FERRY CORSTEN

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FERRY CORSTEN インタビュー/LOUD138号

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ダッチ・トランスのパイオニアが切り開く、エレクトロの地平


 フェリー・コーステンは、オランダのロッテルダムを拠点に活動する、'73年生まれのダンス・クリエイターだ。ティエスト、アーミン・ヴァン・ビューレンと並んで、“ダッチ・トランスを創った男”として知られている。システム F名義で'99年に放ったモンスター・ヒット「Out Of The Blue」は、ユーロ・トランス史上に残る傑作として、あまりにも有名だ。DJとしてもDJマガジンの世界ランキングで現在5位と、トップレベルの人気を誇っている。
 そんなフェリーが、本人名義では二枚目となるアルバム『L.E.F』(“Loud,Electric,Ferocious”=“大きな音で、電気的で、凶暴”の略)をリリースした。前作『RIGHT OF WAY』で見せた実験性をさらに押し進めたこの作品には、ワイルドでダーティーなエレクトロから美しいヴォーカル・トランスまで、ハイクオリティなダンス・ミュージック満載だ。ゲストには、デュラン・デュランのサイモン・ル・ボン、ハワード・ジョーンズ、ギャング・スターのグールーと、大物達も名を連ねている。
 “トランス”という言葉の意味が多様化する中、果敢に自らの領域を拡げ続けるパイオニア、フェリー・コーステンを電話でキャッチした。


