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UNDERWORLD インタビュー/LOUD133号

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ダウンロードで新曲を発表!


 131号でアンダーワールドのカール・ハイドは「新作の発表は10月の予定で、www.underworldlive.comで発表するよ。これはリックと僕が長年温めてきた“アルバム以上”のビッグ・プロジェクトなんだ」と語っていた。実際に事が動いたのは11月9日。彼らはなんと自分達のサイトからダウンロード形式で『lovely broken thing』をリリースした。アンダーワールドほどのビッグ・アーティストが、レコード会社を介さずダウンロードで新曲を発表するなんて...。しかもこの作品は「jal to tokyo」「billy goat」「peggy sussed」「dub shepherd」「lenny penne」「monkey wink」「witness」の7曲をまとめた28分36秒のmp3のみならず、カバーのPDFデータ、カールが撮った177点の写真を収めたhtmlデータとセットになっていた。
 音楽業界の枠組みをも震撼させかねないこの試み、その真意はどこにあるのか? エレグラで来日していたカールに語ってもらった。


僕とリックは26年も共に活動してきて、
そのほとんどの期間を伝統的な形で、
伝統的なレコ-ドでリリースすることに費やしてきたから、
何か違ったこと、ぬるま湯じゃないことをやる時が来たと思ったんだ。


―アンダーワールドがサイトで始めたことは、音楽やアートの表現、それを受け手に伝える方法を根本からかえるようなエポックメイキングなことだと思います。この構想はいつ頃思いついたんですか?
「何年も前から考えてたんだ。リックのアイデアだったと思うな。彼はいつもこういうことを思いつく。僕らは26年も共に活動してきて、そのほとんどの期間を伝統的な形で、伝統的なレコ-ドでリリースすることに費やしてきたから、何か違ったこと、ぬるま湯じゃないことをやる時が来たと思ったんだ。バンの後ろから、アナログ・レコードをDJショップに直接持ち込むような、即効性があるようなことをね」

―リリース形式の変化は、パンクやハウスの登場と同じくらい大きなムーブメントになる可能性を秘めていると思いますが、自分達が始めたことの未来像を既に描いていますか? あるとすればそれはどのようなものですか?
「今は実験してるところなんだ。CDやレコードをレコード会社から出すつもりもあるけど、2、3年は実験してみたいと思ってる。僕らのやり方で、僕らの時間でね。これにはdirty.orgで、僕らがやっているウェブラジオが深く関わっているんだ。ラップトップで世界中どこにいても音楽がつくれるようになったり、ファイルを交換したりできるようになったのと同じくらい、そのウェブラジオの存在は大きいね。ウェブラジオを通じて、多くの新しい音楽やジャーナリストと出会ったし、それがソングライティングにも活かされている。'90年代初期にダレンが自分のレコードを持ってきて聴かせてくれたのと同じような役割を果たしているよ。あと、僕らは今ジョン・ピール(編注:UKで最もリスペクトされていたラジオDJ。故人)のプロダクション・チームと密接な関係にあるんだけど、彼らが音楽を紹介してくれたり、おかげで小さなレーベルが音を送ってくれたりするようになった。それによって、みんなが聴いている音楽を共有する意識ができて、お互いに刺激し合うようにもなったんだ。ケミカル・ブラザーズやザ・プロディジーやレフトフィールドのような仲間が成功していった時もよかったけど、今はジャンルを超えて、ダンスミュージックだろうがメタルだろうが、自由にバンドどうしがリンクできるからよりイイね。ウェブラジオで僕らは解放されたし、そこからたくさんのエネルギーをもらったよ」

―'90年代のクラブやレイブが果たしていた役割を、ウェブが果たしているということですね。
「ウェブラジオやポッドキャスティング、ブログ、個人のサイトが果たしていることは、'90年代初期にクラブ・カルチャーが果たしていたことと似ていると思う。でも、僕らは今でも心のどこかでクラブにルーツを持っているし、12インチ・リミックスもリリースするし、肉体的に音楽を感じることも大事だと思うけど」

―ウェブでは、アーティストと受け手の間に今までと違った感情が生まれるように思います。アーティストは思い通りに作品を届けることができるし、受け手はお気に入りのアーティストを直接サポートすることができますからね。そういったことは意識していますか?
「意識しているよ。それはとても大事だね。2000年に『Everything,Everything』をリリースした後、underworldlive.comを立ち上げてウェブダイアリーを書き始めたんだけど、その日、その夜にダイレクトに発表できて、変更したい時はいつでも変更できるってことがファンタスティックだと思ったね。1~2時間もすれば反応が返ってくるし、フォーラムには地球の裏側にいる人も書き込んでくれる。さらに、ウェブラジオを始めて、それが違う次元に到達したよ。自分達のスタジオから2時間ライブ放送をして、それについてチャットで語ったり、ウェブカムでジャケットを見せたりできるようになった。そうしたインターアクティブなことは自分達にとって良いし、何より未完成なものに対する反応を見ることができる。それを見て曲をつくり変えていくのは、ジャムをしているようなもので、刺激になるんだ」

―『lovely broken thing』の中で、「dub shepherd」と「monkey wink」はインタールード的役割を果たしていますが、これらは変わっていく要素のあるものなんでしょうか?
「その可能性はあるね。一曲づつ完成させていって個別に出すかもしれない。ライブで演奏しているものは、形が変わっていくしね。未完成のものでも、大きなくくりの中で素晴らしければ発表するよ。今回リックがやっていることは、トラック自体を要素にして大きい作品をつくるということだったんだ」

