胎児のように未完成な作品?
――本作のタイトルを、“エンブリオニック”(embryonic:胎生のような/胎芽的な/胎児の)としたことは、作品に影響を与えましたか?
「もちろんさ。“エンブリオニック”は、良い意味で自分達を先導してくれた言葉だったよ。この言葉を手がかりに、いろんな曲をつくることができたし、“エンブリオニック”という言葉の通り、曲をまとめ過ぎずに、ある種未完成のままでアルバムを発展させていくことができたと思う」
――なるほど。“エンブリオニック”をタイトルにした理由は、何かありましたか?
「とりあえず、短いタイトルにしておきたかったということはあったね。これまでは、長い文章のタイトルが多かったから。それに、みんなにいろいろ意見を言ってもらって、“ああ、そうですか”って感じで、ちょっと適当にタイトルを決めておくのが好きってこともあったな。このタイトルは、見た目にも発音的にもいい感じだよ。サイケデリックだし、サイエンティフィックだ」
――確かに。
「あと、僕の甥っ子がやっているスターデス&ホワイト・ドワーフス(Stardeath & White Dwarfs)というバンドが、この間『The Birth(誕生)』というアルバムをリリースしたんだけど、その時に、“だったらオレは、‘誕生’の前をいくアルバム・タイトルでいっちゃおうかな”って思ったんだ(笑)。ちなみに、『The Birth』のアルバム・カバーには、男性の写真が使われているんだけど、その男はザ・フレ−ミング・リップスのカバー・レイアウトをよくやっている、ジョージ・ソールズベリーなんだよ。そして、『エンブリオニック』のアルバム・カバーで使った写真の女性は、実はジョージの奥さんなんだ(笑)」
ジャムから生まれた楽曲群
――楽曲面、サウンド面についても聞かせてください。先ほど、“曲をまとめ過ぎない”と言っていましたが、確かに本作には、ジャム・セッションをそのまま生かしたようなスタイルの楽曲が数多く収録されていますね。
「そう、その通りだ」
――本作の曲づくりで特に重視したことは、何だったのでしょうか?
「今回は、僕がメンバーを引っ張っていくような感じで作業を進めていったね。僕自身は決して良いミュージシャンじゃないから、みんなの方が僕に上手くついてきてくれて、結果としていいインプロヴィゼーション(アドリブ演奏)ができたんじゃないかと思っているよ。これがもし反対の立場だったら、大変なことになっていただろう(笑)」
――なるほど(笑)。
「僕が、“もうちょっとテンポを上げてみよう”とか、“この部分はこうしてみよう”とか言うと、みんなの方で、“なるほど、きっとキミはこういうことがしたいんだね”って、その意図をくみ取ってくれる感じだったよ。みんな僕にちゃんとつき合ってくれて、最終的な曲の形を上手くつくってくれたんだ。本作に参加してくれたメンバーが、それこそジョン・コルトレーンやマイルス・デイヴィスのように、あちこちに音の方向を広げられるミュージシャンだったからこそ、いい内容になったんだ。ま、そんなわけで、このアルバムには、良い意味で抽象的なところがあるね。“あ、これはジャムでできた曲なのかな”、“あ、これはちゃんと作曲した曲なのかな”って感じで、いろんな曲が出てくる、境界線の曖昧な作品に仕上がったと思う」


