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EL PRESIDENTE インタビュー/LOUD134号

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メロディとビートに理屈は無用 純度100%のグラム・ファンク・ポップ

 スコットランドのグラスゴーは、古くからイギリスの音楽シーンにおける要所に数えられている街だ。最近ではフランツ・フェルディナンドを輩出していることで、みなさん御存じだろう。この土地から、またもや強力な新人バンドが登場した。その名もエル・プレジデンテ。バンド名から汲み取れるユーモア・センスや、ドレスアップ指向の高い写真を見ても分かる通り、彼らはとびきり楽しいグラマラスなバンドだ。  メンバーはダンテ・ギッヅィー(Vo)、ドーン・ツー(Dr)、トーマス・マックニース(Ba)、ジョニー・マックグリン(Gu)、ローラ・マークス(Key/Vo)の5名。彼らが奏でるサウンドは、グラム・ロック、ファンク、80’sポップといったきらびやかな音楽をベースにした、理屈抜きで楽しめる新型ポップ・ミュージック。リーダーのダンテ・ギッヅィーが生み出すメロディー・ラインは、一度耳にしたら誰もが思わず口ずさんでしまうようなスグレモノだ。彼のユニークな声質を活かしたヴォーカル・パフォーマンスと合わせて、それはエル・プレジデンテ最大の個性となっている。  今回リリースされるデビュー・アルバム『エル・プレジデンテ』は、そんな彼らの魅力が全編を通じて堪能できる、カラフルでポップな内容。シングル・カットされた「100MPH」や「Rocket」のプロモーション・ビデオも、往年のMTVを彷彿とさせるポップな出来映えで話題となっている。本国イギリスでは、オアシス、デュラン・デュランなどスーパースター達のサポート・アクトにも抜擢され、じわじわと人気を獲得中だ。  日本でのデビューを控え、昨年11月にプロモーション来日したエル・プレジデンテのダンテ・ギッヅィーに、対面で話を聞いてみた。ちなみに写真撮影の無いインタビューにも関わらず、ダンテさんはステージ衣装さながらのスーツで、上から下までバシッとダンディにキメておりました。

70年代のロック・スターは、グラマラスできらびやかなイメージもしっかり持っていた。 当時の派手な衣装を見ると、僕はあれこそがロック・スターがロック・スターらしく見える要素に思えるんだよ。 僕らはロック・スターではないけれど、ドレスアップに注意を払うことは重要だと思っている。
メロディでもギターでもドラムでも、“ファンキー”という要素は最も大切にしているよ。
グラスゴーのように天候が良くなくて暗いと、明るい雰囲気のものを求めるから、 こういうファンキーで楽しげな曲を自然と書いてしまうのかもね。 アルバムで唯一意図的に考えたのは、幅広いスタイルを持たせたかったから、 それぞれの曲が違ったスタイルであるようにした。 最近出ているアルバムは、通して聴くとフラットなものが多いからね。

―あなた達のバンド名と同じ“エル・プレジデンテ”という名前のカクテルがあるのですが、関係ありますか?
「カクテルの名前とは関係ないよ(笑)。南フランスで何か食べようと入ったガソリン・スタンドで見た乳製品に、この名前が書いてあったんだ。バターかチーズだったな。キューバには、この名前のビールがあるんだよ。“プレジデント(大統領)”って名前はいいなと思って、つけたんだ。ところで、そのカクテルはどういうものなの?」
―メキシコのホテルに由来するカクテルで、ラムにオレンジジュース、レモンジュース、グレナデンシロップを加えたものだそうです。
「テキーラじゃないんだね。ぜひ飲んでみたいね」
―なぜスペイン語の“エル・プレジデンテ”という綴りにしたんですか?
「僕のバックグラウンドはイタリアで、昔からイタリアやスペインを含めた地中海文化やラテンものにとても惹かれているんだ。自分たちにしっくりくる名前だと思ったし、とても強いインパクトのある言葉で、世界共通で通じるからね」
―バンドを結成した経緯を教えて下さい。あなたは以前GUNというバンドに在籍していたんですよね。
「'97年にGUNが解散したあと、ずっと温めていた、自分のバンドをやるというアイディアを兄と一緒に実行に移したんだ。GUNでは、僕はメイン・ソングライターじゃなかったけど、耳で聴いて曲のつくり方を覚えた。それで、とにかく曲を書くという作業が楽しかったんで、たくさんつくっていたら、レコード会社が興味を持ってくれたのさ。そこからバンドが始まったんだ」
―GUNでは、あなたはベーシストでした。ヴォーカリストに転向するのは難しくありませんでしたか?
