JAZZTRONIK インタビュー/LOUD151号
Jazztronik
Grand Blue
(JPN) PONY CANYON / PCCA-02457
野崎良太がオーガナイズするミュージック・プロジェクト、ジャズトロニック。クラブ・ジャズ / クロスオーバー・シーンの旗手として、世界的に注目を集める存在だ。多作家として知られる彼は、ここ半年間だけでも、2枚のミニ・アルバム『Love Tribe』と『Beauty-Flow』に加え、ピアノ・ソロ・アルバム『Life Syncopation』と、コンピレーション『ESSENTIAL BLUE -Dance Floor- Compilation by Jazztronik』をリリースしている。
このたび、そんな彼のポップへの探究が、フル・アルバム『Grand Blue』に結実した。ジャズトロニックのネクストレベルが表現された今作には、クラブ・シーンの垣根を飛び越える、高いポテンシャルが詰まっている。
そこでLOUDは、アルバム制作を終えたばかりの野崎良太をキャッチ。新作について聞いてみた。
僕が理想としているビーチ・パーティーを表現できたら面白いなと思ったんです。
ここまでしっかりとテーマを決めてつくったアルバムは初めてです
僕が一緒にやりたいと思う人たちはメジャーに多いんです。
彼らこそ、しっかりと自分を持っているアーティストだと感じるからです。
プロとアマチュアの違い
——今回のフル・アルバムでは、独自のポップさを追求したいと以前からインタビューで言っていましたね。制作を振り返ってみての感想はいかがですか?
「ポップさの追求は難しいことだと痛感しました。ポップな感じを出しつつ、カッコいい音をつくっている人はすごいなと、改めて思いました。自分独自のポップさは、アルバムにまあまあ出せたかなと思っています。ただ、クラブ・ミュージックしか普段聴かない人や、クラブ・ミュージックしか理解しようとしない人には、あまり楽しめないアルバムかもしれませんね」
——なぜそう思うんですか?
「残念ながら、トラックものしか楽しめない耳になってしまっている人っているんですよ。今作にもトラックものは収録しましたが、1曲しかないですからね」
——野崎さんは、メロディーやヴォーカルにポップさを見い出したんですか?
「必ずしもそうとは限らないですけどね。例えば、スイッチがつくるトラックものなんて、すごいポップだと思うんですよ。(スイッチの)使っているネタがすでに有名だからという部分もありますが、ドラムの質感だったり、音色なんかにもポップさを感じさせる要素があると思うんです。とはいえ、今回のアルバムでは、トラックものより、耳にすんなり入ってくる歌ものを意識しました」
——ということは、作曲家としての力量を存分に発揮したアルバムになっているわけですね。
「いわゆる(作曲の)技術を使っている曲もあるし、何となくふと思いついたことを曲にしているものもあります。今回はビーチ・パーティーをテーマに制作を進めたんで、開放的なメロディーを漠然と考えましたね」
——ビーチ・パーティーですか!? 確かに今作にはブラジリアン・テイストの明るさがありますね。それに、ビーチ・パーティーを彷佛とさせる単語が今作の歌詞には多いですね。
「そうそう、“ダンス”とか“サンシャイン”みたいな単語が、多いこと、多いこと(笑)」
——“ムーンライト”とか“オーシャン”もありますね(笑)。なぜ今回はビーチ・パーティーに着目したんですか?
「去年、逗子のビーチ・パーティーに何回か参加させてもらって、とても楽しかったんですよ。それ以外にも最近、横浜ベイクオーターでの野外フリー・パーティーでDJをやりました。普段はクラブに行かないような人や、家族連れの方々も、みんな楽しそうにしていたのが印象的でしたね。去年は福岡の
——これまでは自身の内面を反映した作品が多かったですからね。
「うん。今回テーマを決めて制作が出来たのは、先にピアノ・ソロ・アルバムを出していたからかもしれません。自分の内面性はそっちに出しきっているので、今回は楽しいアルバムにしたいなと思ったんです。とはいえ、静かな曲も収録しました。だって、ビーチ・パーティーがいつもピーク・タイムかといったら、そんなことないでしょ? ビーチ・パーティーにおける一日の流れが表現できたんじゃないかと思います」
——クラブでの活動を主に行っている野崎さんにとって、ビーチ・パーティーを意識することは、大きな心境の変化につながったのではありませんか?
「昔からそういう一面はあったんですけどね。なかなかやる機会がなかったし、環境が整わなかったんです。それに、時代の流れってのもあるでしょ」
——なるほど。ちなみに今の潮流に関しては、どう思っているんですか?
「う〜ん、同じような曲だらけかな...。みんな同じような曲をつくって、楽しいんですかね(苦笑)」
——俗に言う“乙女ハウス”のことですか?
