ーージャズという音楽が、時代によって様々な要素を取り込み、変化する余地があるから、2000年代的な解釈な楽曲が生まれていくのでしょうか?
「それは逆で、ジャズは基本的に変わらないんです。'60年代に雛形ができて、そこから、フュージョンやフリージャズなどいろいろな潮流が生まれたけど、基本的にオーセンティックなジャズの概念は変わらず、インプロビゼーションと演奏です。それと、今回コンパイルしたジャズの何が違うかといえば、ダンス・ミュージックを通過しているかどうかということなんです。ジャズしか勉強していない人が、クラブ・ジャズのような音楽をつくろうとしても、恐らくできないと思います。ジャズは、クラシック / ジャズ・オーディオで聴くことを前提につくられたものが多いけど、ダンス・ミュージックを通過した人の手にかかると、コンポーズやアレンジだけではなく、トラックダウンで上がってくる音も変わってくるんですよ。要するに、クラブの音響に適した音が分かっているということです。そういう曲は、ジャズとして聴くには不自然でも、ダンス・ミュージックと並列して聴くと極めて自然なんですね」
ーー本作のラインナップを見ると、ダンス・ミュージックを通過したジャズのアーティストがこんなに集まるほど、シーンが充実していることが分かりますね。
「そうですね、極めて健全だと思いますよ。'90年代初頭、イタリアにスケーマというレーベルができて、そこからクラブ・ジャズ系のアーティストがたくさん輩出されたんですね。彼らがフランスやカナダ、ノルウェー、フィンランドなど世界中を手引きして、バンドにDJがいるけど、ECMレコードからリリースするようなアーティストが、世界中から出てきたんです。そういう流れは当初から知っていて、日本からも、もっと出てきても良いんじゃないかと思っていたんで、今の状況は非常に喜ばしいですね」
ーー本作を聴くと、一口にジャズといっても、バンドの形態も、アウトプットの方法も実に多彩だと感じました。リスナーには本作をどのように楽しんでほしいですか?
「このアルバムに限ったことじゃないけど、音楽はパッケージあってのものだと思っているんです。ジャケットを手に取って、眺めながら聴きたいので、最近はCDしか出てないものも多いけど、レコードで出ているものはそれを買いますね。音楽は、ジャケットも含めてのトータルアートだと思っているので、CDの中身はもちろん、いつもジャケットにも力を入れているつもりなんです。だから、パッケージを大事にしてほしいという啓発運動の一環として、こういう作品をつくっているんですよ(笑)」
ーー以前にLOUD本誌で行ったインタビューでは、“アンチ・デジタル”とおっしゃっていましたが、パッケージへのこだわりは、それともつながるんでしょうか。
「音楽をパッケージで聴くこととはまた別の話だけど、DJとしては、完全にアンチ・デジタルですよ。デジタルどころか、最近はCDも使わないくらいですから。リスナーにとって、配信音源は便利だけど、DJとしては、音質面でお客さんにストレスを与えたり、いろいろと不都合がありますから」
ーーなるほど。デジタル音源が普及し始めてからは、作品に対する愛着が薄まってきたというか、気軽に取り扱われることが増えたように思います。
「ただ、アルバムを一回聴けば十分というような、消費されるような音楽をつくってる作り手も悪いんですよ。とりあえず耳ざわりのいい、安易なコンピレーションや、カバー・アルバムをつくって配信するだけという状況に慣れてしまうと、ユーザーが麻痺してしまう恐れがあるんですよね。一方で、魂込めて音楽をつくっている人もいるわけですから、全てを同じ並びで聴いてしまうと、音楽文化はどうなってしまうんだろうという懸念があります。ただ、自分としてはパッケージが好きだから、純粋に仲間がほしいんですね。だから、全てを含めて楽しんでほしいですね」
interview & text HIROKO TORIMURA


