GWEN STEFANI インタビュー/LOUD146号
グウェン姐さんのダンス・ポップ第二章!
単純に良い作品を、今風の作品をつくりたいという気持ちだけがあったから、前作よりもモダンに仕上がっていると思う。
'87年、LA郊外のオレンジ・カウンティにて結成された4人組バンド、ノー・ダウト。彼らは、スカ/レゲエの要素を独自に昇華したサウンドを全面に押し出し、人気を獲得。2ndアルバム『トラジック・キングダム』を全世界で1600万枚売り、一躍トップ・アーティストの座に昇りつめている。このバンドの紅一点で、ヴォーカルをつとめる中心人物がグウェン・ステファニーだ。バンドとして成功を収めた後、'04年に『ラヴ・エンジェル・ミュージック・ベイビー』でソロ・デビュー、ダンス・ミュージックに急接近したのは記憶に新しいところ。ファッション・ブランドL.A.M.B.のプロデュースも手がけ、ファッション・アイコンとしても注目されている。
このたび発表された2ndアルバム『スウィート・エスケイプ』は、そんな彼女のパーソナルな部分にフォーカスした作品だ。彼女が表現しているストレートな感情に、共感を覚える女性は多いことだろう。ファレル・ウィリアムス、エイコン、スウィズ・ビーツなど、前作に勝るとも劣らない豪華プロデューサー陣にも注目したい。
今作の制作秘話と自身の近況について、グウェン本人が語ってくれた。
<本文>
—新作のレコーディング中、あなたは妊娠、出産を経験したそうですね。
「そうなの。妊娠中は、あまり曲づくりが進まなかったわ。クリエイティブな気分になれなくて、疲れやすかった。眠って、食べて、テレビを見たいと思ったから、その通りにしていたの。出産後、自分は大きく変化するだろうと思っていたけれど、実際はそれほど変わらなかったわね。でも、曲づくりのプロセスは大きく変わったわ。彼(=息子)のおかげで、上手くバランスがとれるようになった気がする。今までは、一晩中スタジオで作業をして、一日中寝るというやり方で曲づくりをしていたの。でも、出産後はレコーディングのために数時間だけスタジオに入って、さっさと作業をしないといけなくなった。ボーカル録りをしている最中に息子が泣き出して、歌うのを中断してあやしたこともあったわね」
—「Don't Get It Twisted」は、出産を控えての不安や戸惑いの気持ちを歌った曲だそうですね。
「ええ。妊娠は不思議な経験だから、そのときの気持ちを曲にしたいと思ったの。妊娠は、身体的に最もクレイジーな出来事じゃないかしら。最も喜ばしいことでもあるわね」
—“強くて誠実な女性”というイメージのあなたも、不安や戸惑いの気持ちを持つのですね。
「長い年月を経て自信がついた部分はあるけれど、私だってたまには不安になるわ(笑)。認めたくはないけど、そういうこともあるのよ。私の生活はみんなと比べたらクレイジーだろうけど、私自身は自分を普通の人だと思っているの。不安な気持ちを曲に書くと、それがはっきりわかるわ。そういう曲に、みんなが共感してくれるからね」
—前作『ラヴ・エンジェル・ミュージック・ベイビー』は、'80年代のポップ・ミュージックにインスパイアされたものでしたよね。『スウィート・エスケイプ』にも、中心となるコンセプトがありますか?
「前回のようなインスピレーションはなかったわ。単純に良い作品を、今風の作品をつくりたいという気持ちだけがあったから、前作よりもモダンに仕上がっていると思う。とはいえ、前作に収録せず残っていた曲からは、“もう1枚アルバムをつくりたい”というインスピレーションを得たから、コンセプトがあるとすれば“前作のパート2”かしらね。“せっかく良い曲があるのに、発表もせずにコンピューターの中に残しておくのはもったいない。みんなと分かち合いたい”と思ったのよ。前作は表面的で楽しいダンス・アルバムだったけど、今作ではもっとエモーショナルな曲を書いているわ。そういう意味では、ノー・ダウトの頃に回帰しているかもしれないわね」
—今作では、多くの曲でファレル・ウィリアムスとコラボレートしていますね。
「私は彼のファンで、本当に尊敬しているの。彼とスタジオで一緒に作業するときはワクワクするし、彼と仕事ができることはラッキーだと思っているわ。私たちは、音楽的にも文化的にも全く異なるバックグラウンドを持っているにも関わらず、共通点をたくさん持っているの。違う文化が衝突するような関係なのに、どういうわけかそれが上手くいっている。今回の共同作業はとても楽しかったわ。彼が'05年にマイアミのスタジオに招待してくれたから、10日間でたくさんの曲を書いたの。本当に素晴らしい経験だった」
—1stシングル「グウェン姐さんのねじ巻き行進曲 (Wind It Up)」も、ファレルによるプロデュースですね。映画『サウンド・オブ・ミュージック』の挿入歌、「ひとりぼっちの羊飼い(The Lonely Goatherd)」が大胆にサンプリングされていて、とても面白い曲だと思いました。
「これは、マイアミでファレルが最初に聴かせてくれた曲よ。その段階では「ひとりぼっちの羊飼い」をサンプリングするアイディアはなかったけど、初めて聴いたとき “ちょっと本気? クレイジーじゃない? このベースラインはイカれている”と思ったわ(笑)。その後NYでL.A.M.B.のファッション・ショーをやった時に、“この曲のビートに、「ひとりぼっちの羊飼い」をのせたらカッコいいはず!”と思って、ジェレミー・ヒーリーにマッシュアップを依頼したの。その仕上がりを聴いた時は、二つの曲のコントラストが、あまりにクレイジーで天才的だと思ったわ! でも、ファレルはサンプルを入れてほしくなかったみたいで“ダメ、ダメ、ダメ! 何をしているんだ?”と言っていた(笑)。この曲がシングルでリリースされた直後には、納得してくれたみたいだけどね。ファレルは、曲をシンプルにミニマルにして良さを際立たせるけれど、私は反対に、曲に様々な要素を足していくタイプなのよ。ちなみに、この曲のPVは『サウンド・オブ・ミュージック』をテーマにしてつくったわ。ビデオの中で、私はマリア(編注: 映画『サウンド・オブ・ミュージック』の主人公)にチャネリングしているの」
—ファッション・ブランドL.A.M.B.では、今後どのような展開を予定していますか?
「このブランドを立ち上げて4年目になるの。今はフレグランスも展開しているわ。自分のブランドからフレグランスを出すのは、ある程度の成功を収めないとできないことで、それをやれるようになって、初めてファッション界で認められるの。L.A.M.B.はシーズンごとにどんどん良くなっているけれど、私が望む通りの素晴らしいものになるまで、まだまだ先は長いわ。ファッションの仕事は、一生続けていくつもりよ」
text edit EMIKO URUSHIBATA