「乙女ハウス、多すぎるでしょ(苦笑)!? DJ KAWASAKIさんは良いと思うんですけど、他は何を聴いても同じように聴こえちゃう。マネという点では、俺の「七色」を最近パクったヤツもいましたね...。まあ、何も乙女ハウスに限ったことじゃなく、オリジナリティーを発揮している曲が昔に比べて少ない。それは作品が出過ぎだからかもしれない。もっとも、クラブ・ミュージックの面白いところは、そんな出過ぎ感にもあるんですけどね。でも、それが現在の飽和状態を招いているんだったら、考えものですよね」
——野崎さんはオリジナリティーの追求を今作に結実させているわけですね。
「そうですね。これが成功したらまた同じような人が出てくるんでしょうね。それは世の中的にどうしようもないんですよ。例えばレコード会社が曲をつくるとき、コンペを開いて曲を集めるんだけど、その時にテーマとして“「七色」みたいな曲”と言っちゃうから、それに沿って制作するアーティストが出てくる。そういう人を、僕はアマチュアと呼んでいます。プロと言い張って曲を出していても、全くもってアマチュアな、素人丸出しな人間が山ほどいるんです」
メジャーとアンダーグラウンドの違い
——では、野崎さんはどんな部分でオリジナリティーを発揮しようと意識していますか?
「むしろ何も考えないですね。好き勝手つくることがオリジナリティーを発揮することにつながると思うからです」
——それは、自然と最近の好みを反映させているということですか?
「最近の好みが一番反映されているのは、唯一収録したトラックものの「BRA, Step」なんですけどね(笑)」
——「BRA. Step」ではビット・チューンっぽい電子音をふんだんに使用していますね。これは新境地ですか?
「みんなそう思うでしょうね。でも、もとからそんなテイストは好きだったんですよ。DJでも最近よくそんな曲をかけています。ただ「BRA. Step」みたいな曲ばかりがジャズトロニックのアルバムに入っていたら、それはそれで“え!?”って感じでしょ?」
——一般的なイメージとは異なるでしょうね。あと今作にはディレイも多用していますね。
「俺も思った! 多過ぎた!?」
——いや、ただ野崎さんはあまりディレイを使わないイメージがあったものでして。
「ディレイ好きなんですけど、いつもやっているエンジニアがディレイの使い方をあまり知らなかったんですよ。最近覚えたらしく、だから今作にはディレイが多い(笑)。綺麗にまとまっちゃうぐらいなら、好き勝手にやってもらった方がいいかなと思った部分はありましたね。ロブ(・ギャラガー)が歌っている「Jazztronik Had a Party」なんかは、もとからダブにしたかったぐらいですし」
——今作にはそんな遊び心が多いですね。例えば、ヴァーバルさん(m-flo)がラップした「Wave Rave」では、ブレイクビーツから四つ打ちに変わっていくトリックが施されていたり。
「恥ずかしいぐらいのフィルがありますよね(笑)。とうとう禁じ手もやってしまいました...。バス・ドラの連打(笑)。遊び心どころか、ふりきってやった一曲ですね」
——他にも自分らしさを上手く表現できたと思う曲はありますか?
「大貫さんに歌ってもらった「雨音」なんかは自分っぽいなと思います。アルバムのなかでは一番静かな曲なんですけど、流れで聴くと逆にピーク・タイム・チューンのように聞こえるんですよね。他は賑やかすぎて、全てこの曲の前座のように聞こえてしまうんです(笑)」
——大貫妙子さん、山崎まさよしさん、今井美樹さんなど、今作にはメジャー・アーティストをゲスト・ヴォーカルに招いていますね。
「それも“ど”メジャーな人をね(笑)」
——はい(笑)。彼らを積極的に起用したのは、どんな想いからですか?
「僕が一緒にやりたいと思う人たちはメジャーに多いんですよ。何でかと言うと、彼らこそ、しっかりと自分を持っているアーティストだと感じるからです。メジャーで長年トップ・クラスにいる人たちのオリジナリティーって、ハンパないですよ。そりゃ、アンダーグラウンドにも歌の上手い人は多いですが、あまり興味が湧かないんです。外国人のモノマネが多いから。どうせモノマネなんだったら、最初から外国人の知り合いに歌ってもらえばいい。モノマネを経てオリジナルなものにしている人となら一緒にやりたいと思いますけど」
——そんななか、今作のリード・トラックとなるブラジリアン・ハウス・チューン「Voyage」を歌った為岡そのみさんは、アンダーグラウンドの人ですよね。彼女は前ミニ・アルバム表題曲の「Beauty-Flow」にもフィーチャーされていました。彼女を現ジャズトロニックのメイン・ヴォーカルと考えているのでしょうか?
「そうですね。日本語の歌は、しばらくタメちゃんでやってみようかと思っています。もっと鍛えたらバケるんじゃないかと期待しているんです」
——ライヴ・パフォーマンスへの期待が高まります。リリース・ツアーはバンド形態で行うんですか?
「フル・バンドでライヴをやります! また、7月で
interview & text SOICHIRO NAITO


