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BOOM BOOM SATELLITES インタビュー/LOUD124号

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Full Of Elevating Pleasures

(JPN) SONY / SRCP 386


内省のヘッド・ミュージックから、歓びのダンス・ミュージックへ

“そもそもロックもダンス・ミュージックの一部なんじゃないか”って再認識したんです(中野)


 ブンブン・サテライツはドラスティックな変貌を遂げた。よりアップ・リフティングに、よりフィジカルに、より解放的に。前2作『Unbra』~『Photon』は、中野雅之(B、Prog)の言葉を借りれば“リスナーの内面と対峙するような”ヘヴィで内省的なサウンドだったが、映画『Appleseed』のサントラに収録された「Dive For You」、アイ・リバーのCM曲として大量オンエア中の「Moment I Count」などで、その変化は顕著だ。これはこの数年、スタジアム級のダンス・フロアでライヴをくり返してきたことから生まれた、ダンス・ミュージックへの回帰なのだろうか?
 フォース・アルバム『Full Of Elevating Pleasures』のリリースと、4月の全国ツアーを控えた中野と川島道行(G、Vo)の2人に、それぞれ話を聞いた。

interview with MASAYUKI NAKANO

―すでに多くの人から指摘されていると思いますが、前二作のヘヴィで内省的なサウンドと比較すると、今作には非常に解放的なダンス・ナンバーが多く収録されています。その変化のターニング・ポイントは、何だったんですか?
「ライヴ、ですね。ここ3年間、昨年出たイギリスのフェスティバルとか、わりと大きな会場でやることが多くて。(自分達の中に)何かレイヴっぽい感じが最近あるんですよ。音楽のジャンルとしてのレイヴ・サウンドじゃなくて、雰囲気的なものとして。一昨年に出た時、僕らやっぱりロック・バンドだから、正直浮いちゃうんじゃないかと思ってたんだけど、思いのほかしっくりハマって。その頃、“そもそもロックもダンス・ミュージックの一部なんじゃないか”って再認識したんです。今、そういうの流行ってますよね、ラプチャーとか」
―!!!とか。
「そうそう。!!!にはインテリジェンスを感じるし、ラプチャーにはすごいパッションを感じますね。あとLCDサウンドシステムなんか、“これで終止符か?”っていうくらい完成度の高いアルバムだったし」
―そのあたりの、いわゆるダンス・バンドからの影響って大きいんですか?
「や、全然(笑)。好きなんですけどね」
―そうですか(笑)。改めて振り返ってみて、中野さんは前二作をどう捉えていますか?
「私小説、っていうかな。クラブ・ミュージックっていうものは、多くの人間で同時に共有する音楽だけど、『Umbra』も『Photon』も、ものすごくパーソナルな環境で聴かれるものだと思うし、実際にそういう聴かれ方を望んでいたんです。日本もイギリスもアメリカも、ちょうどクラブ・バブルみたいな時期で、今とは比べものにならないほど人が集まっていて。そんな時にチルアウトとも違う、もっとかなり突っ込んだ、リスナーの内面と対峙するような.....どこまで近づけるか、どこまで手が入っていくかっていう感じを望んでいたんですよ。その頃と比べると、ベクトルは全く逆になっていて、それこそ今回は大音量で、大勢の人たちで聴く音楽になりましたね」
―トンネルの暗闇の中を進んでいたら、出口を見つけたっていうようなイメージでしょうか。
「うーん、僕らの音楽ってほんとに二人だけでつくるんですよ。他に誰も入ってこない。だから自分たちのバイオリズムみたいなものも、すぐ作品に反映されてくる。だからこの変化は僕らの人生そのものなので、トンネルがどうとか、そこまで単純なものではないですよ。その流れを細かく説明すると、本当に膨大な情報量になる(笑)。でもまあ、大雑把に言うとそういうようなことだと思いますけどね」
―川島さんの声を、今回はどう使おうと考えましたか?
「彼の声にはちょっと計りしれない感じがあるんです。例えば“この人は怒ってるんだな”とか、“悲しんでるんだな”っていうようなことがわかりにくい声を出すことが多い。だからシャウトしてても、完全にアツいシャウトではなくて、ちょっとクールな、何かが残ってるような印象をすごく受ける。昔はそういうのがちょっと嫌だった部分があったんだけど、それが最近カッコいいことなんじゃないかって思うようになって。だから、そういう声を積極的に使ったヴォーカル・アルバムになりましたね。ほんと今までの中でも声が良かった。ステレオタイプなロック・ヴォーカリストのイメージはないけど、“これはまぎれもなくロック・ヴォーカルだ”って感じがして、そのへんがカッコいいなって思っています」
―ところで中野さんにとっての“Full Of Elevating Pleasures”って、言葉にするとどんな状態ですか?
「えーなんだろう、いろいろあるからな(笑)。お腹いっぱいの美味しいものとか、あとすごくハイになって10時間くらい踊ったりとか.....。意味合い的にはそういうことですね」


