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2014年04月02日

INTERVIEW

The Young Punx『愛は蜃気楼のように (All These Things Are Gone)』インタビュー

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Mylo「Destroy Rockn Roll」のパロディ「Destroy Celebrity Crap」をはじめ、数々のウィットに富んだマッシュアップ・トラックでブレイク。2many DJsと共にマッシュアップ~エレクトロの勃興期を支えたヤング・パンクス(The Young Punx)。ノーマン・クックやシザー・シスターズ、果てはティナ・ターナーなどのリミキサーを担当し、多くのアーティストからサポートを受け、ここ日本でもアジカン主催のフェス<NANO-MUGEN FES>に出演するなど、人気を博してきた彼らが、約2年半ぶり、通算3枚目となるアルバム『All These Things Are Gone』(邦題:愛は蜃気楼のように)をリリースした。

今回のアルバムのテーマは、時の旅路。時間の経過と共に失われていくものへのオマージュが表現されており、サンプリングや機材もオマージュする時代のものを使う念の入りよう。ダンス・ミュージックの酸いも甘いも噛み分けたメンバーのハル・リットソン(Hal Ritson)に話を聞いた。


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The Young Punx『愛は蜃気楼のように (All These Things Are Gone)』インタビュー


__まずはアルバムを作り終えた今の達成感からお願いします。

「最高に満足しているよ。まず、アルバム制作というのは本当に作業量が尋常じゃないから、自分の生活の大部分を割かなければならなかった分、その達成感は大きいんだよね。そして、特に今作に関して言うと、自分がやりたい方法でとことん作ることができた。僕のこだわりがどこまでも詰まった作品だって言える」

__ここ数年の世界を賑わせているEDMやファンク・リヴァイヴァルやディープハウスなどのビッグ・トレンドとは、明確に異なるカラーのアルバムになりましたね。今やダンス・ミュージックは大きなシーンに成長しましたが、こうしたシーンに対して、あなたはどのように感じていますか?

「僕の見解としては、もしあるサウンドがトレンドになったとしたら、その時点でそれは既に古びたアイディアなんだ。なぜなら、多くの人たちがその音を真似ているのだったら、それはつまり開拓者であるクリエイティヴな人たちによって、そのサウンドが最初に生まれた時から既に数年経っているということ。僕は常に今の流行やトレンドを追い続けるのは好きじゃない。それを数年以上やり続けてしまうと、自分独自のアイディアを全く持っていないんじゃないかと思われてしまうよね。僕はむしろ、過去100年を彩ったあらゆるトレンドから自分の好きなものを何でも取り入れて、自分自身の経験と融合させたいと思っている」

__なるほどなるほど。では、過去のトレンドを顧みて、ここ数年のダンス・ミュージックで一番変わった点は何にあると思いますか?

「僕たちが前作の『Mashpop and Punkstep』(2010)を制作した時以降、何が起きたかというと、アメリカのマーケットがハウス、トランス、ダブステップといったヨーロッパのアンダーグラウンドのサウンドを取り入れて、商業的には大成功したかもしれないけど、ソウルやグルーヴの感じられないものにしてしまったということかな。それに対して、ディープハウス・リヴァイバルはヨーロッパ、特にロンドンのプロデューサー達による、面白い反動だと思う。僕達の新作は、商業的なEDMを完全に否定するものであると同時に、「All These Things Are Gone」や「La Luna」といった曲ではディープハウス・リヴァイバルの幾つかの側面を取り入れて作ったものだよ」

__実際、あなたのそうしたカルチャーに対する批評性がアルバムには反映されていると思います。進歩の中でカルチャーから失われたものを探るのがテーマというのは、まさにそういうことですよね?

「僕は今のデジタル/ネット文化がだんだん魂のない空虚なものになってきていると思うんだ。ツイッターやフェイスブックによって世界中の人たちと繫がることができるようになったものの、希薄な関係性ばかりが増えていっているよね。そして今、僕たちは職人技、文化、社会、アートといったものがより重んじられていた過去の時代を思い出して、ほっとした気持ちになる。僕だって現代社会で好きなものもたくさんあるし、アルバムにも今のサウンドをたくさん取り入れているけれど、僕はそれでも1700年に建てられた家に住むことを選ぶし、1972年に作られた車に乗ることを選んでしまうんだ。違う時代のものは、今の時代にない何かを感じさせてくれるからね。今作を作る上でのコンセプトの一つに、我々がタイムマシーンに乗って時空を旅しているというのがあった。完全にそれを実現することは今回できなかったけど、テーマとしては残っているんだ」

__レコーディングは、機材も含め、それぞれの時代のスタイルで合わせて制作されたそうですが、一番再現が難しかったのはどの曲だったのでしょうか?

「「Kowloon Kickback」は、実は制作に10年かかっているんだ。全て1930年代の機材を使って録音したスウィングのビッグ・バンドの音源を使用して、そこに伝統的な中国民謡の要素と、デジタル8ビットのサーキットベンディングしたおもちゃの音も取り入れている。全ての構成要素を自分の頭の中で鳴っている通りにレコーディングするのに、もの凄く長い時間がかかったよ」

__ブレイクビーツやファンクやフィルターディスコ、バレアリックなテクノ。ジャジーなハウス。ジャイブ。様々な音楽を引用しながらも、一貫としてバイタルなヤング・パンクスっぽさというのが感じられます。制作する上で注意していたこと、絶対に守っていたことはなんだったんでしょう?

