KASABIAN インタビュー/LOUD141号
KASABIAN
Empire (JPN)
BMG JAPAN / BVCP 21481
ダーティー&セクシーな サイケデリック・ロックンロール・トリップへようこそ
2004年秋にリリースしたデビュー・アルバム『カサビアン』が、本国イギリスでダブル・プラチナム、日本でもゴールドを獲得するヒットを記録したロック・バンド、カサビアン。特に日本での異例の人気ぶりは記憶に新しいところで、デビューEP『クラブ・フット』はオリコン・チャートで1位を獲得、サマーソニックでは入場規制がかかり、単独来日ツアーは即日ソールドアウトとなる現象が起こっている。そして、昨年3月には全米デビューを果たし、秋にはオアシスと全米ツアーを遂行。今年はITVのサッカー・ワールド・カップ中継でのテーマ・ソングにデヴィッド・ボウイのカヴァー「Heroes」を提供するなど、話題には事欠かないバンドである。そんな彼らが、いよいよ約2年ぶりとなる最新アルバム『エンパイア』をリリースする。 実質5週間ほどでレコーディングされたという本作は、ワイルドなヴィンテージ・ロック・サウンドとダンサブルなエレクトニック・サウンドが融合した新型ブリティッシュ・ロック、といった佇まいだ。ポイントは、前作でみせたサウンドを踏襲しつつも、彼ら独自の音楽性があらゆる面でスケールアップしていることだろう。バンド・サウンドとエレクトロニック・サウンドが激しく融合した各楽曲は、どこを切り取ってもよりロックンロールしていて、よりサイケデリックなトリップ感が強まったものとなっている。
注目の最新作『エンパイア』について、セルジオ・ピッツォーノ(G/Key)から話を聞いた。なお、インタビュー後に“メンバーのクリス・カーロフ(G/Key)が脱退。現在のメイン・メンバーはトム・ミーガン(Vo)、セルジオ・ピッツォーノ(G/Key)、クリス・エドワーズ(B)となっている。
このアルバムが完成したとき、僕らはとてつもなく気持ちよかった。 “今夜は何だってやるぜ”っていう高揚感と、 ひたすらにセクシーでダーティーな表情を持つアルバムができたからね。 (発言文2) 僕はサイケデリックの持つ壮大な世界観が好きなんだよ。 リスナーをトリップさせてまた元に戻してあげるっていうね。 僕らは全員サイケデリック・ピープルだ。
―2004年リリースしたデビュー・アルバムは、イギリスはもちろん、日本でも大ヒットを記録しました。これほどの成功は予想していましたか?
「成功するかどうかなんて予測できないよ。わかっていたことは、僕らはビューティフルな音楽をつくったということだけさ。周りがそれをどう受け取るかなんて常に未知数だから、僕らは自分の信じるままにやっただけだよ。良いものをつくったと思っても、買ってもらえる保証なんてどこにもないからね」
―確かに。成功した鍵は、結果的には何が要因だったと考えていますか?
「アルバムの誠実さが評価されたのかもしれない。自分たちの音楽を前面に出そうと努力してきたからね。最近はずっと昔っぽい音のリヴァイヴァルとか、ビッグ・ストロークなものが流行っていただろう? ブロンディーとか、80年代っぽいテイストのやつのことだよ。僕らはそういう流れを変えたんじゃないかな」
―では、ニュー・アルバムの話題に移りましょう。デビュー・アルバムのリリース以降は、ツアー三昧の日々を繰り返していたと思いますが、今作の準備はいつ頃からはじめましたか?
「ああ、この2年間は間違いなく忙しかったよ。ほんとに...。だから、新しいアルバムはその合間に絶えず準備していた感じだな。3、4曲分の構想を練ってはスタジオに入る、ということを繰り返していたね。ファースト・アルバムが出てから、すぐに新しい曲を書き始めたんだよ。“もっと良いものつくってやる”って思っていたんだ。そうじゃなきゃ面白くないよ」
―今作は、有名なロックフィールド・スタジオでのレコーディングで、地元レスターの農場での作曲作業は行わなかったようですね。ロックフィールド・スタジオを選んだのはあなた達の意向ですか?
「いや。何曲かは地元レスターのスタジオでデモを録った。生っぽい感じのサウンドはあそこでなきゃ出せないから、外せないよ。その後ロックフィールド・スタジオを選んだのは、もちろん自分たちの意志だ。僕らは正統派ブリティッシュ・ロックのサウンドを求めていたから、あの場所はぴったりだった。僕らはザ・ローリング・ストーンズのようなアルバムをつくりたかったんだ」
―以前よりも楽曲のアイディアを熟考する時間が少なくなったとも思いますが、レコーディングはスムーズし進行しましたか?
「僕らは、まだそれほどには忙しくないさ。曲について考える時間も十分にあった。レコーディングは最高だったよ。スタジオいた8日間くらいの間は、完全無法地帯にいるギャングみたいだったぜ。そういう時間って、本当に楽しいからね」
―今回は、各曲のアイディアはどんな物事からインスピレーションを得ることが多かったのでしょう?
