フルカワミキ

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フルカワミキ インタビュー/LOUD140号

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フルカワミキ
Mirrors
(JPN) BMG JAPAN / BVCR-14031
初回生産限定盤 (JPN) BMG JAPAN / BVCR-11089 通常盤



フルカワミキ 自在な感覚で完成させた、エレクトロ&ロックなポップ・ミュージック


 昨年2月までスーパーカーのベーシスト、ヴォーカリストとして活躍してきたフルカワミキ。彼女がソロ・アーティストとしてデビューを果たし、シングル「Coffee & SingingGirl!!!」に続くデビュー・アルバム『Mirrors』をリリースした。
 本作は、バンド時代に培った音楽的要素を彼女ならではの感覚で捉え直し、フルカワミキ流ポップ・ミュージックとして再構築したかのような内容だ。本人が“エレクトロでちょっとキラキラした感じを出す一方で、弦楽器や夢見ごこちのファンタジックな音も入れました。ちょっとライヴ感のある音もあります”と語る通り、収録された12曲がそれぞれの表情を持つ、ヴァラエティ豊かな作品となっている。エレクトロニック・ポップからギター・ロックまでを違和感なく結合させた、ナチュラルかつガーリーな世界からディープかつエレガントな世界までを包括したサウンドには、まるでポップ・アートのような趣きもある。益子樹、サム・ベネット、芳垣安洋、七尾旅人、勝井裕二、中村弘二、ナスノミツル、山本太郎といった個性的ゲスト陣の参加も話題だ。
 スーパーカーは、同時代のエレクトロニック・サウンドを大胆に導入することで、日本のロック・シーンの中でも異彩を放つ存在となったが、彼女はそんなバンドの音楽性を支えるキー・メンバーの一人だった。バンド・メンバーという立場を離れソロとなった今、フルカワミキはどんなアーティストになっているのか。彼女の音楽観を探るべく、本人から話をきいた。



「振れ幅の大きいさまざまな要素が一緒に存在しているのが、 自分の世界なんだと思います。」


―ソロ・プロジェクトの構想は、いつ頃からあったんですか?
「(スーパーカーが解散してから)一回、身体を休めてリフレッシュしていたので、ちゃんと自分の名義でソロ活動をしていこうと考えたのは、去年の夏くらいですね。環境づくりをしながら、ひたすら曲づくりをしました。“自分から何がでてくるのかしら”と思いながら、楽器をいじる日々でしたね」

―新たにバンドを結成するなど、ソロ以外のアプローチも考えたのですか?
「バンドのようなものをやるのもいいかな、とは考えました。でも、そのときは特に一緒にやりたい人もいなかったんです。それに、新たにバンドをやろうとするとエネルギーが必要だし、いろいろ考えなくちゃいけないこともありますからね。バンドをやっていたときから、自分名義での道筋は一本立てておこうと思っていたので、今回は“もうそういう機会がやってきたのか”とも思ったんです」

―ソロ・アーティストとしての方向性や、アルバムの全体的なテーマやコンセプトは決めましたか?
「メジャーのシーンで“ポップ・ミュージック”というものを試してみたいという気持ちはあったので、そのことはアタマに置いていました。あとは流れに身を任せれば、自分が積み重ねてきたことが自然に出てくると思いました。これまでやってきたことは、エレクトロなサウンドやポップなサウンドの糧になっているはずだし、ポップ・ミュージックへ挑戦するときの“バランス感覚”は、自分の中にあると思ったんです」

―自分の中にある?
「街を歩いていて音楽を耳にすると、“自分ならもっとこうしたのにな”とか、“もっとこういう曲が街に流れていてもいいのにな”とか、普通に思うんですよ」

―指針となるようなアーティスト像はあったのでしょうか?
「特定の誰ということはないんですけど、尊敬している、好きなアーティストはいっぱいいます。ザ・スリッツ、ジョン・ライドン、トム・トム・クラブ、クラフトワーク、デヴィッド・ボウイ、ルー・リードとか、挙げたい人はもっといっぱいいますね(笑)。やっぱり、フットワークは軽くありたいな」

―“ひたすら曲づくりをした”とのことですが、曲は日々どんどん生まれてきましたか?
「うーん。私は飽きっぽいし、怠けものなんで、そうはいかなかったです。気が向いたときに、日替わりでいろんな楽器をいじって曲をつくりました。ベースから曲をつくってみたり、シンセの音色で遊んでいるうちに好きな音色が出てきて、“この音色ならどういうコードにしようかな?”って考えながらつくったり。だから、曲をつくるときのスタイルはその日替わりで、バラバラでした。遊びながらつくった感じ。曲づくりは楽しかった」

―今作はギター・サウンドを軸にした曲から、エレクトロニック・サウンドを軸にした曲まで、バラエティ豊かな内容ですね。各楽曲は、そうやって遊びながらつくっていった原曲のアイディアを、ほぼそのまま収録しているんですか?
「うん。そうですね。“世界観”は、ある程度自分自身で仕上げてしまいたかったので。例えば、シングルの「Coffee & SingingGirl!!!」は、リズムからつくっていった曲なんですけど、最初に入れていたベースやクラップ音はそのまま活かされています。ギターからつくった曲は、アルバムにも、そのままギターが入っています」

―歌詞は、どうやって書いたんですか?
「メロディーを入れた時点で、必ずワン・フレーズ、ツー・フレーズは歌っているんです。で、そのフレーズを仮タイトルにして、そこから歌詞を広げていきました。だから、その時々で自分がよく使っている言葉や言い回しが入っていると思います。メロディという制約がある中で、その曲が持っている音の世界観や、自分の発音を活かせるかたちで書いたので、パズルの様で面白かった。歌詞には、曲を書くときとは違う脳みそを使いますね」

