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UNDERWORLD インタビュー/LOUD143号

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original soundtrack
UNDERWORLD and GABRIEL YARED
BREAKING and ENTERING
(JPN) V2 / V2CP-310


UNDERWORLD & GABRIEL YARED
アンダーワールドが巨匠ガブリエル・ヤレドとつくり上げた最高級映画音楽の世界


 アンダーワールドが全面的にスコアを手がけた、アンソニー・ミンゲラ監督による最新映画『BREAKING and ENTERING(原題)』(来年のゴールデンウィークに日本公開予定)のサウンドトラックが発表された。ミンゲラの映画には欠かせない音楽家、ガブリエル・ヤレドとの共作というスタイルで制作された話題作だ。 本作は、もちろん従来のアンダーワールド作品とはひと味ちがう音楽で構成されている。映画のストーリーや映像、ヤレドとのセッションといった要素が共鳴し合ったところに生まれた音世界は、非常に繊細なものだ。そこには、アンダーワールドの芸術性、作家性をより色濃く見ることができるだろう。
 ザ・リヴァーラン・プロジェクト以来の新展開となるこの作品について、アンダーワールドのカール・ハイドから話を聞いた。


僕ら三人で“ヤレドワールド”っていうグループを結成して、
アビー・ロード・スタジオで、クラシック楽器とエレクトロニック機材を使い、
即興的に作曲活動をしたんだ。
彼は本当に即興の上手いピアノ奏者だし、最高の作曲家だ。


―まずは今回どういう経緯で、『BREAKING and ENTERING(原題)』のサントラを手がけることになったのか教えてください。
「アンソニー本人から直接頼まれたのさ。彼は、僕らの音楽を聴きながらこの映画の脚本を書いていて、ガブリエル・ヤレドと僕らをコラボさせようと思いついたらしいんだ」

―当初からガブリエル・ヤレドとの共作を前提にしたプロジェクトだったんですね。
「そうだよ。初めから決まっていたことだった。アンソニーの提案だったからね。結果的に最高の経験をすることができたから、感謝しているよ」

―アンソニー・ミンゲラはイギリスを代表する映画監督ですが、彼にはどのような印象を持っていましたか?
「リックが昔から彼の映画『リプリー』のファンだったから、それが彼に対するイメージのほとんどを占めていたなぁ。僕自身もあの映画を観てすごく感心したし、とにかく成功している映画監督っていう印象だったね」

―ちなみに、アンソニー・ミンゲラの出世作『ザ・イングリッシュ・ペイシェント』が公開されていた頃は、奇しくも「Born Slippy」が大ヒットして、ダニー・ボイルの映画『トレインスポッティング』が話題になっていた時期でもあるんですよね。今回のサントラの話を聞いたとき、タイミングとは面白いものだなぁ、と感じました。
「ハハハ。そのふたつは、全くテイストの違う映画だったね!」

―そうですね(笑)。ガブリエル・ヤレドと言えば、映画好きなら知らない人はいないほど 数多くのサウンドトラックを手がけていますね。彼はどのような人物でしたか?
「彼は温かくて、オープンで、とても寛大な人だったよ。一緒に仕事をした時間は、本当に素晴らしかった。僕ら三人で“ヤレドワールド”っていうグループを結成して、アビーロード・スタジオで、クラシック楽器とエレクトロニック機材を使い、即興的に作曲活動をしたんだ。彼は本当に即興の上手いピアノ奏者だし、最高の作曲家だ。アビーロードのスタッフは、ガブリエルがそうやって即興的なことをするのを初めて見て驚いていたらしいよ。今回の仕事のおかげで、僕らは良い友人関係を築くことができた。このサントラの次に、またアルバムを一緒にやろうって話も出ている。それは映画音楽じゃなくて、オーケストラを使ったものになるかもしれない。彼とは、これからもそうやって一緒に仕事をしていくつもりだよ」

