RICHIE HAWTIN

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RICHIE HAWTIN インタビュー/LOUD149号

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RICHIE HAWTIN
レス・イズ・モア、ミニマリズムの精神を研ぎすました10年間


 プラスティックマンやF.U.S.Eといった名義を使い分け、アシッド&ミニマル・サウンドで'90年代テクノの頂点を極めたリッチー・ホウティン。カナダ出身の彼は、最先端のエレクトロニック・ダンス・サウンドを探求し続ける人気アーティストだ。デジタル技術を駆使したパフォーマンスでも有名で、一昨年には延べ180曲以上のトラック(素材)を使用した5.1chサラウンド・ミックスDVD『DE9: Transition』をリリースしている。
 そんな彼が、自身の運営するM_NUSのトラックをまとめた2枚組コンピレーション『ナッシング・マッチ』をリリースする。レーベル設立10周年を記念する、日本限定の作品集だ。
 “nothing much”とは、“much more”を逆手にとった表現で、“最小の事案”で“最大の表現”をする、彼のミニマリズム観が体現された言葉だという。そんなタイトルからも明らかな通り、収録曲では究極のミニマル・グルーヴが提示されている。
 新作の内容とM_NUSへの想いについて、リッチー・ホウティンに話を聞いた。


僕は、M_NUSを家族のようなレーベルにしたいと思ってやってきたし、
実際にそうなっていると思う。


——『ナッシング・マッチ』は、M_NUS設立10周年を記念する作品だそうですね。具体的には、どのような経緯で制作されることになったのでしょう?
「実は、10周年は来年なんだ(笑)。でもこの2、3年、世界中のたくさんの人たちがM_NUSに賛同し、サポートしてくれた。だから待ち切れなかったんだ」
——いてもたってもいられない気分になったわけですね。
「M_NUSは本当に小さな、友達ベースのレーベルだけど、この十年で大きく成長した。だから、“今だ、やるなら今やらないと!”って思ったんだよ。この作品をリリースすることは、すごく自然なことに思えたね」
——未発表曲も多数含まれていますが、選曲はどのような基準で行ったのですか?
「単に過去音源からセレクトするのではなく、まだみんなが聴いたことない曲も入れてしまえ!って趣旨で選んでいるよ。“未発表”となっている曲は全て新作で、今年リリースされるものなんだ。だから、これはM_NUSのベスト盤であると同時に、“The Best of 2007”でもあるんだ。ハードコアなM_NUSファンも、レーベルのことを知らない人も、これを聴けば今現在のレーベルの姿が分かるようになっている」
——過去よりも現在を意識しているんですね。
「そう。何よりも僕らの“現在”を知ってもらいたいからね。でも、日本のファンにとって特別な曲も、ちゃんと入れているよ。日本は常に重要な場所だし、本作はM_NUSと日本サイドとのコラボレーションでもあるからね。CD1の選曲については、良き友人であるシスコ・テクノ店のケイコ(星川慶子さん)にも相談したんだ。彼女には、ハートスロッブ「Baby Kate」やラン・ストップ・リストア「Arrows」、僕の曲「Minus Orange」を入れるべきだって言われたよ! 国や文化によって、トラックの評価が違うのは面白いね(笑)。その違いからは、音楽の聴き方の違いも分かるんだ。選曲を通じて、少し日本の人々のことを理解できたような気もするな」
——CD2には、トロイ・ピアースによるノンストップ・ミックスが収録されていますね。彼にミックスを依頼した理由を教えてください。
「トロイを紹介したかったからだよ。僕やマグダだけでなく、M_NUSには様々なアーティストが集まっているんだ」
——M_NUSは、アーティスト・プロモーションにも積極的なんですね。
「僕らの持っているコネクションを使って、ファンに新しいアーティストを紹介していくこともレーベルの使命なのさ。M_NUSが選ぶアーティストには、僕以上に評価されて人気が出て欲しいと願っているよ。音楽的にも人間的にもつながりのあるアーティストばかりだしね」
——たしかに、近年のM_NUSには、あなたの友人や、あなたから影響を受けたというクリエイターが目白押しですね。彼らとの交流は、あなた自身にとっても刺激になっていますか?
「もちろんさ! 完全に双方向の関係だし、もともとは、みんなM_NUSや僕の音楽のファンだった人たちだからね。マグダ、トロイ、ガイザーなんて、みんな92〜95年頃からの付き合いだ。ガイザーは、昔やっていたデトロイトでのパーティーで、デコレーションや照明を手伝ってくれていたんだ。マーク・ホウルは、僕が育ったウィンザーで、コンピューターの使い方を教えてくれたヤツだ。新人のアンビヴァレントは、数年前にプラスティックマンのライブを手伝ってくれた人。みんなとても親密な仲間だし、僕を育ててくれた人達でもある。僕は、M_NUSをそういう家族のようなレーベルにしたいと思ってやってきたし、実際にそうなっていると思う。ほとんどのヤツらは家も近くで、ベルリンの同じ地区に住んでいるんだ」
——この10年で、クラブ・ミュージック/DJの在り方は、様々に変化してきました。が、本作を聴くと分かるのですが、M_NUSレーベルが打ち出してきた音楽性とその方向性には、基本的に全くブレがありませんね。その根底には、どんな考えがあるのでしょう?
「常に進化し続けつつも、全てのつじつまが合っていること、これが音楽をつくっていくうえで大事なことだと思う。様々な実験を重ねながらも、自分のルーツとつながっているロープは、しっかりと握っていなければいけないんだ。もしそこから離れてしまうと、点と線が途切れてしまうから」
——言うのは簡単ですが、実践することは大変そうですね。どうしてそれが可能だったと思いますか?
「ハハハ。それが可能だったのは、M_NUSを始めたときから、すでに僕のやりたいこと、目指していることがハッキリしていたからだと思う。前の会社、PLUS 8も、最初はそういう想いで始めたけど、途中で壊れてしまった。あまりにも速いスピードでアーティストが増え、関わる人間が増えすぎると、レーベルは簡単に壊れてしまうものなんだ。だからM_NUSでは、自分達の運命とアートフォームを自分達でコントロールし、そのアートフォームを発展させること、楽しむこと、最初に音楽をやりたいと思ったときの衝動を忘れないこと、それだけを考えてきた。そのうえで、人生を楽しみ、チャンスを掴んでいくようにしたんだ。僕がやり続けてきたミニマリズムの美学、“less is more”のアプローチは、単に音楽上の音と静寂、ダンスフロア性と実験性といったことだけではなく、友情とビジネス、真剣さと楽しさ、そういった人生における全てのバランスにも当てはまるのさ」


interview & text FUMINORI TANIUE
translation YUKO ASANUMA


VARIOUS ARTISTS
Nothing Much
(JPN) M_NUS / MINJPCD-001