トモ「分かりました。DJ関連以外では、'08年の音楽で面白かったものは何かありましたか?」
大沢「それも、あんまりピンとくるものがなかったですよね。よく聴いたのはゴールドフラップ(Goldfrapp)の『Seventh Tree』とかかな。サイモン&ガーファンクルみたいな音なんですけど、かなり打ち込みでつくったアルバムと思いますよ。よ〜く聴いてみたんですけど、凄いなぁって思った。録音の仕方も独特だし。あと、友達に勧められて聴いてみたら良かったのが、リカ・リ(Lykke Li)の『Youth Novel』。要するに、そういったものが多かったですね」
トモ「フォーキーでアコースティックなテイストなんだけど、ダンス・シーンともそれほど離れていないようなサウンドですね。では、大沢さん的には、'09年はどのようなサウンドに注目して、どんな音楽をつくっていきたいですか?」
大沢「やってみたいことは全部やりたいですね。プロデュースの分野では、生音もエレクトロニックも関係なく、ポップでキャッチーなものをやっていきたいかな。自分自身の音楽に関しては、具体的にはまだちょっと分からないですかね。ravexも実験なんで。だから、コレと決める必要がなくなってきたのかもしれない。'98〜'99年くらいの、プロデュースや自分の仕事が忙しくなってきた頃と似ているかもしれません。何でもやる、って感じ」
トモ「では、あまり選別せずに仕事をしていきたい、と」
大沢「そうですね。もちろん、自分が関わっても上手くできそうもないものは、お断りすると思いますけどね。過去のスタイルを期待してくるオファーに対して、今の自分流でちゃんと返せるのであれば、やらせてもらいたいです」
トモ「大沢さんの過去のスタイルを期待するオファーに対して、最新のアイディアで返せればやりたい、ということですね」
大沢「そうですね。今は、スタイルを言葉で語ること自体が無駄になってきたように感じてますし。例えば、先週までつくっていた曲があるんですけど、それをみんなで聴いてみたとき、“コレ、なんて呼べばいいのかな?”って話になったんですよ。一応女性ヴォーカル曲なんですけど、なんて呼んだらいいか分かんないんです(笑)」
トモ「確かに、ジャンル分けは難しくなってきていますよね。でも、そうやってジャンルが特定できないようなものを出していくのは、アーティストとして大変なことですよね?」
大沢「そうですね。新しい提案なんでね。ま、誰かが名前をつけてくれればいいですよ、“ニュー・エキセントリック”みたいに(笑)。そういえば先月対談した後、昔の音楽をいろいろ聴き返してみたんですけど、“ニュー・エキセントリック”は、ちょっとマキシマム・ジョイなんかとも近いのかなぁって思いましたね」
トモ「マキシマム・ジョイ、懐かしいですね。最近の若いバンドに、’80年代ニューウェイブに似た質感があるのって、面白いですよね。そういった時代の空気も取り入れていきたいですか?」
大沢「そうですね。でも、時代の空気に関わらず、'80年代の音楽はずっとボクの中にあるものだし、同時にボクは新しい音楽から刺激を受け続けるタイプだと思うんです。というのも、ボクは思春期の頃に、姿勢、アティテュードにおいてニューウェイブに影響を受けていますから」
トモ「なるほど。そこに、大沢さんの音楽的信念があるわけですね」
大沢「そうです。ただ...今後、音楽は総じてちょっとつまらなくなっていきそうな気もしています。景気悪いですからね。不景気になると、音楽やファッションは保守的になるじゃないですか」
トモ「そうですね」
大沢「もちろん、一方で面白い人が出やすい土壌もできるんですけどね。企業的には保守的になって、そういうものが売れていくと思うんですけど、そうなると、より個性的な人が際立つし、マジョリティーになることはないけど生まれやすくなる。で、ボクは、そのとき後者でありたいんですよ」
トモ「なるほど。そういう意味では、今年は保守的な沈滞する動きと、それに反発する動きがでてきそうだ、ってことですかね」
大沢「そんなところじゃないですかね」