interview with MICHIYUKI KAWASHIMA

―前二作と比べると、サウンドだけではなく、リリックの面でも大きな変化を感じます。例えば「さあ、もう抵抗などしないで/さあ、なすがままに任せて」、「前に進め」、「朝まで踊り明かせ!」、「立ち止まらないで」.....。こうした解放的で、リスナーを牽引するような力強いリフレインはどこから生まれてきたものなんですか?
「今回はフレーズとして“歌えるもの”っていうことを重要視したので、その意味でリフレインが多くなりましたね。意味はともかくとして、聴いた時に歌えるかどうか。シンプルな言葉って、聴く人それぞれの人生によっていかようにも取れるじゃないですか。その人の中でドラマが拡がってくれればいいな、っていうのはひとつありましたね。あと、“内省的か、解放的か”っていう部分に関しては、僕が言葉を出す時は、常に自分に対して書いていることが多いですね。例えば女の人のコーラスが入るんであれば、“その女性に何を言われたいか”っていうところで書いていたりする」
―じゃあこれらのリフレインは、リスナーへのアジテーションではないんですね。
「うん、むしろ自分に対してのアジテーションだったりする場合が多いかもしれない」
―歌詞のインスピレーションは主にどこから?
「日々、暮らしている中で、中野と世の中のことやお互いのことを話しているうちに培われてきた部分が大きいですね。自分は一体どんな位置にいるのか、この社会にどう関わっていけばいいのか、とか、そういうことは常に考えていて。そういう暮らしの中で、何を聴きたいか、何を歌いたいか、っていうところで自然と選ばれていく言葉ですね。さっきも言ったけど、人に言っているようで自分に言っているところが多いと思います。きっと僕も多くの人たちと同じ悩みや煩悶を抱えていて、僕に言えることは多くの人にも言えるだろうって、それを言葉にしていく感じですね」
―アルバム・タイトルはどちらのアイデア?
「それは両方ですね。僕がいっぱい案を出していって、絞っていった感じです」
―川島さんは、この言葉にどんな想いを込めているのですか?
「自分が喜びを感じたりしている至福の時間の裏には必ず罪があると思うんです。背徳心的な。誰かがどこかで犠牲になりながら、自分は喜びにひたっていることができる。あるいは、自分に辛いことがあるから、その喜びが何倍にも感じられるとか。それは昔からもこれからも、生きている上で普遍的なことだと思うんだけど、そういった想いですね。あと、“Elevating”はサーティーンズ・フロア・エレベーターズとか、UKのヒップホップにも出てくるサイケデリックな言葉だと思うし、“Pleasure”はロックンロールにもあるし、ゴスペルにもある、いろいろなジャンルで使われている言葉ですよね。全世界のみんなが持つ、共通のキーワードかなって」
―川島さんの場合は、“Full Of Elevating Pleasures”って、言葉にするとどんな状態ですか?
「僕の場合は女の子と酔っぱらってる時とか、男どうし下らない話してる時とかかな(笑)。あと、目の前に美味しいものがたくさん並んでる時とか.....」
―それは中野さんも同じこと言ってました(笑)。
「ほんと(笑)。でも、実はそれって罪深いことなんですよね。世界の果てでは何万人もの人が餓死してると知ってはいながら、僕は聖人じゃないから、目の前の美味しいものに喜びを感じてしまう」
―そういう表裏一体の感覚をリスナーにも知ってほしい、っていう意味も託されているんですか?
「うん、すべての歌詞においてそうですけどね。“裏と表を注意深く見る”っていうのは、生き方に深く関わってくることだと思うんですよ。よく目をこらして、注意深く見ないと感じられないことですけど、その両方を見ることによって、僕はある意味、豊かな時間、豊かな人生を過ごしていると思うから。“そうしろ! ”って押しつけているわけじゃないんですけど」
―“そっちのほうがいいんじゃない? ”みたいな。
「それだとちょっと中途半端な表現だから、“そっちのほうがいいよ”がいいかな。うん、そっちのほうがいいと思いますよ、絶対。そういう感覚の眼は常に持っていたほうが、豊かな人生を送れると思うんです」
―ところで、ツアーではどんなステージを考えてますか? やっぱり、かなりダンスっぽくなりそうですか。
「いや、ホント僕ら今、身体を動かさずにはいられない状態になっているんで(笑)。そういう雰囲気に押されてアガってきているところがあるんです」
―さっき中野さんからは“レイヴ”っていうキーワードが出ましたよ。
「そうですね、レイヴ。ライヴ会場であれ、ダンス・フロアはそこにあるので、そこにはまさにレイヴな感じがあるでしょうね。お客さんと一緒に、もっと高い場所に行けたらいいなと思ってます」

interview & text AKIHO ISHII