―伝統的なシングルやアルバムとは違った概念ですが、それはどこから思いついたんでしょう?
「それはリックのアイデアだね。彼は変化を欲していたんだ。彼はひとつひとつのトラックを時間をかけてつくりこむのではなく、す早いプロセスでつくりたかったのさ。僕らはPowerbookを使って、お互いの作品の上にジャムを重ねていった。フリーで楽しかったな。リックは、そのジャムを最後まで通したかったんだろう。あとは、ジョン・ピールやiPod Shuffleの影響で、いろいろなジャンルを一緒くたにしてみたかったってこともあるね。それと、スティーブ・ホール(編注:JBOのヘッド)が、彼なりの角度でまとめてくれったってのもあるかな。その結果、今回(『lovely broken thing 』)はエレクトロっぽくなったし、12月7日にはダブっぽい第二弾『pizza for eggs』が出るんだ。その次も考えてるけど、好評であれば、今後もこういう形で出していこうかな」

―これらのリリースは、“The Riverrun Project”のワンパートなんですよね。
「そう。ライブのダウンロードも含めてそう」

―ウェブラジオも?
「そう思うね。もともとはダウンロードだけだったんだけど、今はジョン・ウォーウィッカーとコラボって、携帯で撮った写真を3万6千点集めた本を出そうという話しもあるんだ。ジョンはオーストラリアのメルボルンに住んでるんだけど、インターネットを通して、エレグラ用の映像も届けてくれたよ」

―ジョンが手掛けた『lovely broken thing』のアートワークには、“theriiverrun03”と入っていますが、なぜ“03”なんですか?
「わかんない(笑)。3で始めたかったんだ。1や2に戻るかもしれない。『スター・ウォーズ』は4
で始まってるじゃない(笑)。次は4だよ」

―シリーズは何作出るか決まっているんですか?
「いや、180曲書いたんだけど、それを全部ダウンロード形式で出すか、従来のレコードやCDという形態で出すか、まだ決めていないんだ。今の段階で、次とその次まではできてるけどね。12インチを出しているような感覚で、ワクワクするよ」

―では、レコード会社からアルバムを出す予定も既にあるんですね。
「うん。そこに戻るつもりはあるんだけど、今やっていることと並行してやりたいね。たまたま契約が今無いから、このチャンスを活かして、自分達なりにやってみて、勉強したいと思ってる。レコード会社とやる時も、その知識が活かせるといいね」

―『lovely broken thing』に収録されている7曲は同時期の録音ですか?
「いや。レコーディングは2003年に始めてるんだけど、曲はどれも1箇所以上の違う場所で書いたんだ。「jal to tokyo」は空の上」

―JALの機内で?
「そう。日本、オーストラリア、UKでもやったけどね。他の曲も世界中いろんな所で録ったんだ。'82年頃、自分が夢みてたことが実現した感じだね。“ジャマイカやアフリカで録ったものを1曲にしたい”って言ってたんだよ」

―「peggy sussed」はシングルカットされそうな曲ですが、そういう予定はありますか?
「いや、「jal to tokyo」をiTunesで配信してるけど、そういうことは考えてないな。あれはディズニーランドに行って、ミッキーマウスに出会い、宗教的に啓蒙された感じを歌にした曲だね(笑)」

―「witness」は一番カールっぽい曲ですが、この曲が生まれた背景を教えてください。
「思い出せないな。やりとりが多すぎたから。リックがやってたことへの反応だったかもしれないし、ただ退屈してたのかもしれないし、エレクトロニックなものをやり過ぎたことへの反動としてアコースティックなものをやろうとしたのかもしれない。ひとつ言えるのは、アンダーワールドには、どんなものでもいいから音楽をつくり続けるっていう、リックのコンセプトがあるってことかな」

―「jal to tokyo」もジャムってるうちに出来たんですか?
「あれは短時間でできたんだ。リックがトラックを書いて、僕は詞を持ってたから、それを彼のPowerbookに内臓マイクで吹き込んだ。だから音は悪かったんだけど、リックは歌詞とリズムが気に入ったから、ボーカルにボコーダーをかけた。そうしたらベターになった。実は声には、そんなにこだわっていないんだ。単なるノイズ・ジェネレーターのときもあるし、音楽の一要素だから」

―幕張メッセのライブを会場に来てくれた人エクスクルーシブで販売しましたが、今後、ライブをこのような形でリリースしていくことを考えていますか?
「要望があればやりたいね。今までもdirty.orgでは、デジタル・マルチで録ったものを無料で提供してきたりしたんだけど、今回はエレグラっていうことで、特別にCDを出そうってことになったんだ。ジョン・ウォーウィッカーが、“ブートレッグ”っぽいアートワークをつくってくれたよ」

ー今後、何か考えていることはありますか?
「僕らはとてもオープンなんだ。ガブリエル・ヤレット、ブライアン・イーノともコラボしているし、ピック・アンド・ダンはとても面白い連中で、一緒に何ができるか楽しみだ。スヴェン・ヴァスとも話しているよ。彼とは長いこと友達で、ずっとサポートしてくれてるから、何かできないかと思ってね。ドアは開かれてるよ」


interview TOMO HIRATA
translator YURIKO BANNO