KEN ISHII

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KEN ISHII インタビュー/LOUD143号

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本物のテクノ・スタイルを呼び覚ますファンファーレ

 日本のテクノ・ミュージック史に新たな扉を開き、シーンを牽引し続けているトップ・クリエイター、ケンイシイ。昨今は一年の大半を海外ツアーで過ごす国際的DJとしても活躍中だ。
 そんな彼が、オリジナル・アルバムとしては『Future In Light』以来約4年ぶりとなる最新作『SUNRISER』をリリースする。“日はまた昇る“がキーワードとなっている今作は、彼が理想とする、テクノ本来のヴァイブをシーンにリプレゼントする内容。7th Gate、ファブライス・リグ、ブライアン・ゼンツ、ファンク・ディヴォイドとの共作を含む各トラックからは、明るく開放感に満ちたシンセと、ポジティブなダンスビートが聴こえてくる。全曲で映像作家の森野和馬氏とのコラボレートも行われており、その一部がiTunes Music Storeでリリースされることも話題だ。
 テクノに対するストレートな想いを託した新作について、ケンイシイから話を聞いた。

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“テクノ=太陽”を、もう一回昇らせたい。

—今作は“日はまた昇る”がキーワードとなっていますね。この言葉を思いついた経緯を教えてください。
「前作は“自分のつくりたいものを素直につくる”というところからスタートしたんです。自分なりに一回プレーンな状態に戻って、ある種まっさらな状態でアルバムをつくり、4年間くらいずっとツアーをしました。で、そのツアーを通して、シーンは変わっていないようで少しずつ変わっていて、自分が本来好きだった、デトロイトに起源をもつようなテクノが弱くなっていると感じたんです。ヨーロッパはもちろん、アジア、南米、アメリカで、似たようなことを感じました。だから、“自分が好きな、本来の意味でのテクノに、もう一回帰ってきてほしい。あるいは、自分自身が、そういったテクノが帰ってくる力になれればいい”と思ったんです」

—それで“Sunriser”というタイトルなんですね。
「“テクノ=太陽”をもう一回昇らせたい、ということですね。もしくは、帰ってくるスピードを加速させたいということです」

—そんな意味合いを含んでいるからだと思いますが、今作にはネガティブな雰囲気は一切なく、ケン・イシイさんらしい明るさが全体を支配していますね。
「そう思います。実際に、ここ数年の精神状態は一貫してポジティブだったんです。だんだんリラックスした状態でいられる方法もわかってきましたしね。そういう意味では、ずっと明るいトーンできていたので、今回はそれがストレートに出てるんじゃないかな。昔からそうなんですが、その時々に自分が持っている気分が、曲にすごく出るんですよ」

—ここ数年、ネガティブな気分になる要素は、あまり見当りませんでしたか?
「世の中的にはいろいろありましたけどね。だから、そういう中に、何か明るく照らすものがあってもいいだろうと、前作のときから思っていました。僕は性善説に立っているというか(笑)、どちらかと言うと希望を見ていたいタイプなんです。普通、人は放っておいたら何となく不安になるものかもしれないけど、そうならずに、常に自分を奮い立たせ、何か明るい材料を持って生きたいと思っているんです。それは、この仕事が終わったら休みをとってどこかに行こう、といったシンプルなことでもいいんです」

—なるほど。それはポジティヴな姿勢ですね。新作の話に戻りますが、サウンド面では、ダンスビートの上で奏でられるシンセの音色やメロディがとりわけ印象的です。先ほど“デトロイトに起源をもつようなテクノ”という言葉がありましたが、やはりデトロイト・テクノを継承したサウンドをやろうという意識があるのですか?
「いや、意識はしていませんね。デトロイト・テクノは自分が影響を受けた音楽ではあるんですけど、作品は、いわゆるデトロイト・テクノではなくて、自分の色になっています。黒でもなく、白でもなく、黄色に(笑)。全体的に黄色やオレンジ、そういう明るい暖色系の色になる感じがします。たしかに今作では、シンセというか、キーボードのサウンドを中心にして、曲をつくろうという気持ちはありましたけどね」

—7th Gate、ファブライス・リグ、ブライアン・ゼンツ、ファンク・ディヴォイドの4アーティストと共作していますが、これはどのような経緯で実現したのでしょうか?
「今回一緒にやったアーティストとは、本当にごくごく自然に、いわゆるインターナショナルな活動をする中で知り合って、友達になったんです。だから、“じゃ、なんか一緒にやろうぜ”ってところからスタートしています。音楽的にもある種共通する想いを持っている、“ちゃんとしたテクノ”がやりたい人達なんですよ」

—ところで、今回のアルバム・ジャケットにタコがあしらわれているのは、どうしてなんでしょうか?
「タコが好きなんですよ。食べるのがね(笑)。今回のアルバムは、本当に自分が好きなように好きなものをつくったという感じなので、アートワークもそうしたいと思ったんです。実は、ここ4、5年くらいで一番DJプレイしている国はスペインで、本当によくスペインに行っているんですけど、スペイン北部ガリシア地方にはプルポ・ア・ラ・ガジェーガ(Pulpo a la Gallega)というタコ料理があるんです。それを食べて、あらためてタコの美味しさに気づいたんです」

—ケンイシイさんの性格は、スペインのラテン的ムードと合うんでしょうね。
「なんかね、合っちゃいましたね。十代の頃は、自分は東京っぽい、セカセカした感じの人間だと思っていたんですよ。でも、スペインとかフランスの地中海沿岸あたりによく行くようになったら、そこが妙に合ってしまいました。10年前とは違って、今はのびのびとした環境でゆっくりしているのが楽しいんです」

—では、今後の活動予定を教えてください。
「年内は、基本は国内で、ちょこちょことヨーロッパ、という感じです。久しぶりのアルバムなので、まずはそのツアーをしっかりやりたいですね。アムステルダムのゴッホ美術館でも、ビジュアルと音楽のアートイベントをやることになっているんですよ。普段やっているところと違って、非常に敷居が高い場所でのプレイになるので、楽しみですね」

—新プロジェクトの構想はありますか?
「相変わらずいろいろと旅が多いので、より旅に密着したプロジェクトをやってみたいですね。例えば、ブラジルでもアジアでもいいんですけど、行った先々の地域で愛されてる音楽を取り入れて、旅日記的なアルバムをつくってみたいと思っています」

interview & text FUMINORI TANIUE