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ORBITAL インタビュー/LOUD91号

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フィル&ポールのハートノル兄弟イギリスのテクノ・ユニット、オービタル。89年のデビュー作「Chime」を始めとしたヒットで知られ、また12インチ主体のシーンにおいていち早くトータル・アルバムを発表、映画音楽への音楽の提供、ライヴPAではないきちんとしたライヴ・アクトとしての評価など、数々のエポックメイキングな偉業を成し遂げている人たちだ。その彼らがデビューから13年の活動期間を包括するベストアルバム
『グレイテスト・ヒッツ【ワーク1989-2001】』(EAST WEST)をリリースする。レイヴ・シーンのパーティー・ピープルを熱狂的に踊らせ、音楽評論家も唸らせ、その音楽性を拡大させてきた彼らのこの13年とはどういうものだったのだろう?
今回、インタビューに答えてくれたのは、お兄さんのフィル・ハートノル。


★所属するロンドン・レコードとの契約が終了ということで、このベスト盤が出ると思うのですが、その経緯を教えてください。
「もともと契約は“6枚のアルバム”という内容だったんだ。勿論契約終了にあたって、ロンドン・レコード側は次の契約をオファーしてきたけど、一度レーベルから出て
自由な環境に身を置きたかった。ひとつのレーベルとアーティスト契約を結んでいると活動が制限されることがあったんだ。オービタルとしては、他レーベルから発売されるサントラや企画アルバムにも稚極的に参加したいんだ。1つのレコード会社と契約していない利点というのは、他のレーベルの面白い企画に自由に参加できるという事。最終的には両方の意見が一致して契約終了となった。そして6枚目が今回発売となるベスト盤という訳
(編注:1stアルバムはLONDON RECOREDS傘下のFFRRレーベル、2ndアルバム以降は同傘下のINTERNALレーベル(現在は消滅)に移籍しているので、2nd以降のアルバムから敢えてという意味)」

★LONDON RECORDSといえば、FFRRなどでダンス・ミュージックをイギリスのみならず、世界中に広めた功績があるレーベルだから、そこを離れるというのはあなた達にとっても何か大きな転換期を迎えているのかなと思ったのですが。
「(笑)。いや転換期じゃなくて、ただ契約終了で区切りが良かっただけ。自然な流れでこうなったんだ」

★これからは自分たちでレーベルを作ってリリースしていくのですか、それとも違うレーベルから?
「自分たちのレーベルを作るかどうかは、わからないなあ。オービタルとしての次のアルバムは映画のサントラかもしれないし、今回とは違う内容のベスト盤になるかもしれない。こればっかりは現時点ではわからないね。ただ、日本に関しては例外かもしれない。最後の2枚を発売することになったワーナー・ミュージック・ジャパンのスタッフ達とは、とても良い間係を保っているからね。いい関係を保っている国とは(今まで通り)関係を続けるかもしれない」

★今回のベスト盤を作るにあたって、代表曲が沢山あるから迷いませんでした?
「迷ったよ。ホントは2枚組のアルバムにしたかったんだけど、(ロンドン・レコードから)マーケテイング的な側面から「それは(UKアルバム・チャートに)ランク・インでき
なくなるから、絶対ダメ」と言われてさ(笑)。1枚のアルバムからそれぞれ2、3曲を選ぶ形になったんだけど、悩んだよ。きっとホームページにファン遠から『あの曲がない
ぞ!この曲も入れてほしかった!』という風に書き込みされるんだろうなぁ」

★どういった基準で選曲したんですか?
「基準は特に無いんだ。個人的にいいなと思った曲を選んだだけ。たとえば「Chime」はクラブ・ヒットとして知られているから絶対入れたかった…、という風にね。1枚のア
ルバムにできるだけ多くの曲を収録したかったから、アルバム・ヴァージョンより短いヴァージョンが収録されている。当時UKでシングルをレコーディングする際には必ずラジオ・ミックスだとかエディット・ヴァージョンを制作しておいたから、7分とか8分にも渡るオリジナル・ヴァージョンを収録しないで済んだだよ」

★「Saint」、「Beached」などのサントラものや、初期の「Omen」も入っていませんよね?
「そうなんだよ。当初の2枚組として選曲していた時点では入っていたんだけど、アルバムの収銀時間の関係で残念ながら収録できなかった。来年でも違う内容のベスト盤を作って、その時に収録したいな」

★「Chime」から始まって「Belfast」で終わる曲順ですが、どういった流れを想定して曲順を決めていったんですか?
「最初から通して聴いてみて、単純に“いいな”と納得できる曲順に自然となったんだ。だから特別何かを想定した訳じゃないんだ」

★でもエモーショナルで美しい部分とダイナミック&パンクな部分が、数曲単位で入れ替わっているような構成ですよね?
「(沈黙)。ホントだ、言われてみればそうだね(笑)。無意識のうちにオービタルの持つ様々な面を出す内容にしたんだろうね。中盤では女性ヴォーカルが入った曲を入れてガーリーな雰囲気を出したけど」

★新曲「Frenetic」は、ゴールデン・ガールズ「Kinetic」のフレーズを使った曲ですよね?
「そうだよ。「Chime」のライヴ・ヴァージョンをリミックスして、そこに90年か91年頃ひっそり発売したゴールデン・ガールズ名義こよる「Kinetic」をサンプリングし、女
性ヴォーカルを入れてダンス・ナンバーに仕上げたんだ。「Kinetic」のことは(他レーベルからの発売だったため)長年内緒にしていたんだけど、今じゃ皆が知っているみたいだね(笑)」

