UNDERWORLD インタビュー/LOUD153号
UNDERWORLD
スーパー・ダンス・アクトが放つ待望の最新作、その舞台裏はいかに?
PART ONE:カール・ハイド・インタビュー
少しでもダンス・ミュージックに興味のある人なら誰もが一度は耳にしているだろう名曲「Born Slippy」を生み出したユニット、アンダーワールド。彼らは、ここ日本でも圧倒的なセールスを誇るスーパー・ダンス・アクトだ。ライヴ・パフォーマンスの人気も絶大で、フジロックやエレクトラグライドではヘッドライナーの座に君臨している。
そんな彼らが、オリジナルとしては『ア・ハンドレッド・デイズ・オフ』以来約五年ぶりとなる通算5作目のアルバム『Oblivion with Bells』をリリースする。自身のサイト内で展開したリバーラン・プロジェクトや、ガブリエル・ヤレドと共に手がけたサウンドトラックを経て発表する、待望の新作だ。その内容は、仲間とのジャム・セッションをベースに曲づくりを行ったという制作環境を裏づけるように、ダンス・トラックはもちろん、ロック、ダウンテンポ、さらにアンビエント・トラックまで包括するものとなっている。
バラエティー豊かな楽曲群が印象的な本作で、彼らは何を表現したかったのか。明治神宮内を散策しながら取材を行うというユニークなシチュエーションのなか、カール・ハイドが語ってくれた。
なお、次号では彼らを表紙でフィーチャー、サウンド・メイクの鍵を握るリック・スミスのレア・インタビューを掲載します。お楽しみに!
円を一周したとは言わないけど、僕らの音楽を再発見して、
自信を持って僕らのルーツや変わらぬ情熱を表現できる地点にまで来たとは言える。
推進力は仲間とのジャム・セッション
——今作『Oblivion with Bells』には、過去のどのアルバムよりも様々なタイプの楽曲が収められていますね。アルバムのテーマは何だったのでしょうか?
「特にテーマらしいものはなかったね。アルバムの内容に関しては、リック、僕、JBOのスティーブ(・ホール)、マネージャーのマイクというチームに任されていた。だから、彼らと共にいろんなタイプの曲、そしていろんな曲の別バージョンをつくって、その中から最も良かったものを選んで、アルバムにまとめていったんだ」
——ネット配信を軸に展開してきた“リバーラン・プロジェクト”の成果は、今作にどのような形で反映されていますか?
「このアルバムもリバーラン・プロジェクトの一部さ。今後、僕らがやっていくことは全てリバーラン・プロジェクトだ。ただ、このアルバムでは、ダウンロード楽曲よりも丹念に曲を仕上げているよ。意見を出すレベルでも、より多くの人が関わっているし、様々なアイディアをやりとりすることも多かった。他のミュージシャンに僕らの曲を演奏してもらったりもしたね。その作業によって、リックはその曲をどういう方向に進めるべきなのか知ることができたんだ」
——他に関わった人たちというのは、誰ですか?
「ダレン・プライス、ピート・ヘラー、ビッグ&ダン、U2のラリー・マレン・ジュニアなどが、実際一緒に作業をした連中だ。曲のパーツをデータでやりとりすることが多かったから、ヴァーチャル・ジャム・セッションみたいだったよ。あと、今作にはダニー・ボイルの映画『サンシャイン 2057』のために書いていた曲もあるから、彼も大いに関わったと言えるね。例えば、「Glam Bucket」は、もともとその映画のために書いた曲なんだ」
——U2とは今でも交流があるんですね。
「そうだね。彼らとは今も友達さ。僕の知る限り、ラリーはアンダーワールドの一作目からファンで、僕らにアドバイスをくれたり、何かとサポートしてくれている。例えば、「Boy, Boy, Boy」がもうすぐで完成しそうだという時点で、生ドラムの音をレコーディングしていたリックは、“ラリーだったらどうするのか意見を聞いてみよう”と言って、ツアー中だったラリーにネットを通じて曲を送ったんだ。そうしたら、彼は新しいドラム・パーツやパーカッションを入れて、送り返してきてくれた。それで、“この曲はリミックスということにしたらいいんじゃない?”という話にもなったよ。まあ、ラリーがリミックスの依頼をされることなんて滅多にないだろうけど」
——“Oblivion with Bells(ベルとの忘却)”というタイトルは、どこから考えついたフレーズですか?