「GUNのとき、各パートがスイッチしてニルヴァーナやビースティ・ボーイズのカヴァーをやったことがあって、そのときに歌ったことがあるんだ。とっても面白かったよ。そのときから、自分は歌うことが好きなんだって気づいていた。でも、最初は居心地が悪い気分だったよ。フロントマンとして初めて歌った一番最初のライブでは、曲はたくさんあったけど、全くバンドがいなかったんだ。しょうがないから一人でステージをやることにして、バッキング・トラックはテープで流してた。後ろにバンドがいないから、オーディエンスも見るところがないし、ギター・ソロのときは俺もやることがない。それで、でっかいキューバ葉巻をくゆらすというアイディアを思いついたりもしたな」
―あなたの声質はとてもユニークだと思いますが、昔から現在のような声質だったのですか?
「そうだね。デモ・テープを録っていたときからそうだった。自分の声を聴くたびにパニックに陥っていたよ。デモを録るのは楽しかったし、曲をよく聞こえるようにはできたけど、自分の声は好きじゃなかった。でも、多分どんなシンガーも、最初は自分の声が気に入らないと思うんだ。だんだんその声に慣れていくのさ。たしかU2のボノも自分の声が嫌いだって言っていたよね。特徴のある声は、結局そのシンガーの個性になるわけだし、おかげで誰が歌っているのかが分かる。ラジオでエル・プレジデンテが流れて、僕の声を聴いたら、みんなエル・プレジデンテだと判ってくれるんじゃないかな」
―あなた達はファッションも特徴的ですよね。“最近のバンドはTシャツばかりだから、めかしこむのもいいんじゃないか”という発言も読みました。何か参考にしたり、理想にしているイメージはあるのでしょうか?
「プリンスやベイ・シティ・ローラーズなんかに影響されているのかもね。'70年代のロック・スターは、良い音楽をプレイしていたけど、同時にグラマラスできらびやかなイメージもしっかり持っていた。あの当時の派手な衣装を見ると、あれこそがロック・スターがロック・スターらしく見える要素だと思うんだ。僕らはロックスターではないけれど、ドレスアップに注意を払うことは重要だと思っている。僕らのサウンドとマッチしていると思うし、他のミュージシャンと差別化するという点において、音楽以外の要素も重要なんだ」
―他のメンバーとは、トータルのバランスを考えてドレスアップしているんですか?
「ハハハ、僕が指示を出すことはないよ。みんな僕と同じくらいオシャレするのが好きなんだ。みんな楽しんでやってるよ。映画『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』の音楽もやったんだけど、あの映画に出てくる子供たちのように、全員が違う服装なんだ。でも、全体として見たときにはまとまりがあるだろ?」
―もしかしてメンバーを選ぶとき、演奏力よりもルックスを重視しましたか(笑)?
「いやいや。ライブを見てもらえればわかるけど、ちゃんと演奏ができる人間を選んだのさ。音楽以外の部分も見て選んだ人がいるとしたら、ドラマーのドーンかな。女性のドラマーが欲しかったんだ。それは、おそらくプリンスやレニー・クラヴィッツのバンドに触発されたアイディアだ。彼女はとてもセクシーだね。まあ、ドーンも含めてみんな良い演奏をするプレイヤーだよ。ジョニーは最高のギタリストだし、トムはとてもファンキーなベースを弾く。ローラも僕の歌えない部分をちゃんとカヴァーしてくれる。彼女はオペラの訓練を受けているし、素晴らしい声を持っているよ」
―さきほど'70年代のロックスターの話が出ましたが、エル・プレジデンテのサウンドには、ルックスと同様に、ゴージャスでセクシーでポップでファンキーで、という形容詞が似合うと思います。子供の頃から派手な音楽が好きだったんでしょうか?
「もちろん。とてもそうだったと言えるね。僕が子供の頃は、兄や姉が聴いていた音楽に影響を受けたんだけど、兄はAC/DC、アイアン・メイデン、レインボーなんかを好んでいたし、姉は10cc、アバ、イエスのファンだった。そういった音楽に囲まれて育ったから、子供ながらに、いろんな音楽のいろんな部分が好きになったんだ。その後自分で音楽を聴くようになって、昔のP・ファンク、デヴィッド・ボウイ、T・レックス、プリンスなどを好むようになった。だから...派手な感じの音楽が好きなんだろう(笑)」
―'70年代の音楽は、あなたにとって重要なルーツになっているんですね。
「そうだね。新しい音楽ももちろん好きなんだけど、なぜこの音楽ができたんだろう、このサウンドはどこから来たんだろうということが気になるんだ。僕はオリジナルを知りたいと思う人間なんだろうね。初めてプリンスを聴いたとき、すぐに好きになったけど、友達が“あれはジェームス・ブラウンだ”って言うから、当時ジェームス・ブラウンのことは知らなかったけど、すぐに聴いてみた。新しい音楽を聴いて、その源流をたどるのが好きなんだ。サウンド・ガーデンも好きだったけど、あのダークなスタイルはブラック・サバスから来ているんだとわかったよ。ニルヴァーナは最初に出てきたときからダークだったけど、なぜかザ・ポリスを連想させたね。アルバム『ネヴァー・マインド』のメロディの多くは、ザ・ポリスに似ているよ。でも、それは今のバンドが弱いって意味ではないし、彼らの良さを損なうわけでもない」
―曲をつくるときは、“今日はファンクをやろう”とか、“今日はグラムだ”、といった感じでスタートするんですか? それとも、試行錯誤を繰り返すんでしょうか?
