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RINOCEROSE インタビュー/LOUD138号

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iPod + iTunesも惚れ込んだ、フランスのエレクトロ・ロッカー。

'95年の結成時は“ベースとギターで演奏するハウス・ミュージック”というのがコンセプトだったね。
僕らはライドの大ファンだったから、マーク・ガードナーに、ぜひゲスト・シンガーとして参加して欲しいと頼んだんだ。
永遠の夢はリアム・ギャラガーと仕事することだよ。彼の声ってホントにいいよね!
今後の目標は、アツく、温かく、そしてセクシーな音楽を常につくっていくこと。
なぜなら僕はザ・ビートルズよりザ・ローリング・ストーンズ派だから。

ライノセラスはフランス南部にある学園都市、モンペリエ出身のジャン・フィリップ(g)とパトゥ(b)によるエレクトロ・ロック・バンドだ。ユニット結成は'95年で、これまでに『レトロスペクティヴ』('97)、『アンスタラシヨン・ソノール』('99)、『ミュージック・キルズ・ミー』('02)、『スキゾフォニア』('05)と4枚のアルバムを発表している。バンド名は、とある精神病患者が描いた絵のタイトルからとったそうだ。時には10人を超える編成で行われるダイナミックなライブは評判で、アンダーワールドのパリ公演、モービー主催のイベント<エリア・ワン>へも出演、ヨーロッパでは実力派として知られている。  そんな彼らの楽曲「キュービクル」が、iPod+iTunesの最新CMに起用された。旬のデジタル感満点なトラックは、ロック・ファン、クラブ・ミュージック・ファンはもちろんのこと、お茶の間のリスナーまで巻き込み、大きな話題となっている。この大抜擢と、ユニット結成十周年を記念して、うれしいベスト・アルバム『アンソロジー』がリリースされるということで、今をときめくライノセラスのジャン・フィリップを、電話で直撃してみた。

 ―LOUDには久々の登場なので、基本的なことから聞かせてください。ライノセラスには、バンドとしてのコンセプトはありますか?
「'95年の結成時は“ベースとギターで演奏するハウス・ミュージック”というのがコンセプトだったね。ベースとギターは、ハウスをつくるには間違った楽器かもしれなかったな(苦笑)。あと、当時は「500枚限定でシングル盤をリリースしたい」という目標があったんだ。ところが、突然話が大きくなって、スペインでデビュー・アルバムが発売されることになっちゃったんだよ!」
―シザー・シスターズやル・ティグラと共通する音楽性も感じるのですが、昨今のエレクトロ・バンドに関心はありますか?
「もちろんあるよ。ル・ティグラは2002年にニューヨークでライヴを観た。当時、彼らはほぼ無名だったね。面白いとは思ったけど、ライヴ内容はイマイチだったなぁ(苦笑)。今頃はきっと成長して随分良くなっているだろうけどね。シザー・シスターズは不思議だよね。ニューヨーク出身なのに本国よりイギリスで大当たりしている。ちなみに僕らのイギリスでのツアー・マネージャーは、シザー・シスターズのツアーー・マネージャーでもあるんだけど、彼は今じゃすっかり大金持ちで、スポーツ・カーを乗り回してるらしい(笑)。僕は'60年代のスポーツ・カーが大好きだから、彼に車の画像をメールで送ってもらったよ!」
―あはは(笑)。作曲は二人でスタジオに入って行うんですか?
「僕らの自宅スタジオで、ベースとギターを弾きながら曲を書き、できあがった段階でモンペリエ在住のフランス人プロデューサー、ジョニー・パロンボを呼んで仕上げるんだ」
―正式メンバーは、ずっと(パトゥと)二人ですか?
「うん。ライノセラスの楽曲を書いているのは僕とパトゥだから、正式メンバーは僕ら二人だけでいいと思ってる」
―あなたたちは二人とも、ミュージシャンでありながら社会心理学者でもあると聞いていますが、社会心理学者とミュージシャンに共通点はありますか?
「この二つは真逆なんだよね。心理学は科学に関係しているけど、音楽は芸術的な創造力を必要とするから。でも、ライヴで雰囲気を盛り上げるのに心理学は役だっているかな(笑)。最近はアーティスト活動の方が多忙で、心理学者としての仕事は二割くらいだよ」
―あなたたちの出身地フランスは、ダフト・パンクやヴィタリック、フェニックス、ジャスティス、セバスチャン・テリエルなど旬なアーティストの出身地としても知られていますね。彼らとの交流はありますか?