「僕がいつも持ち歩いているノートがあるんだけど、その中からあまり考えずに出したフレーズだ。このタイトルをみんな気に入ってくれているみたいだから、時間が経つほど面白くなるだろう。というのも、時間が経てば、リスナー自身がタイトルに対してそれぞれの解釈を持つようになるだろ? そして、僕らにそれを話してくれる。そこで、僕らにとっても面白い解釈がクリエイトされていくわけだ」
ジャーマン・サウンドに再接近
——では、各曲について聞かせてください。ファースト・シングルとなる「Crocodile」は、アンダーワールドらしいエレガントでディープなダンス・トラックですね。この曲は、どのようにして誕生した曲ですか?
「ツアー中に生まれた曲で、当初はステージでインスト曲として演奏していたんだ。オーディエンスの反応がとても良かったから、アルバム制作中に、ヴォーカルを入れてみたのさ。この曲は当初、スタジオではあまり良い曲に聞こえなくてね。結局、スティーブとダレン・プライスにミックスをしてもらって、そこからリックが解決策となるインスピレーションを得たんだ。当初はアルバムに入れないつもりだったよ」
——そうなんですか。ちなみに今作には、例えば「Moaner」や「Dinosaur Adventure 3D」のようなアップ・テンポでテッキーなダンス・トラックが収録されていませんね。これは意図したことですか?
「ここ最近、僕らはドイツのクラブ・ミュージックをよく聴いているんだ。今のドイツのトレンドは、ディープでミニマル、そして少しテンポは遅めだ。リカルド・ヴィラロボスやジェームズ・ホールデンなんかも聴くんだけど、そういったものからの影響があるんだろう。最近の音に合わせて、曲によっては以前よりもテンポを遅くしているよ。スティーブがコクーンに近い人物とつながっていて、“この曲、スヴェン・ヴァスが最近プレイしている曲だよ”なんて言って聴かせてくれるから、再びドイツの音にハマるようになってきたんだ。僕らが、かつてどれほどジャーマン・エレクトロニック・ミュージックに夢中だったかということを、長いこと忘れていたな」
——今作での楽曲の幅広さを代表する曲としては、「Ring Road」「Glam Bucket」「Boy, Boy, Boy」などがありますね。例えば「Ring Road」では、エスニック系のビートがフィーチャーされています。これは、どこから生まれたアイディアですか?
「他の人からも何度か同じことを指摘されたよ。実は「Ring Road」には、最初はヒップホップぽい大げさなドラムが入っていたんだけど、最終段階になってリックがビートを入れ変えちゃったんだ。このアルバムで、僕らはいろいろとマッシュアップをやったね。ラテンビート、エレクトロニック・ビート、レッド・ツエッペリンぽいビートと、本当にいろいろなビートを試した。そのうちのひとつなんだ」
あのときギターにこだわったダレン
——「Boy, Boy, Boy」は、いわゆる“ヴォーカル曲”ですね。あなたのこうした歌い方を久々に聴きました。
「たしかに「Boy, Boy, Boy」は、フル・ヴォーカル曲だね。だけど、どう説明したらいいのかな...。誰かがあるグルーヴをリックに渡すと、彼は素晴らしいインスト曲を書く。そして歌わずにはいられないような曲だと、例のノートを開いて、僕は目に入った最も強い言葉を発する。次に、その強い言葉をリズムに合わせてつないでいくように歌うというか、話す。僕のヴォーカルとは、そういうものなんだ。そんなとき、昔は頭がときどきクレイジーになって、自分で頭を壁に打ちつけたりしていたけど、今はそれほどでもないな(笑)」
——「Boy, Boy, Boy」や「Glam Bucket」はロック・テイストの強い楽曲となっていますが、再びロックをやりたいという想いもあるんですか?