★最初に聴いたとき、てっきり共作者のMike Hazelが98年に無断でリミックス盤を出したことに対する挑戦のようなものだと思っていたんですけど(笑)。
「(大爆笑)挑戦じゃないよ。“みんなで祝おう!”という内容の楽しいダンス・ナンバーなんだ」

★少し話は変わりますが、オービタルとしてこの12年間はどんなものだったのでしょう?
「あっという間だった。歳を重ねるごとに、1年が過ぎるのが更に早くなってきてね。ここまで続くとは夢にも思わなかったよ。でも、LONDON RECORDSとの契約が終了しても、オービタルは全く変わらないし、勿論ライヴ活動も続る。これからも楽しみだね」

★この12年間というのは、同時にダンス・ミュージックが大きく飛躍を遂げた時期でもあるわけですが、その間常にトップを走ってこられた由縁はどこにあると思いますか?
「そうだね。ジャングルがドラムン・ベースに至ったり、この12年には色々な変化があったね。ジャンルとしても大きく変貌を遂げた一番面白い時期だったと思うし、ダンス・ミュージックのシーンの一部として参加してきたことは嬉しく思うよ。僕たちはひとつのトレンドを追わず、常にオープンな気持ちでやりたい事をやってきた。このことは
「Satan」「Belefast」「Frenetic」を聴き比べてみれば、わかってもらえると思うよ。それから新人で共感を得られる奴らを応援して、シーンを盛り上げてきた。今スターである数多くのグループが生まれたてのベビーだった頃から見守ってきたから、実に感慨深いものがあるね。同様にサブカルチャーも変化していったし、オーディエンス側も変化した。好きなことをずっとやってきたのに、ファン達がずっと応援してくれたからこそ僕たちは今日まで来られたんだと思う」

★兄弟でもたまには衝突することがあると思いますが、この10年間で2人におこった危機はありましたが
「(笑)危機は無かったけど、山あり谷ありだった。例えば夫婦でも長年一緒にいると喧嘩もするだろ?離婚が最も起こりやすい年数は5年目らしいけど、なんていったって僕らは12年間もー緒に活動してきたから。でも、とっくみ合いのケンカはしてないからね(笑)。ポールは石橋を叩いてから渡るタイプで、僕は叩かないで渡る方なんだ。全く反対の性格だからバランスが取れているんだよ」

★サウンド面においてはどうですか?『SNlVILISA-TlON』、『lN SIDES』あたりは、音楽的にもシリアスな感じで、特に迷いがあった時期じゃないかなとも思うのですが。
「シリアスな僕らを出そうと試みたんだ…。というのは冗談で(笑)、僕らは『さて、次のアルバムはこういう方向性で行くぞ!なんて計画してアルバム制作を進めたことは無いし、いつも思いついたことをやってきた。無意識のうちに当時聴いたものから影響を受けたり、前のアルバムとは違う内容を作ってきた。確かに『SNIVILISA-TION』には“2000年前のローマ人から人間は進化して洗練されたと言われているが、今だに人間同士でいがみ合っている。果たして洗練されたのだろうが”という様なユルいテーマはあったけどね」
★なるほど。でも『Middle Of Nowhere』以降は吹っ切れた感じで、前作『ALTOGETHER』では再び・みんなと一緒に楽しもうよ!,,みたいな部分が出てきれたよね。
「そうだね。誰でも暗い面と明るい面があると思うんだけど、前作は勢い、があって元気な感じだったね」
★では、今はどういったところ/人達に向けて、どんなサウンドを作りたいと思いますか?
「特に誰かに向けて音楽を作ったことはないよ。どんなサウンドを作りたいと意図して作ったこともない。リスナーが何を求めているのかを察知するのは苦手だし、自分達が作るサウンドを僕らと同様に楽しんでもらえれば嬉しいと思うだけ。リスナーから喜んでもらえることを念頭において音楽を作ったことなんて一度だって無いんだ。リスナーの反応を見て一喜一憂しながら活動すると疲れちゃうだろ?」
★ちなみにソロの予定はありますが
「無いよ」
★この先も兄弟2人で続けますが
「もちろん」
★力強いですね。これからの展望、予定などを教えて下さい。
「クラブDJとしての活動とライヴかな。DJをやっていると、僕らの新曲をかけた時に会場の反応が伝わってくるから楽しいね。ライヴはロンドンで2公演が予定されているほかに、今年のクラストンベリー・フェスティバル、グラスゴーやスウェーデンでのフェスにも参加する予定。この他にはホラー映画『OCTANE』(注:オクタン=石油
中の無色液体炭化水素の手)のサントラを制作するよ。これは低予算で製作したイギリス映画で、元ミート・ビートマニフェストのメンバーのでもあり、映画『LONG TIME DEAD』がヒットしたマーカス・アダムスが監督したんだ。それからコンピレーションCD『BACK TO
MINE』シリーズに初めて参加するよ。過去にグルーヴ・アルマダやフェイスレスが選曲を担当した盤が出ているけど、このシリーズはクラビングから帰宅して自宅でチルする時に聴きたいレコードを選曲したコンビなんだ。今回声をかけてもらえて嬉しかった。僕が今まで影響を受けたいろんなジャンル、例えばレゲエものなんかも選んだ面白い内容だよ」
★ニュー・アルバム用の新曲も書き溜めていますか?
「何曲かもう書き始めたよ。ラップトップのPCに溜めてあるんだ。いろんなプロジェクトに関っているから大忙しだよ」

インタビュー 佐藤 亘
通訳/翻訳 湯山 恵子