ENTER SHIKARI

iLOUD > ROCK - ロック > ENTER SHIKARI > INTERVIEW - インタビュー > ENTER SHIKARI インタビュー/LOUD147号

ENTER SHIKARI インタビュー/LOUD147号

 はてなブックマークに登録

ニュー・レイヴはもう古い???
レイヴとハードコア/メタルを結合させるハイパー・ロックバンド登場!


 BBC、MUSICWEEK誌、KERRANG誌、THE TIMES誌といったイギリスのメディアが、“2007年最も注目すべきアーティスト”にこぞってピックアップし、遅れてNME誌も降参するように注目し始めた謎の新人バンド、エンター・シカリ。2003年の結成以来、500回以上に及ぶというライブと、インターネットのみでファンを獲得してきた異色の存在だ。昨年11月には、CDリリースなしで、ロンドンのアストリア(キャパシティ2000名)をソールドアウトさせている。これは、アークティック・モンキーズにさえできなかった快挙だ。
 彼らは、ロンドン郊外のセント・オールバンス出身。メンバーは、ラフトン・レイノルズ(Vo/Electronics)、クリス・バッテン(B/Vo)、ローリー・クルーロー(G)、ロブ・ロルフ(Dr)の四名で、まだ平均年齢が20才という若さだ。そのサウンドは、ハードコア/メタルとトランス/レイヴ・ミュージックが融合した前代未聞なもの。ここまで両極端な音楽をそのまま組み合わせたバンドは、はたして過去に存在していただろうか? 彼らの音楽には、既存のジャンルやアーティストとは比較できない新しさはもちろん、これまでの、ロックとダンスが融合したサウンドとは全く異なるエネルギーが宿っている。
 現在ライブでは、グロウスティックを身につけたオーディエンスがモッシュで盛り上がるという、常識はずれの現象を誘発しているエンター・シカリ。いかにして彼らは、そのサウンドに辿り着いたのか? デビュー・アルバム『テイク・トゥ・ザ・スカイズ』のリリースを目前に控えた、ラフトンとローリーに話を聞いた。


僕らの街はロンドンに近いから、FABRICのようなクラブにもよく行くんだ。
ハードコアのライブに行ったあと、朝までそこで過ごすのさ。
スピーカーの音でフロアが揺れて、マッシヴなレーザーがバリバリで、イイよね。(ラフトン)

ハードコアとクラブ・サウンドの二つを足すことで、
多重的・多層的な情熱や高揚感を表現しようとした。(ローリー)




