DJ KAWASAKI インタビュー/LOUD145号
美麗ハウスのエレクトリック・クロスオーバー
ハウス / クロスオーバー・シーン期待の新星、DJ KAWASAKI。2000年に楽曲制作を始めた彼は、G.K.名義での活動を経て、'05年にソロ名義を始動。数々のトップDJを魅了したファースト・シングル「Blazin'」のフロア・ヒットで、一躍クラブ・シーンに名を広めている。'06年8月には、ファースト・アルバム『Beautiful』を発表。この作品は、オリコン・チャートにランクイン、タイトルトラックの「Beautiful」はCMにも起用され、クラブ・シーンを飛び越える話題となった。
そんな彼が、このたび新作『Beautiful Too』をリリースする。新曲、未発表曲に、彼が関わったリミックス・ワークを加えたコレクション・アルバムで、オリジナル・アルバムでは表現しきれなかったクリエイティヴィティーも発揮された意欲作だ。
ここでは、DJ KAWASAKIの音楽観とともに、今作に関わったアーティストたちをご紹介することにしよう。さらに、彼にはNYダンスミュージック界の大御所、ケニー・ドープの作品をリミックスする予定があるとのことで、DJ KAWASAKAIとケニー・ドープの二人に、コラボレーションについても聞いてみた。
—『Beautiful』のリリースによって、何か変化はありましたか?
「地方にDJしに行った時でも、お客さんが僕のことを知ってくれているのは嬉しいですね」
—サイン攻めにあったり?
「携帯にサインしてくれって言われたり(笑)」
—あはは(笑)。KAWASAKIさんのルーツはクロスオーバー・シーンにあると思いますが、『Beauutiful』はハウス・ファンにも支持されましたね。自身の立ち位置については、どう考えていますか?
「みんなにはハウスのイメージが強いでしょうね。でも、僕はクロスオーバー系に近い音楽性を持っているので、DJセットにはジャズ、例えばスリープ・ウォーカーなんかの曲も組み込みます。ハウスを聴きに来たお客さんの前でジャズをかけると面白いですよ。上手くハマれば、すごく盛り上がるんです」
—今作『Beautiful Too』の構想は、いつ頃立ち上がったんですか?
「実は『Beautiful』と同時進行で制作していたんです。ただ、リミックスなどもあって、自分一人の作業ではなかったので、少しリリースが遅れてしまいました。今回もリナちゃんにアート・ワークで登場してもらったんですけど、実はこっそり歌ってもらってもいます」
—藤井リナさんとのレコーディングはいかがでしたか?
「モデルさんなので、歌うのは初めてと聞いていたんですが、すごく歌が上手な人でした。もともとカナダに住んでいたとのことで、英語詞にもすんなりハマっていましたね。作詞はCOLDFEETのLoriさんに頼みました。リナちゃんのデモ・テープを聴いて得たイメージから、高い声で歌ってもらうのが良いと思ったので、基本的なヴォーカル指導もLoriさんにお願いしました。僕も指示はしましたけど」
—自身の楽曲以外で、プロデュースやリミックスを行なう際にも、DJ KAWASAKIとして欠かせないエッセンスを加えると思うんですが、それはどんな要素ですか?
「エッジの立ったビートにするよう、常に心掛けています。前作でも御好評いただいた“カワサキ・ビート”ですかね。その部分は大切にしています」
—DJ KAWASAKI作品といえば、美しいメロディーのイメージも強いと思うんですが?
「もちろんメロディーあってのビートです。曲のなかには、サビやコード以外の、テーマになる印象的なフレーズってあるじゃないですか。そういったパートを最初に考えてから曲づくりをします。セオ・パリッシュのつくるようなデトロイト・ミュージックの、フレーズ・ループみたいなものですね。前のインタビューで“デトロイト系をよく聴きます”と答えたのは、そういったデトロイトのサウンドを勉強しているからなんです。今回やったリミックスのなかにも、オリジナルにはない印象的なメロディーが沢山あるんですよ」
—'06年のハウス・シーンでは、KAWASAKIさんの作品をはじめとする美麗ハウスと、エレクトロ・ハウスがヒットしていました。今後シーンの流れはどのようになると思いますか?
