マンチェスター・ブーム、インディー・ダンス・ブームが巻き起こっていた'90年に、デビュー・シングル「Indian Rope」とファースト・アルバム『サム・フレンドリー』を、共に全英チャート1位に送り込み、一躍UKロック・シーンの最前線に躍り出たザ・シャーラタンズ。以来、イギリスを代表するロック・バンドとして、'90年代、'00年代を通じて、常に高い人気を誇ってきた実力派だ。特に、'95年にリリースした通算四作目のアルバム『ザ・シャーラタンズ』で、再び全英チャート1位を獲得して以降は、『テリング・ストーリーズ』('97/全英1位)、『アス・アンド・アス・オンリー』('99/全英2位)、『ワンダーランド』('01/全英2位)と大成功させ、バンドとしての黄金期を確立。近年は、インターネットを通じて、新作アルバムの無料ダウンロード配布も行うなど、活動の幅を広げている。
彼らが、『テリング・ストーリーズ』以来の傑作とも称された前作、『ユー・クロス・マイ・パス』('08)以来となる、通算11作目のオリジナル・アルバム『フー・ウィ・タッチ』をリリースする。プロデューサーに、ザ・ヴァーヴ、ポール・マッカトニー、プライマル・スクリーム、ダイドらの作品を手がけてきた名手、ユース(元キリング・ジョーク)を迎え制作した、意欲作だ。バンドのフロントマンであるティム・バージェス(Vo)は、今作の音楽性について、次のように語っている。
「僕たちは、ユースに“ヨーロピアン・ウィンターを思い起こさせるサウンドが欲しい”と話したんだ。いくつかのブリティッシュ・レコードから感じられる、フレッシュでクリスプで、でもどこか大胆不敵なサウンドをね。それは、僕たちにとって、思い切ったチャレンジだった」
そんな本作の内容は、彼ららしいアップテンポでダンサブルな楽曲から、ドラマチックなストリングスを配したアコースティック楽曲まで、多彩な楽曲群が詰まったもの。メンバーが集まり、一緒に曲づくりを行うという従来の制作方法を使わず、マーク・コリンズ(G)は「Smash The System」を、トニー・ロジャース(Keys)は「Your Pure Soul」をと、各自が曲のアイディアをそれぞれ持ち込んだことで、よりエモーショナルでカラフルな音世界を打ち出すことに成功している。また、今作には、ティムのフェイバリット・アーティストであるハードコア・パンク・バンド、クラス(Crass)のペニー・ランボーが参加。アルバムの最後(隠しトラック)で、その特異な存在感を示している点も、聴き逃せないだろう。
ティムが、“a soulful voyage”(魂の航海)と形容する『フー・ウィ・タッチ』。3コードを軸にした楽曲が多かった前作とはひと味違う、ブリティッシュ・ロックの持つヴィンテージな香りが宿る本作は、ザ・シャーラタンズの魅力と、その非凡な才能を再発見できる好盤だ。
photo Tom Sheehan