昔は普通のオルタナ系ロック・バンドだった

—高校時代の2003年にバンドを結成したそうですが、今の仲間はどのようにして集まったのですか?
ラフトン(以下Rt)「結成は高校時代なんだけど、もともとは小学校の同級生だったんだ」
ローリー(以下Rr)「ロブとクリスとラフトンの三人が小学校の同級生だね。クリスとラフトンは、そのころから一緒に音楽をつくって遊んでいたんだ。ロブはガタイが良くてデカかったから、学校では、よくいじめっ子をブチのめしていた。で、“アイツあんなに喧嘩が強いんだから、ドラムもうまいんじゃないか?”ってことで、バンドに誘われたんだ。僕はロブと中学校が一緒でね。その頃は、ファンク/ブルース・バンドをやっていた。その後、高校に入って17才のときに、今の四名が集まって、エンター・シカリになったていうわけさ」
—それにしてもロブは体格がいいですよね。彼はスポーツとかやっていたんでしょうか?
Rt「いや。クリスはサッカーをやってたね。僕はスケボーかな。でも、みんな運動をやる時間はあんまりなかったよ。もっぱらバンド練習さ。そんなわけで、エネルギーを発散させる機会が他になかったから、僕らのステージは激しくて元気がいいのかもしれない(笑)」
—バンドでは、いきなりオリジナルを演奏し始めたんですか?
Rt「そうだね。だって僕とクリスは10才の頃から曲をつくっていたから。でも、今のような、よりハードコア(・パンク)色の強いサウンドになったのは、ローリーが入ってからだよ。それ以前は、もうちょっと普通のオルタナ・ロックみたいな感じだった。レディオヘッドとかミューズみたいなね」
Rr「僕がバンドに入る前、中学生のときに彼らのライブを観たことがあるんだけど、そのときは「ゴースト・バスターズ」をやってたよ。しかも超ヘタだった(笑)」
Rt「やめてよ(笑)」
—では、ローリーがハードコア・サウンドを持ち込んだんですね?
Rr「いや。ちょうどその頃、みんなもそれまでのオルタナ・ロック路線をつまらなく感じていたんだ。だから、ちょっと違うことをしたいと思ったのさ。あと、当時よく行っていた地元のライブハウスで、ハードコアが元気だったんだよ。そこで、ハードコアならではの情熱的な音や、バンドとオーディエンスの一体感を好きになったんだ」
—ユーロ・トランスやレイヴ系のサウンドに関しては、誰が好きなんですか?
Rt「みんなそれぞれ、バンド・サウンドだけじゃなく、エレクトロニック・ミュージックも好きだったんだ。エイフェックス・ツインやスクエアプッシャーなんかも聴いていたよ。それで、自分たちなりにエレクトロニックな曲もつくったりしていたんだ」
—そうなんですか。
Rt「特にロブは昔からダンス・ミュージックが好きで、トランスやハードコア・テクノなどを聴いていた。僕の場合は兄貴がDJをやっていたから、その影響でドラムンベースやハウスをよく聴いていたね」
—クラブにも、よく遊びに行くんですか?
Rr「もちろんさ。ハシゴもよくするよ。ハードコアのライブを観に行ってモッシュで盛り上がったあとに、トランスのクラブに行ってさらに盛り上がる。そんな遊び方もしてた」
Rt「僕らの街はロンドンに近いから、FABRICのようなクラブにもよく行くんだ。ハードコアのライブに行ったあと、朝までそこで過ごすのさ。スピーカーの音でフロアが揺れて、マッシヴなレーザーがバリバリで、イイよね」
—あなた達のライブでもレーザーがバリバリですよね。それはクラブからの影響なんですね?
Rt「そうだね。レーザーの他にストロボやホワイト・ライトも使うよ。機材は、自分たちで持ちこんでいるんだ。僕ら特製のフィンガー・ライトをお客さんに買ってもらえば、それで自分たちなりのライト・ショーが楽しくできる。今度始まるUKツアーは、千人くらいのキャパが中心になるから、もっとレーザーを使って、よりクラブっぽいライティングをしようと思っているよ。そういったヴィジュアルにはこだわりたいね」
Rr「昨年アストリアでやったライブでは、コールドプレイが実際にライブで使っているレーザーを借りたんだ。ライブはソールドアウトだったけど、そのレーザー代のせいで、ほとんど儲けはなかった(笑)。でも、レーザーのおかげで俄然ライブの高揚感が増したから、その甲斐はあったな」


ハードコアとトランスの融合は偶然の産物

—ハードコアとダンス・ミュージックを組み合わせるというアイディアは誰が考えたのですか? なかなか思いつかないことですよね。
Rt「僕らはロブの部屋で、よくバンド練習をしていたんだ。夕方から、週に四回くらい。うるさいって怒られないように、隣に住んでいたオバサンが散歩に出かける時間を見はからってやっていた(笑)。で、ロブの部屋は二階にあるんだけど、あるとき練習の前に、僕がたまたま一階にあるパソコンでダンス・トラックをつくっていたんだ」
—なるほど。それで?
Rt「で、練習の途中でその曲を取りにいこうと思って一階に降りていったら、その曲が鳴りっぱなしになっていたんだ。二階からは、他のみんなが練習している音も聞こえてきた。そのときに思ったんだ、“これって結構合うんじゃないの?”ってね。それで、実際に合わせてみたら、案の定うまくいったというわけさ」
—きっかけは、偶然だったんですね?
Rr「ハハハ、そうだね(笑)」
—そうやって新たに誕生したサウンドに対して、周りは驚きませんでしたか?
Rr「初めから今のようにエレクトロニックの要素をいっぱい入れたわけじゃないんだ。徐々にエレクトロニック化していったのさ」
—どんな風にエレクトロニック・サウンドを導入していったんですか?
Rr「まずはKORGのカオス・パッドを手に入れたんだ。最初はSE的にそれを使っていた。その後、シーケンサーを手に入れたんだ。今はキーボードでちょっとしたフレーズを弾いてからテンポを倍にしてみたり、いろいろ試しているよ」
—一般的に、ハードコアはアグレッシヴな音楽で、トランスは多幸感のある音楽ですよね。水と油の関係とも思える両者を、よく結びつけられましたね。
Rt「僕らだって驚いたよ(笑)。こんな風に上手くいくとは思わなかったな」
—ハードコアのライブとクラブに共通点があるとしたら、何だと思いますか?
Rr「ハードコアには、CDにしろライブにしろ、とにかく情熱があるんだ。歌詞もすごく切実な内容が多い。一緒に歌って参加することで、エモーショナルな気分になれる。同じように、クラブも行くと高揚感を得られるよね。ただ、そこにはハードコアとはちょっと質が違う情熱がある。この世のものとは思えないような、別世界に入り込んでいくような高揚感があるんだ。だから、僕らはハードコアとクラブ・サウンドの二つを足すことで、多重的・多層的な情熱や高揚感を表現しようとしたんだ。サンドイッチが、互いの良さを活かし合うと思ったのさ」