―制作は、具体的にどのように進めたんですか?
「最初は即興で始めて、そこから曲をつくっていった。一緒にスタジオに入る予定がつかないときは、それぞれが自分のスタジオでつくった素材をファイルにして、メールで送り合ったよ。ガブリエルはロンドンとパリを行ったり来たりしているからね。僕が自分のスタジオにいるときに、アビーロード・スタジオにいるリックやヤレドから“今メールで送った曲のファイルに問題があるんだけど、直せる?”みたいな電話がかかってきて、すぐにそれに取り掛かってファイルを送り返して、彼らがさらに手を加えたものがまた戻ってきて...という風に、ネット上でジャム・セッションを繰り広げたこともあったな。でも、大半は三人で集まって、即興でできた曲をレコーディングして、それを発展させていくという形でつくったよ」

―あなた、リック、ヤレドの三名で、役割分担はありましたか?
「三人とも同じ役割のときもあったし、違うときもあったね。そのへんはバンドみたいなものだった(笑)。それぞれの役割は毎回変わっていたけど、プロデューサーは基本的にリックだったな」

―映画の各シーンとは、どのようにしてサウンドをマッチさせていったんですか?
「指示を受けたとおりに、必要とされているフィーリングやムードの曲をつくっていき、初期段階の曲をアンソニーに聴いてもらって、フィードバックをもらうって感じだったね。実はアンソニーの希望で、サウンドを映画よりずっと先に完成させたんだ。その後、映画の内容が何度も変わったから、音楽も毎回それに合わせて変えなきゃいけなかったし、映画ができてからも、サウンドがより効果的に映像にフィットするように調整しなくちゃいけなかった。一般的に考えたら大変な作業だね。でも、僕らはすごく恵まれていたよ。ガブリエルと付き合いの長い、作曲家でミュージシャンのカースティ(・ワーリー)とアラン(・ジェンキンズ)が、僕らの音楽を映画に合うよう完璧にアレンジしてくれたから。今回の仕事は、彼ら抜きには成り立たなかったね」

―サウンドトラックをつくり上げていく際に、最も意識したことは何ですか? 音楽的には、ほとんどの曲がビートレスで、メロディラインも映画のジャマにならないよう配慮しているように感じましたが。
「うんうん、そうだね。アンダーワールドの音楽を聴く前、アンソニーはビートレスな音の世界の中で生きてきたんだ。彼は違う世界の住人なのさ。ダニー・ボイルと比べると、特にそうだ。僕らに近いタイプのダニーとは対象的に、アンソニーの音楽観はビートレスなものなんだ。僕らもそれを最初から理解していたし、彼がこの映画のためにどんな音楽を求めていたかもわかっていた。だから、作曲を始めてしばらくの間は、その点にだけ添うようにしていたんだ。でも、リックが“やっぱり何か足りない”って判断して、途中からちょっとリズムのあるサウンドも導入してみたんだ。もう少しやっても良かったかなとも思うけど、結果には満足しているよ」

―あなたとリックはTOMATOでの活動も行っているので、これまでにも映像に音楽をつける仕事は数多く行っていますよね。今回、ヤレドから新たに学んだことはありましたか?
「彼から学んだことは、美味い飯。彼が選んだレストランにはハズレがなかった(笑)。あと、彼はすごくギターが上手いんだ...一言で言うのは難しいよ! 誰といても学ぶことは常にあるけど、 今回、僕らは彼ともっと仕事がしたいと思ったね。僕らにとって彼の作曲の仕方は刺激的だったし、とにかく言葉じゃ言いつくせないくらい多くのことを学んだんだ。“彼とまた仕事がしたい”、これってガブリエルに贈れる最高の賛辞じゃないかな」