「実際に作っている時は、具体的な青写真があるわけじゃないだ。毎日、自分がワクワクする音楽を鳴らしただけ。それが上手く伝わるようなひな形を探して作品にしていった。でも、君の言う通りで、ヤング・パンクスの曲はどれも必ず過去の音楽的アプローチを一つ、あるいは複数取り入れ、現代的なダンス・ミュージックのプロダクションと組み合わせている。そして、そこには絶対にヤング・パンクスならではの姿勢が一貫してある。どんな音楽性であったとしてもね」


__各楽曲を制作している中での思い出、印象的だった出来事を教えて下さい。

「たくさんあるよ! 「Kowloon Kickback」のアイディアは、香港の九龍にあるナイト・マーケット(夜間市場)を歩いていた時に同時に三つのラジオが鳴っているのを聞いて思いついたんだ。一つはハウス、一つはベニー・グッドマン(Benny Goodman)、それともう一つは中国の音楽が流れていたんだ。タイトル・トラック「All These Things Are Gone」の中の“失ってしまった64のもの”のリストというのは、実は大阪の空港(おそらく関西空港)で早朝に録ったんだ。曲中の静かなところで注意して聞くと、空港の構内アナウンスが後ろのほうで聞こえるよ! 「Detonate」という曲は、オランダの救急車の音を使っている。ドラムとベースラインを足してね。「All These Things Are Gone」をスタジオで一晩中、朝方までかけて作ったその帰り道、自分のiPhoneのマイクに「La Luna」を歌って録った。で、その翌日スタジオにまた行って、今度はその帰り道に録った音源を使って「La Luna」を完成させた。だから車が行き交う音や僕の足音がまだ残っているのが聞こえるはずさ」

__「All These Things Are Gone」は、かつて「Destroy Rock and Roll」をパロディにしたあなたたちからの、ちょっと真面目でアイロニカルなアンサートラックのようにも感じられるのですがいかがでしょうか?

「なるほど。確かにどちらも言葉のリストを使って風刺的な主張をしているね。僕たちの良き友人、FPM(Fantastic Plastic Machine)の「Alphabet」も聴いてみるといいと思うよ。同じような発想だから」

__ノスタルジー感をフレッシュに仕立てる一方で、「Supersonic」みたいにトラップ(Trap)を上手く取り入れた楽曲もあります。最近のダンス・ミュージックで気になっている曲はありますか?

「最近で一番お気に入りのプロデューサーはボビー・タンク(Bobby Tank)だ。ぜひ彼の音楽、特に「Afterburn」をチェックしてみて欲しいな。それからフォナット(Phonat)もいつも素晴らしい。ディープハウス方面だと、今実はデューク・ドゥモント(Duke Dumont)の新作に少し関わっているんだ。凄くいい作品になると思うよ」

__「Polaroid (feat. Darktown Jubilee)」のリリックは、ポラロイドと人生を重ねてとても刹那的なものとして描いていますが、あなた自身はこのような人生をどのように思いますか?

「この「Polaroid」で注目すべき点というのは、誰が歌っているかということなんだ。僕は7歳の時に最初のバンドを組んだ。友達のデヴィッド・ボードマン(David Boardman)と一緒にね。よく二人で一緒に学校に歩いて通いながら、“いつか自分たちは有名なポップスターになるだろうか”なんて話をした。それからもう何年も経って、お互い長いこと会ってなかったんだけど、二人ともかつて夢見ていた通り、音楽をやって生活している。そんな彼と再び組んで、この曲を作ったんだ。アルバムの最後を飾る曲だ。夢を叶える為に頑張ってきたこれまでの道のりを改めて振り返ってみて、感じたまま作った曲だよ」

__あなた達自身はそうした「Polaroid」のような刹那的なライフスタイルとは別に、ユーモアを取り入れながら、とても誠実に音楽と向き合っているような気がします。あなた自身は音楽観を聞かせていただきますか?

「音楽をやっている人間にとって、音楽を作ることは選択するものではないと思っている。逃れようのないものなんだ。むしろ病気に近いよ! 酒を飲まずにはいられないアルコール依存症のようなものかも知れない。だから大事なのは、自分が好きな音楽を作ることに自分の時間を費やすことじゃないかな。当たり前のことのように聞こえるけど、多くの人が“他人が気に入ってくれる音楽”を作ろうと躍起になっている。それでは幸せにはなれないよ!」

__このアルバムでただ一つだけ伝わって欲しいことがあるとしたら、それはなんでしょうか?

「トランペットを一つのアルバムで使い過ぎるなんてことは絶対にないということだね(笑)」


interview/text:佐藤譲


【リリース情報】

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THE YOUNG PUNX
愛は蜃気楼のように (All These Things Are Gone)
(JPN) MofoHiFi Records / MJCP-001
発売中
※日本盤のみ未発表曲含む特別ボーナストラック収録
HMVでチェック

tracklist
01. Harlem Breakdown
02. Girls Like Disco (feat. Birdee)
03. 10:40 To Interlaken
04. Kowloon Kickback
05. 愛は蜃気楼のように/All These Things Are Gone
06. Heart Of The Night
07. Detonate
08. Supersonic
09. La Luna
10. Boys Like Bass (feat. Reset!)
11. Polaroid (feat. Darktown Jubilee)
12 愛は蜃気楼のように/All These Things Are Gone (The Lenno Radio Edit)
13. Map Of Tasmania (feat. Amanda Palmer and Peaches) *
14. Hip and Cool *
* 日本盤ボーナストラック


【オフィシャルサイト】
www.theyoungpunx.jp
www.theyoungpunx.com


【ビデオ/試聴】



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