LARRIKIN LOVE インタビュー/LOUD147号
ネオ・アイリッシュ・パンクを鳴らす、新たなロックアイコン
現在、ニュー・レイヴと並んでUKインディー・ロック・シーンのキーワードとなっているテムズ・ビート。この言葉を生み出したのが、2005年デビューの四人組、ラリキン・ラブだ。
ロンドン出身の彼らは、リバティーンズ以降のパンクと、ザ・ポーグスを彷彿とさせるアイリッシュ・フォークを融合したような、激しくも味わい深いサウンドを持ち味にしている。そのオリジナリティーを武器に、すでに3枚のシングルをUKトップ40に送り込んでいるのは、見逃せない事実だ。
そんな彼らのデビュー・アルバム『ザ・フリーダム・スパーク』が、ついに日本初お目見えとなる。この作品は三部構成の大作。ゲストには、’07年度要注目やさぐれSSWのジェイミー・Tや、孤高のグラマラス吟遊詩人パトリック・ウルフ(男性)が名を連ねている。
ここでは『ザ・フリーダム・スパーク』の内面に迫るべく、まだ10代のあどけなさが残る魅惑のフロントマン、エドワード・ラリキン(写真中右)に電話インタビューを試みた。彼は、テムズ・ビート・シーンの真相も語ってくれた。
アルバムで歌っていることはすべて僕が感じていることで、
もしそれに共感してくれるリスナーがいたら、僕たちは仲間だ。
LARRIKIN LOVE
The Freedom Spark
(JPN) WARNER / WPCR-12539
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—デビュー作をリリースできて、気分はどうですか?
「良い気分だね。ほとんどの曲は5年前につくったものだったから、ようやくリリースできて嬉しいよ」
—パンクにアイリッシュ・トラッド・フォークを融合したようなサウンドが個性的ですね。インスピレーション源は何なのでしょうか?
「僕はザ・ウォーターボーイズっていうバンドの大ファンなんだ。彼らの音楽は基本的にボーダーレスで、そこでは色んな形の音楽が融合していた。きっと、そこからインスピレーションを受けて、考え方が自由になったんだと思うな」
—メンバーが、アイルランド系の家庭や環境で育ったことは影響していますか?
「たしかに僕たちの両親や家族はアイルランド人だし、ミコ(ギター)とコズ(ドラム)はアイリッシュ音楽がいつも周りにある環境で育っている。だから、アイルランド文化に対する愛情や、ダブリンが好きっていう気持ちは常にあるよ」
—ロック・バンドには珍しい楽器を使っているのも、あなた達の個性になっていますね。
「そうだね。僕が大好きな、アイルランドのトラディショナル・フォーク・ミュージックやブルーグラスからの影響で、マンドリンやウクレレを使うようになったんだ」
—誰がどの楽器を担当しているのですか?
「僕はウクレレ、ミコがマンドリンとボンジョ、アイフィー(ベース)は中国楽器の口琴を担当している。ギターが弾ければ、どの楽器も覚えるのは簡単だよ」
—あなたのヴォーカルは、リズムを意識した歌いまわしが独特ですね。歌うときに、意識はしていますか?
「どうも(笑)。でも、口から出てくる音が勝手にそうなっちゃうだけなんだ。意識したことは今までに一度もないよ」
—あなた達のサウンドは、グラインディ(グライム+インディーロック)とも言われていますが、この名づけ親はあなたですか?
「ちがうよ。グラインディの産みの親はスタティックっていうDJだ.。いい名前だよね」
—面白いですよね。グライムにイースト・ロンドンの環境が影響しているように、あなたたちの作品にはサウス・ウェスト・ロンドンの環境が影響していると思いますか?
「いや、今はサウス・ウェスト・ロンドンに住んでいないからね。前は近くに住んでいたけど。今はメンバー全員がロンドン周辺に散らばっているんだ」
—では、あなたたちとミステリー・ジェッツ、ジェイミー・Tなどが、サウス・ウエスト・ロンドン周辺でコミュニティーをつくって、 “テムズ・ビート”シーンを動かしているという話は事実じゃないんですか?
「ハハハ。“テムズ・ビート”は僕たちが考えたジョークなんだ。あるイギリスの音楽誌にインタビューされたとき、ジャーナリストに“ラリキン・ラブのサウンドを定義するとしたら?”って聞かれてさ。ほんの冗談のつもりで“テムズ・ビート”って答えたんだ。というのも、僕たちはテムズ河の近くに住んでいたし、’60年代にリバプールでビッグだった“マージー・ビート”もマージー河から名前をとっていたから、そのアイディアをパクったんだ。そしたら次の週、その雑誌の表紙に“テムズ・ビートのサウンドにのって”っていう見出しがついてたんだ。しかも、当時近所に住んでいたミステリー・ジェッツとたまたま一緒に音楽をつくっていたもんだから、彼らも全員まとめて勝手に“テムズ・ビート”扱いされちゃったんだよ。参ったよ」
—これは失礼しました。
「大丈夫だよ。怒ったりしないから(笑)。ただおかしいなって思うだけ」
—では、アルバムのコンセプトについて聞かせてください。歌詞には、どのような感情が込められているのでしょうか?
「うん。まあ、あらゆることだよ。怒りや、どんなルールにも縛られずに自分の生き方を貫いてやるっていう感情...。とはいえ、親が厳しかったから、そういう感情が生まれたワケじゃないんだ。どちらかといえば、その反対だった。僕の人生では嫌な出来事が色々と起こっていたから、僕はそれから逃れるために、自分の感情を音楽で表現するようになったんだ」
—アルバムの三部構成には、それぞれどのような意味があるのでしょう?
「“自分を救うためのマニュアル”が3パートに分かれているんだ(笑)。一部の“Hate”には、もともとあった感情が描かれている。二部の“Fairytale”では、遊ぶことがすべてだった、幼い頃の純真さを回想している。そして、三部の“Freedom”では、“Hate”っていう感情を捨てて、自由な気持ちになることを歌っているのさ」
—それらを貫く全体のテーマは“自立”と聞いたのですが、何からの“自立”なのでしょう?
「基本的には今暮らしているイギリスからの“自立”だね。この国から自由になるってこと」
—イギリスに対して反抗的な気持ちを抱いているんですか?
「いや...、反抗的ってワケじゃないよ。イギリスの田舎は本当に美しいし、ここには良いところも沢山ある。でも僕には...、イギリス人とウマの合わないときがあるんだ。だから僕は、自分のことを“ヨーロッパ人”だと思っている(笑)。イギリスよりもアイルランドに対して強い感情を持っているのは間違いないしね」
—わかりました。では、“自立”というテーマを通じて、リスナーへ伝えたいメッセージはあるのでしょうか?
「伝えたかったのは、アルバムで歌っていることはすべて僕が感じていることで、もしそれに共感してくれるリスナーがいたら、僕たちは仲間だってこと。それだけだよ」
interview & text TAKAHIRO KAWAMURA
translation KYOKO MAEZONO