「今挙がったアーティストは、みんなパリ在住だから交流はないなぁ。僕らはモンペリエ在住だから、アウトサイダー的存在なんだ。パトゥはパリへ行った時、フェニックスのメンバーと飲んだことがあるんだって。僕は彼らの大ファンだから嫉妬したよ(苦笑)。エールとはフェスで何度か一緒になったことがあるかな。それから「ビッチ」のリミックスをEd Banger Recordsから発売した関係で、ダフト・パンクのマネージャーのペドロとは知り合いだよ」
―ベスト・アルバムがリリースされるということなので、過去を振り返る質問もさせてください。ファースト・アルバムでは、現在のサウンドのようなギター・リフを使いつつも、基本的にはエレクトロニクスの要素が強いハウシーなダンス・ミュージックを展開していましたよね。当時はどのような音楽に影響を受けていたのですか?
「スペインのレーベルから発売されたデビュー盤『Retrospective』(97年)では、'90年代プログレッシヴ・ハウス、リー・“スクラッチ”・ペリーやキング・タビーをはじめとしたダブ、それからマイ・ブラッディ・バレンタインやプライマル・スクリーム、ハッピー・マンデーズ、ザ・ジーザス・アンド・メリー・チェイン等のUKロックに影響を受けていたんだ。ロックとダンスを融合させた音が好きだったね。ジ・オーブもよく聴いたなぁ」
―幅広く聴いていたんですね。セカンド・アルバム、サード・アルバムではハウス・ビートがより軽快になりました。何か心境の変化があったのでしょうか?
「うん。この頃は“Naked Music(編注:ハウス系インディー・レーベル)”にハマっていて、ブラック系ハウスをよく聴いていたんだ。デビュー作がブレイク・ビーツやトリップ・ホップ寄りなのに比べ、二作目『Installation Sonore』(99年)、三作目『ミュージック・キルズ・ミー』(02年)は、たしかにハウス色が濃いね」
―とはいえ三作目までは、エレクトロニックなハウス・ビートに時おりギター・リフが入るというスタイルでした。しかし「キュービクル」が収録されている最新作『Schizophonia』では、より意識的にギター・サウンドを取り入れ、ロックの要素を強めています。何がきっかけで、こうなったのでしょう?
「これまでの音楽性を変えたくて、ロック色の濃い作品にしようと考えたのさ。でも、デモの時点ではすべてインストだった。“一、二曲はヴォーカルを入れたいなぁ”と漠然と思っていたところ、ちょうど元ライド(編注:'90年にデビューした、イギリスはオックスフォード出身の4人組バンド)のマーク・ガードナーが、アコースティック・ライヴでモンペリエ近くのトゥールーズに来たんだ。僕らはライドの大ファンだったから、ライヴ後、ライノセラスの新作にぜひゲスト・シンガーとして参加して欲しいと頼んだんだ。彼は、なんと即座にOKしてくれた。その三週間後には、今回のベスト盤に収録された「マイ・デーモンズ」を含む計三曲を僕らのスタジオで録っていたね。ライノセラス初のヴォーカル曲をマークに歌ってもらえて最高だったよ! ヴォーカリストのロック・ヴァイブがうまく出せたと思う」
―マーク・ガードナーとの出会いが、ロック色をさらに加速させるきっかけとなったのですね?
「うん。マークとのコラボ曲の出来があまりにも良かったから、他の曲でもヴォーカリストを起用することにしたんだ。その結果、ほぼインストだった楽曲たちが、最終的には全曲歌ものに仕上がったっていうわけ」
―なるほど。では、『Schizophonia』をつくる際に、インスピレーションになったのは何ですか?
「LCDサウンドシステムやザ・ラプチャーをはじめとした、ニュー・ヨーク出身のバンドからインスピレーションを得たよ。あの作品は、満足できる内容に仕上げるために、一年半もかけて制作したんだ」
―『Schizophonia』ではマーク・ガードナーの他に、インファデルスのブナンことダニエル・ザック・ワッツ、デッド・コンボのヌッティ・カタヤをゲストに迎えています。とてもクールな人選だと思うんですが、彼らを起用した理由を教えてください。
「ブナンは'60年代ガレージ・パンクを彷彿とさせるシャウト系ヴォーカルが好きだったから。一方ヌッティは、イギー・ポップのようにカリスマ性あるロック・ヴォイスに引かれたんだ。他にも「ビッチ」を歌っているフランスのバンド、ファンシーのジェシー・チェイトンがゲスト・ヴォーカリストとして参加しているよ。僕らのマネージャーが海外アーティストのプロモーターも兼ねている関係で、ゲスト・ヴォーカリスト達と連絡を取るのは簡単だったね」
―iPod + iTunesのCMに使われてている、『Schizophonia』収録の「キュービクル」は、ポップで親しみやすい曲ですね! この曲が起用されるまでの経緯を教えてください。
「経緯は……偶然決定したからわからないんだ(笑)。たぶん、歌詞内容が“小さくてもクォリティの高い”iPodと一致したんじゃないかなぁ」
―iPod + iTunesのCMに起用されることが決まったとき、どんな気分でしたか?