「だいたいは良いメロディを思いつくところから始まるんだ。僕はメロディに取り憑かれているからね。メロディが浮かんだ時点では、それがギター・パートなのかヴォーカル・パートなのか分からないんだけど、自分のベッドルームでメロディやグルーヴを、もう一度頭でまわすと、はっきりしてくる。想像力の働くままにやっているから、考え始めると、逆にうまくいかないね。最終的にコーラスやバースをつくるときは、どうすれば最良になるか考えるけど、考えるのはそのときぐらいかな。メロディでもギターでもドラムでも、“ファンキー”という要素は最も大切にしているよ。良いドラムが良い曲のきっかけになることもあるね。昨日ジョニーが言ってたけど、グラスゴーのように天気が悪くて暗いと、明るい雰囲気のものを求めるから、ファンキーで楽しげな曲を書いてしまうのかもしれない」
―そんなにグラスゴーは暗いですか?
「ああ、ヒドイよ。雨ばかりだし、すごく寒い」
―グラスゴーと言えば、中村俊輔という日本のサッカー選手がセルティックでプレイしてますけど、ご存知ですか?
「セルティックは大好きだよ。中村は素晴らしい」
―ああ、よかった。セルティックの宿敵、レンジャーズのファンじゃなくて。
「セルティックの二日前の試合は、まるで天国にいるようだったよ(編注:昨年11月19日に行われた、スコットランドプレミアリーグ第15節、セルティック対レンジャーズ戦のこと。3対0でセルティックが快勝。中村選手は2点にからむ活躍!)。」
―ところで、グラスゴーではレストランも経営しているんですよね。そこでお客さんを観察しながら歌詞を思いつくことが多いと聞いています。
「姉とやっているんだ。以前は店でも働いていたから、そこで曲のアイディアを得ることも多かったね。ボスのような立場だったから、誰かにああしろこうしろと指示を受けなくてよかったし、曲のアイディアが思いついたら“ちょっと出るね”と伝えて、曲を書きに出かけていたな(笑)。ランチ・タイムやディナー・タイムはすごく混んでいたから、“こんな忙しいときに!”って怒られてたけど。まぁ、僕らみたいな仕事をしている人間は、まともな仕事をしてもすぐクビにされちゃうね」
―ファースト・アルバムには、何らかのテーマやコンセプトがあるんでしょうか?
「いや、自然発生的にできたアルバムだと思う。僕らの、“演奏したい音楽をやる”という気持ちからできているんだ。アルバムで唯一意図的に考えたのは、幅広いスタイルを持たせるために、それぞれの曲が違ったスタイルになるようにしたこと。最近出ているアルバムは、通して聴くとフラットなものが多いでしょ。プリンスの『パープル・レイン』やチューブスの『Completion Backwards Principle』などは、全然違う曲が集まった、しっかりとしたアルバムだ。自分たちのアルバムも、そんな全然異なるスタイルの良い楽曲が集まったものにしたかったんだ」
―プリンスが好きなんですね。一番好きなアルバムは、やはり『パープル・レイン』ですか? 『1999』や『サイン・オブ・ザ・タイムス』も名盤ですけど。
「今夜来てくれたらわかるさ。今日のライヴで一曲演奏する予定なんだ。『パープル・レイン』かって? まだ教えないよ!(編注:ライヴで披露されたのは『アラウンド・ザ・ワールド・イン・ア・デイ』(85年)に収録されている「ラズベリー・ベレー」でした。本物のファンらしい選曲に思わずニンマリ)」
―わかりました、楽しみにしています。ともかくデビュー・アルバムは、あなたが言う通り、楽曲のバラエティーがそのまま華やかさにつながっている、良質のポップ・アルバムですね。
「そう言ってもらえると嬉しいね。ありがとう!」
―ライブはイギリスでも評判で、オアシス、デュラン・デュラン、ジャミロクワイなど、ビッグネームとも共演していますね。その反応はどうでしたか?
「ここまでになるとは思っていなかったんだ。いや、本当は期待してたのかな(笑)。最初は注目されるなんて思ってなかったし、純粋に音楽が好きで、好きなことをやっていただけなんだ。僕が昔からリスペクトしていたバンドやアーティストから声がかかるようになるなんてスゴいよ。今、日本にいることだって本当にスゴい。明らかに今年のハイライトだ。バンドそのものは昔からやっていたけど、始めたのは今年の1月なんだから」
―今後の目標や活動予定があったら教えてください。
「アルバムのプロモーション活動が、まだまだ続くんだ。また来日できたらいいね。サマーソニックにも出たいな。今は、東京で新しいPVを撮影しているんだ。これはUKで次のシングルになる「Turn This Thing Around」用」