UNDERWORLD インタビュー/LOUD154号
UNDERWORLD
スーパー・ダンス・アクトが放つ待望の最新作、キーマンはかく語りき。
PART TWO:リック・スミス・インタビュー
「Born Slippy」「Rez」「Two Months Off」といった名曲の存在と、卓越したライヴ・パフォーマンスで絶大な人気を誇るユニット、アンダーワールド。日本でもスーパー・ダンス・アクトとして君臨する彼らが、約五年ぶりとなる通算5作目のオリジナル・アルバム『Oblivion with Bells』をリリースする。彼らにしかつくり出せない緻密なサウンドと、より幅広い音楽性を披露した本作は、リバーラン・プロジェクトやガブリエル・ヤレドと共に手がけたサウンドトラックを経て制作された充実作だ。
そんな新作『Oblivion with Bells』は、いかにして制作されたのか。その舞台裏を探るべく、LOUDでは二ヶ月に渡って彼らをフィーチャー。先月号のカール・ハイドに続き、今号ではサウンド・メイクの鍵を握る重要人物、リック・スミスに語ってもらった。
最近のリックはなかなか表に登場しないだけに、プロデューサーとしての立場からアンダーワールドを語った貴重な内容となっています。お楽しみください。
僕は映画音楽の持つ雰囲気と
ダンス・ミュージックをいかにうまく融合させるか、
ということをずっと追求してきたんだ。
グルーヴ感とアトモスフィアの出合いをね。
——自身のサイト内で展開したリバーラン・プロジェクトやガブリエル・ヤレドとの『Breaking and Entering』と並行して、あなた達は4〜5年ほど前から今作の準備をしてきましたね。このタイミングでアルバムを完成させた心境はいかがですか?
「とても良い質問だね。というのも、僕はこれまでに、“何かをやり終えた”という気持ちになったことがないんだ。リバーラン・プロジェクトとは、その名の通り、様々な物事を川の流れのように止まらぬプロセスで表現していくものだしね。いつもある一つのプロジェクトが終わるときは、別のプロジェクトが新たにスタートするときだと感じているよ」
——アルバムがトータル・パッケージとして完成して、現物を実際に手にしても、まだ続いているプロセスの一つだと感じるんですか?
「その通りだ。曲は完成して世に出たあとも、ライブ演奏することで新たなアレンジになったり、変化していったりする。だから、今から2〜3年経過を見ていてほしい。もっといろいろなヒトやモノが関わり合っていくだろうからね。このアルバムの中には5年前からつくり続けてきた曲もあれば、30分でできた曲もあるんだけど、ある意味どの曲も完成品とは言えないんだ。これは、時に非常に憂鬱なことでもある。何事にも“これで終わった”と区切りをつけることが難しいってことだから(笑)」
——今回の曲づくりは、様々なジャム・セッションがベースとなっていますが、この制作方法にした理由は何だったのでしょうか?
「Mac OS Xに搭載されているコア オーディオ(Core Audio)という素晴らしいドライバ・システムが発明されたおかげで、今回はホテルや飛行機の中でも曲を書くことができたんだ。それもあって、これまではライブ・ステージでジャム・セッションをしていたけど、普段からもっとジャムをたくさんしようと思うようになったのさ。アルバムの制作過程で、その“ジャム”は様々な形態をとったよ。ただ、曲をつくるためにジャムをするというより、何らかの音を一緒につくり出す作業を楽しもう、という感じだったけどね」
——そんなジャムの成果だと思いますが、今作には現代音楽、アンビエント、エスニック、ロックまで、様々なタイプのサウンドが収められていますね。あなたはアンダーワールドのプロデューサー的役割を担っていますが、全体をまとめ上げるにあたって意識したことは何でしたか?
「シンプリシティ(シンプルであること/簡素・純真)かな。僕は、チームとして行ってきたジャム・セッションの結果がこのアルバムだと考えていてね。さっきも言った通り、このジャム・セッションは今後さらに続いていくものだから、より多くの人を巻き込んで、プロジェクト全体が進化していくような感覚を持たせるようにもした。つまり、過去の作品から続けてきたジャーニー(旅)の先に行くような作品にしたかったんだ」
——前回のインタビューでカールから聞きましたが、今作にはダレン・プライス、ピート・ヘラー、U2のラリー・マレン・ジュニアといったアーティストのほか、スティーヴ・ホール(JBOのエグゼクティブ・プロデューサー)やマイケル・レフティ(マネージャー)も参加しているそうですね。
「そうだね。今回はスティーヴやマイケルと一緒に、チームとして仕事することを大いに楽しんだよ。コラボレーションも楽しかったね。ガブリエル・ヤレドとのコラボレーションは、特に素晴らしかった。違った意見を吸収できて、本当に良かったよ。彼は、僕らがより幅広い音楽性を持つよう後押ししてくれたんだ。時に、結果よりも、そこにたどり着くまでのプロセスの方が大切なことってあるだろう? それもジャーニーの一部なんだ」
——ところで、あなたは以前から映画音楽やクラシック音楽を好んでいますよね。今作でも聴くことができるエレガントでデリケートなコードワークは、やはりそうした音楽からの影響が大きいんですか?