良い音楽であれば、どのジャンルの誰がつくっているかは重要じゃないと思う。


―現在はフェリー・コーステン名義のみで活動していると聞いたのですが、50以上使ってきた名義をすべて捨てて、自分の名前に統一したのはなぜですか?
「日本じゃ僕は、トランスのシステム Fとグリエラとして一番よく知られているだろ。でも実際のところ、僕はトランス以外の音楽もたくさんつくっているし、DJやリミックスをやる時はフェリー・コーステンなんだ。だから、そろそろ自分の名前だけで活動することに専念したくなったのさ」
―新作タイトルの「L.E.F」は、あなたの新しく実験的なサウンド、より混乱していてダーティーなサウンドを表す言葉だそうですが、このコンセプトはどこから生まれてきたのでしょうか?
「僕は'80年代からずっとエレクトロのファンなんだ。今回はそれをさらに進化させて、トランスのサウンドとミックスして、もっとダーティでラフで、攻撃的なのとは違う種類の激しさを出そうとしたんだ。「L.E.F」(レフ)っていう言葉はオランダ語で“何かに挑戦するガッツがある”っていう意味なんだ。前のアルバムを出した時に、大勢の人達から“トランスで有名な君がこういった作品を出すのは勇気がいることだね”って言われたから、「L.E.F」っていうタイトルにしたんだ」
―サイモン・ル・ボンとハワード・ジョーンズがゲスト参加していますね。彼らは、エイティーズの代表的ポップスターです。'80年代の音楽に、どんな魅力を感じているのでしょう?
「'80年代の音楽は、ちょうど僕が音楽ってものを理解できる年齢になった、9歳か10歳の頃に聴いたもので、僕にとってミステリアスなものなんだ。'80年代には今よりも質のいいポップ・ソングが多かったと思うし、'70年代後半から'80年代にかけて、みんなシンセサイザーやサンプラーを使い始めたから、音楽そのものが実験的だった」
―サイモン・ル・ボンが参加している「Fire」は、デュラン・デュランの「Serious」をサンプリングした曲ですね。サイモンとは会いましたか?
「サイモン本人には5分か10分しか会っていないんだけど、そうとうファッションに詳しいのは分かったよ(笑)。その日、僕はスウェーデンのブランドJ.Lindebergのシャツを着て行ったんだけど、会った瞬間にブランド名を当ててくれたからね(笑)」
―スゴいですね(笑)。では、ハワードとコラボした経緯を教えてください。
「ある時ハワードのマネージメントから、彼が僕の音楽のファンだって聞いたから、このアルバムでコラボしないか誘ってみたんだ。そうしたら何か聴かせてくれって返事がきたから、「Into the Dark」のベースにあたる曲をつくって送ったんだ。その3日後にハワード本人から、彼のヴォーカルがレコーディングされたものが返ってきた。それがすごく良かったから、ほとんど手を加えなかったよ」
―ゲストでは他に、ギャング・スターのグールーを「Junk」で起用していますね。なぜヒップホップ・アーティストの中から彼を選んだのですか?
「クラブによく遊びに行ってた'90年代半ば頃、そこでレア・グルーブとかアシッド・ジャズがよくかかってたんだ。ヒップホップにはそんなに興味がなかったのに、ギャング・スターやグールーの曲は、すごくいいなって思ってた。それでアルバムに生っぽい質感の曲をいれたいって思った時に、グールーに入ってもらおうと思ったんだ」
―この曲では前作に収録されている「Punk」のリフを使っていますね。
「「Punk」は、今でもフロアでかけると何千人ものお客さんが歌ってくれる曲なのに、期待したほど売れなかったんだ。でもオールドスクールでファンキーなテイストの曲だから、ここで使ってみたのさ」
―6曲目の「Galaxia」は、ムーンマン名義で'96年にリリースしていた曲ですよね。なぜ、この曲を収録しようと思ったんですか? これは、今回のアルバム用にリメイクしたんですか?
「あの曲のオリジナルには、ずっとやられっぱなしでね。自分の結婚式のために映画のサントラ風のものにリメイクして、うちの奥さんが教会のバージン・ロードを歩く時に流したりもしたんだ。それをかけたおかげで、彼女ともう一度恋に落ちたくらいだよ(笑)。その後に、DJセット用として2005/2006年バージョンにリメイクしたけど、リリースするつもりはなかったんだ。でも実際に曲をフロアでかけたら、みんながすごく喜んで笑顔になるのがわかったし、たまに感極まって泣きだす人まで出るくらいだったから、この曲には何か特別なものがあるって確信してね。じゃあアルバムにいれようって思ったのさ。アルバムに収録されているのは、僕がDJセット用にリメイクしたものだよ」
―「Galaxia」「Beautiful」「Possession」の三曲が、このアルバムのトランス・タイムをつくっていると思います。ポール・ヴァン・ダイクは、“自分はトランスをつくっているつもりはない。エレクトロニック・ミュージックをつくっている”とかねてから主張していますが、あなたのトランスへの愛は揺るぎないものですか?
「どんな曲になるかは、本当にその日の気分で決まるんだ。そういった意味では、僕もエレクトロニック・ミュージックを作っているよ。一方で、ポールがつくる音楽は彼と同じタイプのDJがプレイするためのものだとも思う。僕はこのアルバムに入っている曲を色々なジャンルのDJにかけてもらいたいんだ。「Are You Ready?」みたいな曲はハウスやエレクトロのDJに使って欲しいし、「Cubikated」はテクノのDJ、例えばCarl Coxにかけてもらえたら最高だ。このアルバムがいろんな境界線を越えて、違うジャンルに届いてくれたらって思うね。でも、トランスやトランスのメロディーへの愛情はずっと変わらないよ。ハワードとやった「Into the Dark」にさえトランスの要素が入っている。ものすごくメロディアスな曲だけど、あそこに4つ打ちのキックを入れればトランスができあがるんだ。僕は'96年から10年間ずっとトランスをやってきたから、自分がこれからもずっと楽しくやっていくために違うスタイルや新しいサウンドも模索し続けたいってだけなんだ」
―ティエストやアーミンとは、今でも交流がありますか?
「もちろん。今年もマイアミのWMCで会ったよ。僕らはみんな忙しいからタイミングがなかなか合わないけど、お互いのスケジュールが合う時は一緒に食事したりするよ」
―トランス・ファンには嬉しい話ですね。ところで、先ほど“テクノDJにかけて欲しい”と言っていた「Cubikated」では、レイヴ・クラシックの808ステイト「Cubik」を使っていますね。これは、あなたをダンスミュージックの世界へ導いた曲なんでしょうか?
「そう、あれで僕はダンスミュージックに目覚めたんだ。クラブであの曲を初めて聴いたときは本当に衝撃的だったなあ。すぐDJのところに行って、誰のレコードか教えてもらったよ。僕にとっては究極のサウンドだね」
―今作をつくり終えて、自分の新たな方向性が発見できましたか?
「新しい一歩を踏み出したのは確かだよ。自分が好きだと感じる全ての音楽をつくったからね。ダンスミュージック業界では、一度そのジャンルで名前を知られたら他のことがすごくやりにくくなる。トランスをやったら、ハウスやテクノのシーンでリスペクトされることは絶対にありえない。でもそれってオカシイだろ。良い音楽であれば、どのジャンルの誰がつくっているかは重要じゃないと思う。前作の『RIGHT OF WAY』に続いて、今作でも僕が伝えたいのはそういうことだよ。今のところは僕が新しいことに挑戦しているのを受け入れてもらっていると感じるから、順調と言えるよね」
―デビューから17年になるそうですが、この17年を振りかえって、何か感じることはありますか?
「何年経っているかは、あんまり聞きたくないかも(笑)。最初からずっと趣味としてやってきたし、今でも趣味が大きくなって手の中に納まりきらなくなった感じなんだ。17年は長いし、ここまで来れたのを嬉しく思うよ」


text & question トモヒラタ
interview & translation KYOKO MAEZONO