―ところで、『BREAKING and ENTERING(原題)』は、どんな内容・ムードの映画なのでしょう。あなたが語れる範囲で結構ですので、ご紹介ください。日本では、まだ公開が先なんですよ。
「ふう....。僕は映画評論が大の苦手なんだ。僕にとっての映画鑑賞は、真っ暗な部屋の中で、大きなスクリーンと最高のサウンドシステムに囲まれて、一人の世界に没頭することだからね。映画を観た後に“どんな映画だった?”って聞かれても、“ああ、楽しかった。面白い経験だった。君も観に行った方がいいよ”っていう、全く参考にならない返事しか出てこないんだ(笑)」

―大雑把に言うと、ストーリーはハッピーな内容?
「ハッピーだし、悲しい映画でもある。現代のロンドンが舞台なんだけど、アンソニーの手がけたメジャーな映画の中では、初めて時代設定が現代のものだったね。彼が過去にチャンネル・4(イギリスのテレビ局)のためにつくった映画にも、現代を描いた素晴らしい作品があったけど、ハリウッドものではこれが初めてだよ」

―あなたの個人的フェィヴァリット映画は、どんな作品ですか?
「ファイヴァリットってないなあ、いつも変わるからね。でも、宮崎映画はファンタスティックだと思うな。彼の映画に使われている音楽も素晴らしいよ、オリジナルでね。僕は、サプライズをくれて、楽しませてくれる映画が好きなんだ。ジャンルにはこだわらないけど、映画を観る行為は別世界への旅みたいなものだから、自分や現実を忘れさせてくれるものがいいね。リックも同じだと思う。映画を観ている数時間、その中で迷子になれるものが好きなんだ」

―子供の頃から映画は好きな方でしたか?
「そりゃあね! 子供の頃から映画は好きな方だったと思う。僕らは以前から映像に興味を持っていたから、アンダーワールドの音楽には映画のサントラっぽいエッセンスがあるんだ。二人とも、真っ暗な部屋の中で大きいスクリーンの前に座ることが好きなんだ」

―リックと二人で映画を見たりすることもありますか?
「それは全くないな(笑)。僕らの会話の大部分は、音楽の話だしね」

―あなた達は、以前から映画音楽に挑戦したいと語っていましたよね。その最大の理由を教えてください。
「情熱を持って取り組める仕事だからだよ。実は僕らが映画のための音楽をつくるようになってから、だいぶ経つんだ。1984年、まだフィルー(Freur)だった頃に、今の僕らの名前の由来になったSF映画『アンダーワールド』(日本未公開)のサントラをやったのがいちばん最初だ。それ以降はテレビ番組やコマーシャルの音楽をたくさんやっていたけど、評価が高くなるに従って、映画音楽の依頼も増えてきた。ダニー・ボイル監督の映画音楽の仕事はもう4本もやっているよ。こうやって映画音楽をつくり続けることができて嬉しいね」―あなたの映画音楽に対する熱い想いは、どんな出来事から生まれているんですか?「11歳のときだったと思う。スタンリー・キューブリックの『2001年宇宙の旅』を観に行って、ぶっ飛ぶほど感動して、すぐに映画のサントラを買ったんだ。そこにジョルジ・リゲティの「ルクス・エテルナ」が入っていた。あの曲には僕の人生観を変えてしまうほどのインパクトがあった。それ以来ずっと僕はリゲティのファンだ。そういう意味で『2001年宇宙の旅』が、僕に映画音楽をディープな所まで追求させるきっかけをくれたと言えるね。それ以外は考えられない」

―では最後に、今後の活動予定を教えてください。ネット上で展開してきたザ・リヴァーラン・プロジェクトはどうなりますか?
「ザ・リヴァーラン・プロジェクトはいろんな形で永久に続いていくよ。本、映画、12インチ、僕らのHPで公開しているインターネット・ラジオ番組、みんなそうだ。それに次のスタジオ・アルバムもザ・リヴァーラン・プロジェクトの一環になる」

―ニュー・アルバムは、いつ頃になりそうですか?
「準備は2003年から始めているから、来年にはリリースしたいと考えているよ」


interview & text FUMINORI TANIUE
translation KYOKO MAEZONO