一種類の音楽しか聴かないようなヤツは偏屈だ

—エンター・シカリは、ツアーとインターネットのみで現在のポジションまで駆け上がってきました。自力のみで必ず道が開けると信じていましたか?
Rt「そうだね。僕らはライブが大好きだから、何度でも同じ所に戻ってライブするつもりで活動してきたんだ。もし一回目のときに、お客さんが僕らを気に入ってくれたら、次は友達を連れてきてくれるだろ? 中古で郵便局のバンを手に入れて、イギリスの隅々までライブをしに行ったよ」
—デビュー・アルバム・リリースに際しても、メジャー・レコード会社からのオファーを断っていますね。あなた達はインディ精神、DIY精神を大切にしているんですか?
Rt「僕らは、何年も全て自分たちだけでやってきたんだ。ブッキングも、車の運転も、CDのプリントもね。何をしなくちゃいけないのかも分かっている。だから、いまさらその権利をメジャーに渡すのは違うんじゃないかって思ったんだ。デジタルな今のご時世、自分たちの音楽を多くの人に届けるのは、そんなに大変なことじゃない。メジャー・レーベルに、お金をかけた広告宣伝をしてもらわなくても、ネットに無料で自分たちの曲をアップすればいいのさ」
—エンター・シカリは、イギリスを中心に大きな注目を集めていますから、あなた達の音楽性について、メディアは様々に形容していると思います。何かしっくりくるものはありましたか?
Rt「みんな頑張ってヘンなネーミングをしているよね(笑)。トランス...コアとか」
Rr「ノー・ノー・ノー!(笑)。NMEに掲載されたアストリアのライヴ記事は、なかなか良かったよ。NMEは今“ニュー・レイヴ”とか言ってクラクソンズなんかをプッシュしていて、多くの記事は僕らをニュー・レイヴの同類として括ろうとしているんだ。でもNMEのその記事には、僕らはニュー・レイヴとは全く違うと書いてあったんだ。ちなみに、みんなは僕らを“シックス”って呼んでいるみたいだよ。“シカリ”をもじってね」
—かっこいいネーミングですね。
Rt「そうだね」
—そもそもエンター・シカリというバンド名の由来は何なのでしょう。聖書や福音書の言葉を参考にしているんですか?
Rt「いや、違うよ。“シカリ”はインド語で“ハンター”を意味するんだ。僕のひいおじいさんは、第一次世界大戦のときにパイロットをやっていたんだけど、ドイツ機と戦闘する飛行機をシカリと呼んでいたらしいんだ。で、敵を撃墜して、相手がパラシュートで脱出しなきゃいけなくなったんだけど、そこでひいおじいさんが言った言葉が今作のタイトル、“テイク・トゥ・ザ・スカイズ”なんだ」
—おお〜。
Rt「“ドイツ野郎ども、空に散れ”って意味だったらしい(笑)。全部をタイトルにすると、ドイツでアルバムが売れなくなっちゃうな(笑)」
—では、このデビュー・アルバムには、“俺たちはやってやるぜ”というようなファイティング・スピリットが託されているんでしょうか?
Rt「むしろ、“空高く舞え”といった気持ちかな。このアルバム・タイトルは、“さらに高める”という意味にもとれるんだ。それはアルバムの中で訴えているメッセージともしっくりくる。僕らの曲には、暴力や環境問題など人類が抱えている問題について扱った歌が多いからね。そういった問題を乗り越えていこうという意味合いがあるんだ」
—自分たちより上のジェネレーションへの対抗意識はありますか?
Rt「うーん、結果的にジェネレーションを意識することになるのかもしれないけど、僕らはハードコアにしてもダンス・ミュージックにしても、どちらか一方しか聴かないという偏った考え方の人は視野が狭いと思ってるんだ。“ハードコアだけ聴かなきゃダメだ”とか、“ダンス・ミュージック・ファンなんだからロックなんて聴いちゃダメだ”って主張するヤツは、偏屈だ」
—あなた達は両者のファンを一つにしていきたいんですね。
Rr「その通り。音楽とは.....こう....。上手く説明できない(笑)。ともかく音楽は、それを聴いた人が感じた通りに自由に楽しめばいいんだよ。垣根をつくる必要なんてないんだ」

interview & text FUMINORI TANIUE
translation YURIKO BANNO