「もっと歌ものはクると思いますよ。DJをしていても反応は良いですし、『Beauutiful』を気に入ってくれたリスナーも多いので、こういった音楽を好む人は多いと感じています。たしかに今のシーンには、エレクトロっぽいディープなインストものが多いと思います。でも、そんな潮流がしばらく続いているからこそ、メロディアスなヴォーカル曲が聴きたくなってきたんだと思います。良いヴォーカリストも増えてきましたね」
—とはいえ、新作にはエレクトリックなテイストもありますね。
「僕がやろうとしているのは歌ものなんですけど、ディープなエレクトロも好きなんで、今作にはシンセ・ベースのエレクトリックな歌ものを多く収録しています。エレクトロ・テイストを好むDJもミックスできるような曲づくりを目指したんです。NYハウスとクロスオーバー・サウンドの融合が前作のテーマだったんですが、今作ではエレクトリックなテイストも受け入れてみました。だからセカンド・アルバムでは、よりエレクトリックな作品が増えるかもしれませんね」
—次回作の予定もすでにあるんですか?
「デモは数曲あがっています。夏ぐらいのリリースに向けて頑張りたいです」
—リミックスで、ケニー・ドープ作品も手がけるんですよね?
「現在進めています。いかにケニーのテイストを自分に取り込むかがテーマですね。今後もいくつかのコンピレーションを出す予定なので、それは未発表音源としてどこかに収録すると思います」
ジャンルを超えてコラボ!
KENNY DOPE × DJ KAWASAKI
—今後お二人はリミックスで共演するそうですが、どういったコラボレーションになるのでしょうか?
(KAWASAKI)「実は、ケニーの新作『Black Roots』を聴いた時に、“これしかない”と思った曲があるんです。アルバム収録曲の「Asian Afro」なんですが、タイトルからしても、ビート、キーボードからしても、良いリミックスができると感じています」
(KENNY)「リミックスでは歌もつける?」
(KAWASAKI)「インストがいいと思ったんですけど、歌詞も欲しいですか?」
(KENNY)「俺は日本語で歌詞を書けないから、良いアイデアかなと思ったんだ。でも、リミックスに関しては全て任せるよ」
—「Asian Afro」をリミックスしたいというオファーについて、ケニーはOKなんですか?
(KENNY)「アーティストだったら“この曲をリミックスしたい”と具体的に思うものだ。その気持ちはよくわかるから、“どうぞ! どうぞ!”って感じだね。曲を指定してきた時点で、何かしらのアイデアがあるってことだろうしな。俺も長年リミックスをやってきたからわかるんだ」
(KAWASAKI)「おぉー! ありがとうございます。最初はヴォーカルも考えたんですけど、これはインストの方がいいかなと思いはじめたので、スペーシーな感じでリミックスできたらなと、今のところは考えています」
—KAWASAKIさんは、なぜ「Asian Afro」をリミックスしたいと思ったんですか?
(KAWASAKI)「キーボードの運びが好みだったんですよ。曲名もいいですよね」
(KENNY)「ブラック・ミュージックのビートに、アジアンな旋律を乗せてみた曲なんだ。だから、タイトルも自然に思いついた」
(KAWASAKI)「日本人の僕が、「Asian Afro」をリミックスしたら面白いと思ったんですよ」
(KENNY)「たしかにね。おそらくプロトゥールスを使ってリミックスするんだろうけど、作業を進めたていく過程で“何だこれ!?”って思うかもしれないな。「Asian Afro」は、普通とは違う制作方法でつくっているから。例えば、ドラムは2トラックで録音している。タイトな音づくりを意識するとき、俺はそんな制作方法をとるんだ」
(KAWASAKI)「ファットなケニー・サウンドの仕組を知る、いい機会になりそうです」
—フィールドも国も違う二人が、音楽制作を通してコミュニケーションを取ることになりますが、そこにはどんな可能性を感じますか?
(KENNY)「今後につながっていくと思うよ。リミックスをまかせたことから、今後アルバムを一緒にやってみようなんて話になるかもしれないしね」
(KAWASAKI)「そうなったら、とても嬉しいですね。ジャズ畑の人たちも、ケニーの音づくりは気になっているので、僕がコラボレートすることは、みんなにもすごく刺激になると思います。ケニーのリミックスを僕が手がけたら、みんなビックリするでしょうね。“どんな経緯でこうなったの!? ”って(笑)」
(KENNY)「俺は誰にでもリミックスをやらせるタイプではなく、普段は内輪で済ませているから、“あれ?”って思う人が多いかもね。今回身内以外でリミックスをやるのは、バグズ・イン・ジ・アティックのオリンと、KAWASAKIだけだろうな。俺の作品に手を触れさせた、数少ないアーティストになるよ」
(KAWASAKI)「そうなんですか!?」
(KENNY)「だから出来上がりを楽しみにしているよ!」
interview & text SOICHIRO NAITO
translation KAZUMI SOMEYA