「いや、いや。そういえば、こんなエピソードがあるよ。僕らの二度目のギグはロンドンにあったサウンドシャフトで行われていたドラム・クラブでだったんだけど、バルコニー・スペースにリック、ダレン(・エマーソン)、僕があがったら、近くにいたオーディエンスが、“誰?”、“アンダーワールドだよ”、“知らないな”、“12インチで「Mother Earth」を出したヤツらだろ?”、“ああ、あれか”、なんて話していてね。で、僕がギターを持ったら、フロアの誰かが“まさかギターじゃないだろ?(not a fucking guitar)”って言ったんだって。当時は、ギターとヴォーカルを入れることが、クラブ純粋主義者への冒涜のように思われていたんだ」
——1991〜92年頃の話ですよね。時代を感じさせるエピソードですね。
「でも、“これからもギターを入れていくべきだ”と言ったのはダレンだった。僕もリックも“ギターはもういい”って思ってたけど、ダレンがギターにこだわったんだ。彼はザ・ビートルズなんかのファンだったし、ロックからバレアリック・シーンに入ったからね。そういえば、ちょっと前にリックと“俺たちロックも好きだよね?”、“たしかに好きだけど、そんなに好きじゃないかも”って、話をしたな(笑)」
最新作で到達した境地とは
——アルバム最後の曲「Best Mamgu Ever」は、そんなかつてのバレアリックな雰囲気を思い出させるトラックですね。これは、何にインスパイアされた曲ですか? いま、イビサでボケボケするような生活はしていませんよね。
「ハハハハ。特にスティーブがイビサに住むようになってからは行ってないよ(編注:彼の冗談です)。リックと僕はずっと前からいつも頭がトリップしているから、もともとダブっぽくてトリップ・アウトしたようなグルーヴが好きなんだ。この曲は本当に多くの変貌をとげた曲で、当初ははっきりしたヴォーカルが入っていた。その後ヴォーカルがなくなり、次にクローディア・シモンズというヴォーカリストに歌ってもらったんだけど、彼女の声が美しすぎて、僕の声がえらいひどく聞こえてしまってね(笑)。それでまたヴォーカルを取り除いたんだ。この曲は、まるで映画のようだね。雲のようにヴォーカルが聞こえて、また雲の中に消えていき、今度はインストのサウンドが入ってくる。確かに、昔のアンダーワールドに引き戻してくれるような感じの曲だ」
——ええ、本当に。
「ポップ・ソングのように、全ての要素が分かりやすくインスタントに出てくる感じではなく、とても長尺で、全部を聴き終えたと思った最後の頃にやっと声が出てきたりするようなね。僕は、一つの旅のように途中で様々なことが起ったり、思いがけない要素が入ってくるような音楽が好きなんだ」
——今作のアートワークは『Dubnobasswithmyheadman』を連想させるものですが、音楽的にも初期アンダーワールドにさかのぼるような感覚はありましたか?
「音楽的にはないね。やはりunderworldlive.comでやってきたラジオ番組や、近年手がけた二本のサントラが大きなインスピレーションになったと思うから。ガブリエル・ヤレドは、リックに“本物のピアノをもう一度弾いてみたら?”って薦めてくれたり、僕にギターをコーチングしてくれたり、オーケストレーションや、声を使ってコーラス隊をつくる方法を教えてくれた。でも考えてみると、アンダーワールドは最初からジャーマン・サウンドが好きだったし、映画音楽や環境音楽にもずっと興味を持っていたし、幅広い音楽を扱ってきた。だから、円を一周したとは言わないけど、僕らの音楽を再発見して、自信を持って僕らのルーツや変わらぬ情熱を表現できる地点にまで来たとは言えるね。『Dubnobasswithmyheadman』の頃から一緒にやっているスティーブ・ホールが、“それでいいんだ”って後押ししてくれたところもあるけどね。彼がいたことは大きいかもしれないな。そういう意味では、このアルバムは僕らのルーツも表現しているんだろうね」
——では、今後の活動予定を教えてください。
「10月にアルバムを出した後、アメリカ、UK、ヨーロッパをツアーして、11月には日本に戻ってくる予定さ。あとは、ライブのとき、僕らのパフォーマンスだけじゃなくて、TOMATOにショート・フィルムやアートワークをやってもらおうと思っている。何年か前に、ただレコードをつくって、終わったら次に別のことをやるというのでは、クリエイティブ面において物足りないって気づいたんだ。もちろん、本や写真などもリリースしていくよ。いろんなレベルで発表していきたいね。その中には、フリーでプレゼントしていいかなって思うものもある。それと、インターネット・ラジオも再開するよ。シーンとつながる良い方法だから、リックも僕も早くやりたいと思っているんだ」
interview & text FUMINORI TANIUE
interpretation YURIKO BANNO
translation ERIKO HASE
photo KENJI KUBO
>album
UNDERWORLD
Oblivion with Bells
(JPN) TRAFFIC / TRCP 10
>single
UNDERWORLD
Crocodile
(JPN) TRAFFIC / TRCP 13