「いつも、アイディアが自分の頭の中に飛んできては去っていく、って感じなんだよ。それがいつ来るのかもわからないし、計画することも絶対にできない。ギターを手にとったらいきなりアイディアが降りてくることもあるし、何も起こらないこともある。インスピレーションってさ、あくまでもナチュラルでピュアなものだから、コントロールなんてできないよ。すごいアイディアが浮かんだと思ったのに消え去ってしまって、同じアイディアが二度と戻ってこないこともある。ただ待つしかない」
―音楽的には、前作からどのような進化や発展を試みようと考えていましたか? 制作中に注意していたことを教えてください。
「バンドとして、みんなに最高の思い出と時間を提供することだな。リスナーに対して、僕らのあるがままを差し出すこと。シンプルだけど、大事なことだ。このアルバムは、お客さんと一体になる素晴らしい時間そのものなんだ。このアルバムが完成したとき、僕らはとてつもなく気持ちよかった。“今夜は何だってやるぜ”っていう高揚感と、ひたすらセクシーでダーティーな表情を持つアルバムができたからね」
―“エンパイア”というタイトルには、どのような意味を込めているんですか?
「生き方そのもの、だよ。自分の中にあるベストを感じとって、堂々と生きろ!ってことだ」
―個人的にはカサビアン流の"トータル・ロックンロール・アルバム"という印象を受けましたが、アルバム全体を通してのテーマやコンセプトはどのようなものだったのでしょうか?
「“人生で最高のパーティーに出会った日”っていうフィーリングだね。アルバムの冒頭は、家から出かける準備をしている段階なのに、すでにもうハイな最高な気分になっている自分がいるんだ。そこから人の波の中へとダイヴしに行って、24時間ノン・ストップのパーティーが始まる。そうそう、正にトータル・ロックンロールそのものだよ。でもファンキーだろ?」
―アルバムは、冒頭の「Empire」「Shoot The Runner」「Last Trip」など、いかにもアリーナ級のステージで映えそうなロック・サウンドからスタートし、聴き進めるにしたがってサイケデリックな世界観が増大していくように感じました。今作ではシタールのような音も入っていますよね。"サイケデリック"感というのは、カサビアンにとって欠かせない要素だと思うのですが、いかがでしょうか?
「正にその通り。僕はサイケデリックの持つ壮大な世界観が好きなんだよ。リスナーをトリップさせてまた元に戻してあげるっていうね。僕らは全員サイケデリック・ピープルだから、自分たちの音楽には不可欠なものだ。サイケデリックは、リスナーがその時々の気分で違うものを感じられる音楽だから面白いと思う。僕らが他の連中のような普通のロックンロールをやらない特別な存在だ、っていう証明でもあるよね」
―また、特に中盤の「Sun/Rise/Light/Flies」「By My Side」「Stuntman」などでは、エレクトロニック・パートを大胆に導入した、カサビアンならではの個性的な音楽性を表現していますよね。"エレクトロニック"な要素は、カサビアンにどのような効果をもたらしてくれるのか教えてください。
「そうだね。ギター以外のサウンドを見つけて曲の中で使うことは、僕らにとって最高に楽しいことなんだ。ある意味ホッとするような、癒されるような効果があるね。僕は、とにかくエレクトロニック・サウンド好きだ。サイケデリックが好きなのと同じで、自分たちの音楽をユニークで面白いものにしたいだけなんだよ。色んな要素を取り入れて、変わったことをやりたいんだ」
―以前からDJシャドウやボーズ・オブ・カナダといった音楽も好きだとも言っていますが、バンド・サウンドとエレクトロニック・サウンドをマッチさせるときは、どんな点を意識しているんですか?
「むしろ、あんまり意識しないということかな。良いと思うサウンドや周波数を、自然にマッチさせていくだけなんだ」
―ところで、昨年秋のオアシスとのツアー経験から学んだことも多い様子ですが、ロック・バンドとしてあなた達は彼らからどんなことを教わりましたか?
「本当にそう。素晴らしい経験だったし、生涯忘れられない思い出になったよ。オアシスはグレイトな人達だ。でも、“学んだ”というか、一緒にいて楽しかったことしか覚えてないね。ただ、楽しかった。だから、彼らとのツアーがこのアルバムに影響を及ぼしたということは、特にないと思う」
―完成したニュー・アルバムについて、トム・ミーガンは"前作よりもロイヤルだしセクシー"になったとも語っていますが、あなた自身はどのような言葉が相応しいと考えていますか?
「うーん、やっぱり“人生最高のパーティー”だね。パーティー会場の中に入ったら、自分の理解の領域を超えるすごいことが起こっていた、みたいな感じさ...アハハハ(編注:意味深な笑いでした)」
―今後の活動予定を教えてください。夏にはローリング・ストーンズとのヨーロッパ・ツアー、Vフェスティヴァル、イビサ・ロック・フェスティヴァルなどへ出演するそうですね。再びライヴの日々ですが、意気込みを教えてください。
「しばらくはアルバムのプロモーションで大忙しだな。ストーンズとのツアーはエキサイティングだね。そう、Vフェスティヴァルにイビサ・ロック・フェスティヴァルとずっと忙しいけど、フェスティヴァルってすごくスピリチュアルな経験になるから楽しみだよ。何が起こるかわからないからね。日本には来年1月にツアーで行く予定だ。前回よりもっと色んな都市をまわりたい。また良い時間を過ごせそうだね」
interview & text FUMINORI TANIUE translation KYOKO MAEZONO