「とても嬉しかったよ! これまでのCM曲も全て素晴らしいし、iPodは音楽の未来を担っているからね。アップル社の製品は全てデザインが美しいし、iPodのCM曲に選ばれることはアーティスト冥利に尽きるよ」
―現在大反響だと思いますが、ヒットして身の周りの変化を感じますか?
「フランスではちょうど来週(編注:4月最終週)からCMが放映されるから現時点ではまだ大きな変化はないけど、「キュービクル」のヒットで、長年の夢だったフジ・ロックに出演できることになって嬉しいよ」
―ベスト・アルバムの選曲は、どのように進めたのですか?
「実は僕らの選曲じゃないんだ。「キュービクル」がiPodのCM曲に決まった際に、アメリカ側のA&Rがベスト盤の話を持ちかけてきたのさ。で、ちょうど今年の10月に結成十周年を迎えることもあったから、僕らもベスト盤を出すにはいいタイミングだと思ったんだ。もし僕が選曲していたら、ライノセラスが通常ステージで演奏するナンバーを収録していただろうけど、このベスト盤には、これまでに一度もステージで演奏したことがない「ル・トライアングル」や、ザ・キュアーのカバー「ロスト・ラブ」等、すっかり忘れていた曲も収録されているんだ。それらの曲を再認識できて良かったよ」
―ベスト・アルバムの中で、特に思い入れの強い曲があったら教えてください。
「『Retrospective』収録の「ラ・ギタリスティック・ハウス・オルガニザシオン」。これは僕らがライヴで演奏している曲の中で、もっともオーディエンスからの反応が良いナンバーなんだ」
―今までのあなた達の音楽活動を振り返ってみていかがですか?楽しかったこと、苦しかったことなどあったら教えてください。
「うーん。いろいろあるけど、一番嬉しかったのは、最初にスペインのレーベルと契約できたときだったな。今でもスペインの野外フェスにはよく出演しているんだ」
―今後、誰かとコラボレートする構想や希望はありますか?
「元ストーン・ローゼスのイアン・ブラウンとコラボレートしてみたい。どうやら僕らの三作目『ミュージック・キルズ・ミー』を気に入ってくれたらしいんだ。僕の永遠の夢はリアム・ギャラガーと仕事することだよ。彼の声ってホントにいいよね!」
―FUJI ROCK FESTIVAL'06で来日が決定しましたが、ライブはどんな編成で行うのですか? 大所帯だという噂を聞いたのですが?
「基本的にはベース担当のパトゥとギター担当の僕、他にギタリスト、ドラマー、VJを加えた計五人でやるよ。十年間このチームでツアーしてきたから、息はピッタリなんだ。ゲスト・シンガーが参加する時は、人数が増えるね。日本は映画『ロスト・イン・トランスレーション』で描かれていたような国なの? 実際この目で見るのが今から楽しみだよ!」
―さぁ、どうでしょうか(笑)? フジロックでのライブを楽しみにしています! では最後に、今後の予定と目標を教えてください。
「フェスやヨーロッパでのライヴの他、九月には全米ツアーがあるよ。それから、この秋にはライヴDVDを発売予定なんだ。このDVDには“MTVのカメラ・クルーが撮影してくれた大がかりなものから、ファンが送ってくれたライヴ映像まで収録している。ファンの熱気が伝わってくる映像って面白いんだよ! この他、あらゆる世代、職業、人種の人達に僕らのの音楽を試聴してもらい、聴いた感想をまとめた“逆インタビュー集”もオマケで入っているんだ(笑)。あと、まだ本格的には取り掛かってないんだけど、新作を早くて来春くらいにリリースするつもり。温かみのある作品になると思うよ。リリースできるかは、最新作『Schizophonia』と今回のベスト盤のセールス、それからツアー日程にもよるけどね。今後の目標は、アツく、温かく、そしてセクシーな音楽を常につくっていくこと。なぜなら僕はザ・ビートルズよりザ・ローリング・ストーンズ派だから。ザ・ビートルズも最高だけど、ストーンズっていつもアツくてセクシーだろ? そういう作品をつくりながら、これまで行ったことのない国で演奏してみたいね!」