JAZZANOVAインタビュー/LOUD167号('08年11月)
ベルリンを拠点とする6人組のDJ / プロデューサー・ユニット、ジャザノヴァ。'02年のファースト・アルバム『In Between』の大ヒットで注目されるようになった彼らは、今やUKのジャイルス・ピーターソンと並ぶ、ジャズ / クロスオーバー・シーンの最高権威だ。近年はSonar KollektivやInnervisionsといったレーベル運営にも積極的で、ジャズに限らずハウスやテクノ、ヒップホップなど、幅広いジャンルで多くの新しい才能を世に送り出している。そのリリース数はおよそ200タイトルにおよび、音楽シーンにおける彼らの貢献度は計り知れない。
そんなジャザノヴァが、このたび待望のセカンド・アルバム『Of All The Things』を完成させた。'60、'70年代のジャズやソウルが持っていた魅力を、プログラミングでアップデートした今作。無機質なサウンドがフロアを席巻する今、あえてオーガニックなベクトルを目指した意欲作だ。
『Of All The Things』で展開されている世界観について、ジャザノヴァを代表してプロモーション来日した、アレキサンダー・バークとステファン・ライゼリングに話を聞いた。
――近年はアーティスト活動と並行して、Sonar KollektivやInnervisionsといったレーベル運営にも力を注いでいましたね。そこか ら送り出したアームなどのヒットによって、クラブ・ジャズ・ファンだけでなくテック・ハウスなどのファンにも、ジャザノヴァの名は広く浸透しました。今のクラブ・シーンに対しては、どんなビジョンを持っていますか?
アレキサンダー・バーク(以下、アレックス)「DJや音楽のスタイルは、ファッションなどのトレンドと共に、早い移り変わりを見せている。そんな中、アームは自分のフォーミュラーを上手く見い出せたアーティストなんだ。彼のように、自分の知識と新しいことを重ね合わせると、何かが起こる。でも今のクラブ・ミュージックには、ありものを再構築しただけのものが多くて残念だな。流行ばかりを追い求めていて、アーティスティックな側面を失っているものも多いね」
――そんな中『Of All The Things』は、独創性の高いオーガニックでソウルフルな作品となっていますね。ステファンさんがシーフ名義でリリースしたアルバムも生音主体でしたが、それとの関係は何かありますか?
ステファン・ライゼリング(以下、ステファン)「うん、シーフからの影響は大きい。シーフの作業は、シンガーや曲主体で制作を進めるものだったんだけど、それは僕らにとって新しいステージになった。そこに長年に渡って影響を受けてきた、ベルリンらしいエレクトリックな要素を加えたのが、今回のジャザノヴァの音楽と言えるかもね」
――エレクトリックな前作に対し、今作はオーガニックですね。この変化はジャザノヴァにとって自然なものでしたか?
ステファン「こういった音になったのは自然な流れだったんだけど、一方で、このアルバムでは意識的に一つのスタイルにこだわったんだ。あまりいろんな要素をミックスし過ぎると、表現が薄まっちゃうような気がしたからね。このアルバムは、感情をダイレクトに伝えられるものにしたかったんだ」
――今作は、ジャズやソウルの普遍的な魅力をコンピューター・ミュージックで表現したかのような作品となっていますが、どんなコンセプトのもと制作を進めたのでしょうか?
アレックス「このアルバムは、あらゆる昔の曲に対するオマージュでもあって、僕らにあるレコード・コレクターとしてのバックグラウンドを表現している。ずっと探し続けているんだけど未だに出合えていない、理想の音をイメージして曲をつくったんだ」
ステファン「幅広い層に楽しんでもらえる、エモーショナルなアルバムにしたかったね。何度も何度も聴ける、ずっと先の未来でも引っ張り出して聴きたくなるような、ニュー・クラシックにしたかったんだ」
――ベン・ウエストビーチやホセ・ジェイムス、ジョー・デューキー、アジムスなど、若手からベテランまで招聘した点も注目ですね。ゲスト陣は、どんな基準で選抜したんですか?
アレックス「僕らの輪の中にいる人達に声をかけたんだ。ベンやホセはジャイルスのレーベルから出しているし、ジョー・デューキーはファット・フレディーズ・ドロップの作品をSonar Kollektivからリリースしている。お金の関係で仕事として付き合うのではなく、7人目のジャザノヴァといったような深い関係を築ける間柄から選んだよ。今回は最初にステファンが曲の骨格をつくり、そこから誰に歌ってもらうかみんなで考えていったんだけど、アジムスが参加した曲だけは例外。あの曲には最初から、最高のブラジリアン・アーティストによる曲をつくるという目的があったんだ」
――ジャザノヴァは6人編成のプロジェクトですが、制作はどのように分担したのでしょうか?
アレックス「今回に限らず、普段からスタジオ作業組と、DJ&レーベル運営組に分かれて作業しているんだ。スタジオ作業はステファンとアクセルが主に行なっていて、アクセルはレコーディングやミキシングも行なう。レーベルのA&Rは主にユルゲンがやっていて、僕はラジオなどを担当することが多い。ビジネス面はクラアスに任せているね。ロスコは他のプロジェクトで忙しくて、実はこのアルバムにはそこまで参加していないんだ」
ステファン「みんな違うことをやっているんだけど、オフィスとスタジオは隣り合っていて、気軽に意見交換できる環境なんだよ」
――日本盤には、テック・ハウスの気鋭クリエイター、ヘンリク・シュワルツによるリミックスも収録されています。彼をリミキサーに起用した理由は何ですか?
アレックス「彼は僕の考えるベスト・リミキサーなんだ。僕らと同じようなバックグラウンドの持ち主で、ジャズやソウルをモダンなものにする才能を持っていると思う」
ステファン「これまでの僕らは、リミキサーとして他のアーティストの作品をクラブ仕様に仕立て直してきたわけだけど、今回はその逆をやりたかったんだ。というのも、今回のアルバムはクラブ仕様っていうわけではないからね。だから、クラブ用に、信頼しているアーティストにリミックスをお願いしたんだ」
――最後に今後の予定と展望を聞かせてください。
ステファン「まず第一に、ジャザノヴァをよりアーティスティックな存在にしたいと思っている。この後はバンドやシンガーと一緒に回るツアーを考えているよ」
アレックス「Sonar Kollektivとしては、もうちょっとジャザノヴァに近いものを出していくようにする。リリース数は減るかも知れないけど、よりアイデンティティーの高い作品を発表していきたいね」