―発音を活かすというのは、具体的にはどういうことですか?
「私は“歌う人”だから、あるメロディに対して“お”からいくのか“あ”からいくのかといったことですね。自分が自然に出せる音を守りたかったし、自分の声の活かし方を考えました。あと、今回は自分の声の鳴り方、空間での鳴り方と向かい合ってみて、圧倒的にリヴァーブ(編注:エフェクターの一種)を使うことが多かった。“私、リヴァーブが好きなんだ”って気づきました(笑)」

―アルバムを制作していく中で、バンド時代と比較してどんな点が一番大変でした?
「“言葉”ですかね。そこだけは苦労しました」

―詞ですか? 「いいえ。バンド以外の人と一緒に音楽をやったので、“ここはこういう感じで”といった言葉のニュアンスを伝えることに凄く苦労したんです。やっぱり、自分独特の感覚に伴った言葉の使い方があるんですよね。譜面で言えたらいいのかもしれないけど、譜面が書けないので、“感覚”を言葉で伝えるしかなかった。だから、間に通訳をいれてもらったりもしたんですよ(笑)」

―そうして完成したソロ・デビュー・アルバム『Mirrors』ですが、どうして“mirrors”というタイトルをつけたのですか?
「曲をつくっていく過程で、“今の自分ってこうなのかもしれない。今やれることってこうなんだな”っていう発見があったんですよね。だから、自分のことがよく分かる、“鏡”のような曲たちという意味でつけました。あと自分名義のソロは、バンドとは違って意見や感想が直接自分のところにくるので、その意見から曲ができあがっていくこともあったんです。周りにいる多くの人の想いを受けて自分という存在が明確になるという感触も“鏡”のようだなって感じました。ファースト・アルバムだから、自分の名前でも良かったのかもしれないけど、それと同じような力強い響きがあるタイトルだと思ったんです」

―先ほど“世界観”という言葉が出ましたが、フルカワミキの世界とはどのようなものだと思っていますか?
「それは、聴く人の感性に委ねたいと思っているんです。ただ、“もう一人の自分が居る感じ”というか、常に客観的でさめている自分がいたり、未来的なものも古いものも好きな自分がいたり、ロックだけに限らずテクノなどいろいろなジャンルが好きな自分がいたり、そういった振れ幅の大きいさまざまな要素が一緒に存在しているのが、自分の世界なんだと思いますね」

―宇川さんのヴィジュアル・ワークも印象的ですね。“フルカワミキ”を演じる感覚もあるんでしょうか? 「いや。遊んでいる感覚はあるんですけど、演じようとは全く思っていないですね。こうしたヴィジュアルも自分の一面で、先ほど言った“振れ幅の大きいさまざまな要素が一緒に存在している”という点に通じています。でも、もちろん“これは絶対にやりたくない”ということはあるので、一貫性はあると思いますね。そのあたりは、感覚で感じ取ってもらえればと思います。ソロでは、自分がそのときやろうと思ったこと、感じたことを気楽にすぐやれるので、気が変わったら変化していくとは思いますけど(笑)」

―参加アーティストも個性的ですね。彼らには、どういう経緯で参加してもらったのですか?
「みなさん、ほとんど以前から知っている人なんです(笑)。勝井さんは、私が十代の頃から知っていて、いつか一緒にやりたいですねと言っていたんです。この機会に念願が叶いました。ROVOの芳垣さんもずっと見ていた人だし、旅人君も友達ですね。山本さんも、益子さんとDUB SQUADをやられていたので面識がありました。サムさんとナスノさんはかねがね噂を、という感じでした。サムさんは、パーカッションが必要な曲があったから、益子さんに紹介してもらったんです。ナスノさんは良いベースを弾くので、彼にはずっと興味があったんですよ」

―あんまり自分の演奏はフィーチャーしていないんですか?
「あんまり弾いてないですね(笑)。客観的に聴きたかったんですよね。自分のスキルやスタイルは分かっているから、曲が自分の手から離れて欲しいということもあったんです。例えば、私の曲に対して、ナスノさんはどういう風に演ってくれるんだろうという興味も大きかった。自分の曲とメロディが良い形でパッケージされること、最後に自分のエッセンスがきちんとパッケージされることが第一なので、全てを自分ひとりでやらなきゃいけないということではなかったんです」

―「MUTTER OF METAL」と「Sunburst」では中村弘二さんと、「世界のささやき」では七尾旅人さんと共作もしていますね。
「はい。ナカコー(中村弘二)の曲に私が詞を書いたスタイルと、私の曲に旅人君が詞を書いてくれたスタイルがあるんですけど、両方とも最初のアルバムでやっておきたかったことなんです。これも、最後に自分のエッセンスがきちんとパッケージされることが第一で、全てを自分ひとりでやらなきゃいけないということではない、ということに通じています」

―では、今後の活動予定について教えてください。勝井祐二(Violin)、中村弘二(G/Key)、宇田隆志(Key/G)、ナスノミツル(B)、吉村由加(Dr)という構成でライヴを行うと聞きましたが、どのような内容になりそうですか?
「自分でも想像がつかないんですけど、アルバムでも一緒にやったメンバーがほとんどなので、楽しみにしています。自分の世界を少しでも体感してもらえるようなステージにしたいと思っています」