコンセプトだから、“外伝”なんですよ。オーセンティックなジャズが好事家の間で脈々と聴かれている中に、若い子はなかなか入っていけないんですね。だけど、ジャズの理論を勉強した上で、タテノリの曲をやっているSOIL&"PIMP"SESSIONSをはじめ、日本には、世界に誇るジャズ・コンボがたくさんいるんですよ。どんな形にせよ、みんな、“ジャズはジャズ”という気持ちでやっているんですよね。そういう世代がたくさん出てきているので、それを一度コンパイルして、紹介したいと思っていたんです」
ーーなるほど。今回は、自己流のジャズを表現しているアーティストをピックアップしたんですね。
「ジャズのルールや決まりごとよりも、自分たちの考えるジャズを実践しているバンドですね。ジャズの影響を受けて、アコースティックな初期衝動としてのジャズをやっている世代。その多くは、ハウスやヒップホップなどダンス・ミュージックの洗礼を受けていて、その上でジャズをやっているんですよ」
ーー本作は、『夜ジャズ』シリーズの中でも、ジャズを知らないリスナーにも親しみのあるアーティストが、とりわけ多く収録されていると感じました。
「そうですね。ただ、言ってることは相反するけど、これが王道のジャズかといったら、それはどうかな? と思うんですよ。古いジャズを否定しているわけではなくて、古いジャズに、2000年代型のイディオムを加えてリロードさせると、こうした形になることもあるということです。収録アーティストは、みなさんスタンダードのセッションもできるし、古いジャズに敬意を払っていますから」