「カールも僕も映画音楽から大きな影響を受けていて、’90年頃から、僕は映画音楽の持つ雰囲気とダンス・ミュージックをいかにうまく融合させるか、ということをずっと追求してきたんだ。グルーヴ感とアトモスフィアの出合いをね。それは、音を使って絵を描く、という挑戦だ。キミの言うとおり、クラシック音楽も好きで、今は16世紀、17世紀頃の合唱音楽(choral music)に興味を持っている。そのシンプリシティに魅力を感じるんだ。僕の育ったウェールズには、グループで歌を歌う伝統があって、僕も賛美歌隊で歌っていたし、家族で歌うこともよくあった。年齢を重ねるごとに、そのことがいかに自分に深く根ざしているのか気づかされるよ。僕はとてもシンプルなハーモニーが好きなんだ」
——今作には「Boy, Boy, Boy」や「Glam Bucket」などロック調の曲もありますが、カールによると、もともとあなた達は根っからのロック少年というわけではなかったらしいですね?
「カールがなぜそう言うのか分かるよ。僕らは、“ドラマ”が好きなんだ。ドラマティックな展開がね。自然の中にいても、僕はドラマを楽しむ。例えば、公園のベンチで木を見ているとする。すべてが各々のリズムを刻み、穏やかで完璧な状態にあるのに、そこで突然何かが起こる。そういうドラマ性が好きなんだ」
——ロマンチックですね。
「もちろんロックが大好きだった時期もあったよ。少年だった頃、’80年代初頭の頃だね。あの頃は、ロックが音楽的に最も面白い音の使い方をしていた。当時はダンス・ミュージックよりもエキサイティングだった。カールも僕もロックが大好きというわけではないけれど、ギターも、ドラムスも、ベースも、たまには人のシャウトも好きさ(笑)。今作にはエッジの効いた曲もあるから、こういう質問をするキミの気持ちはよく分かるよ」
——このアルバムは、あなた達のルーツを表現していると思いますか?
「いい質問だ。僕らが探索しているものは、常に新しい音だけとは限らない。これまでの人生の中で何度も繰り返してきたところへ、再び探索しにいくこともある。このアルバムをつくっていたとき、僕らはよりリラックスしていた。自分たちの好きなものに対して、かまえずに接していたと思う。ブルースであろうが合唱曲だろうが、気になった音楽に対して、自分達がその日その時にどう感じるかということだけを手がかりにアプローチしていったんだ。例えば、ブルースっぽい要素が出てきたとしたら、まずは一瞬立ち止まって“コレは好きだろうか?”と考え、OKであればそのまま進んだ。重要な点は、僕らが何をやりたいのか、ということだったのさ」
——シンプリシティという発想につながりますね。
「大切なのは、音楽や曲のスタイルではなく、その音楽が人を動かすかどうか、聴く人の感情を揺り動かすかどうかということだ。そして、それができたら成功したということになる。でも、僕らの音楽を全員に好きになってもらいたいとは思わないし、その音楽から同じ感情を得てもらいたいとも思っていない。というのも、僕らの音楽はいわゆるポップスではないし、入り込むには少し難しいものだということを理解しているつもりだから。それはそれでいいんだ(笑)」
——あなたが曲づくりを行うときは、何からインスピレーションを得ることが多いんですか?
「映像や絵画といったビジュアルが多いかな。自然の中にいて見たもの、聴いた音からもインスパイアされるね。どこかにただ立って何かを見ているときや、ただ歩いているときにも、作曲したい衝動に駆られることがある。そして、おかしなことに、その衝動から逃げ出せない(笑)。どこからか、“たった今おまえが見たこと、聴いたことを音楽に翻訳して表現しなさい”と言われるんだ。それがスタート地点だね。それと、ダンス・ミュージックでは、“グルーヴが見える”。グルーヴは、ただ聞こえるではなく、目に見えるものなんだ。説明しにくい話ですまないが、そうなんだ」
——哲学的ですね。では、最後の質問です。今後の目標として、あなたもカールのようにフロントマンを務めるつもりはありませんか?
「フロントマン!? とんでもないよ! それはカールにおまかせだ。長年一緒にいると、お互い得意な面が見えるんだ。今後の目標は、音楽で様々なジャムをすることだね。そして、たくさんの音楽を発表して、多くの人たちと分かち合っていくこと。僕らは11月に日本へ行くよ。とても楽しみにしている!」
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Oblivion with Bells
(JPN) TRAFFIC / TRCP 11-12(CD+DVD)
(JPN) TRAFFIC / TRCP 10(通常盤)


