YOUNGER BROTHERのインタビュー
YOUNGER BROTHER
The Last Days Of Gravity
(JPN) SOLSTICE MUSIC / TWISTED /
ダンス・フロアの束縛から解放された無限大の音楽
ハルシノジェンことサイモン・ポスフォードと、プロメテウスことベンジ・ヴォーン。10年来に渡ってUKのPSYトランス・シーンを支えてきた二人が、ヤンガー・ブラザーとしてデビューしたのは5年前の話だ。ゴア・フレーヴァー漂うヴォーカルが印象的なシングル「The Finger」で、一躍世界のダンスフロアを掌握した彼らは、翌'03年にファースト・アルバム『A Flock Of Bleeps』を発表。ここではPSYトランスに固執せず、アンビエント、ダブ、ブレイクビーツ色も打ち出し、豊かな音楽性を表現した。
あれから5年。このたび完成させたセカンド・アルバム『The Last Days Of Gravity』では、よりサイケデリックなロック色を強調した、幽玄なエレクトロニック・ミュージックを披露。UK最強と称されるダンス・ジャム・バンド、ザ・ベイズのメンバーをはじめとした、多くのミュージシャンも制作に招き、作品にライヴ感を持たせている。
新作でヤンガー・ブラザーが目指したサウンドについて、二人に話を聞いた。
ヤンガー・ブラザーの音楽は自由なものなんだ。
だから音楽の着地点は、必ずしもサイケデリックでなくていいと思っている。
同時に、踊らせる音楽である必要性も感じていない。(サイモン・ポスフォード)
——二人で音楽制作を始めたきっかけは何だったんですか?
サイモン・ポスフォード(以下、S)「もともとは、サヴァイバル・インターナショナルという、世界中の極貧に苦しむ人々や、都市発展にともない生活を追い込まれている部族を助けるチャリティーのために、一曲つくって欲しいと頼まれたのが結成のきっかけなんだ」
——アーティスト名の由来を教えてください。
ベンジ・ヴォーン(以下、B)「南米のコロンビアに、(公用語の)スペイン語を話さないコーギー族という土着の民族がいるんだ。彼らは山や川などといった自然を敬い、神聖化することを美徳としている。そんな彼らは、自らをエルダー・ブラザー(兄)と名乗っている。ある日、彼らの一人がスペイン語を覚えて、現代社会に自然の尊さを訴えるべく呼び掛けた。その時彼らが世界の人々につけた名称が“ヤンガー・ブラザー(弟)”だった。そこからインスピレーションを受けたのさ」
——お互いの音楽性や発想は、どんな部分が魅力的だと思いますか?
S「ベンジとはイケメンであること意外にも(笑)、音楽の趣味が共通している。仕事に対する姿勢も似ているね」
B「もともとトランスを聴き始めたのはサイモンの作品からだったぐらいだし、彼のテイストにはとても魅力を感じているよ。だから一緒に音楽をつくると良いケミストリーが生まれる。才能があるアーティストが二人集まっても、必ずしも良い作品が生まれるとは限らないけど、僕らはクズ並みなのに(笑)、二人集まると良い音楽が生まれるんだよね」
——制作では対等の関係なんですか?
S「そうだね。例えば、ラジャ・ラムと一緒にやっているシュポングルは、実際僕が全て制作をしている。ラジャはソファーにどっぷり座って意見を言うだけだ(笑)。でもヤンガー・ブラザーでは、二人でアイデアを出し合い、二人で音楽をつくっている」
B「僕は基本的に、制作時に人からアドバイスされても、それは取り入れないんだ。自分の感性で仕上げたいから。そういったこだわりがあるんだけど、サイモンとだけは、例え邪魔し合ったとしても嫌な空気にならないから不思議だよ」
S「むしろ、どちらかが一つアイデアを出したら、そこから楽曲が膨らんでいく。アイデアを交換し合うことで、ヤンガー・ブラザーの音楽は良いものになっているんだろうね」
——PSYトランスの制作を通して培ったサイケデリック感を、ヤンガー・ブラザーにも反映させていることと思いますが、二人の考えるサイケデリックな音楽とは、どんなものですか?
S「頭の中で展開される、旅のサウンド・トラックみたいなものだね。すごく知的な音楽だと思う」
B「知的に刺激された音楽。イマジネーションが大切だ」
S「ただ、そのサイケデリック感がトランス名義のものと共通しているかといったら、少し違うかな。ヤンガー・ブラザーの音楽は自由なものなんだ。だから音楽の着地点は、必ずしもサイケデリックでなくていいと思っている。同時に、踊らせる音楽である必要性も感じていない。ヤンガー・ブラザーでは、バンド形式でライヴ感のある音楽を手がけているだけなんだ」
——なるほど。では、セカンド・アルバムを『The Last Day Of Gravity』とネーミングしたのはなぜですか?
B「以前画廊で見た絵にインスパイアされたんだ。その絵に描かれていたのは、重力がなくなった地球で暮らす人々の姿だった。とてつもなく大きな絵でね。それに感銘を受けたんだよ」
S「僕らは日々制限やルールに縛られた生活をしているけど、そこから解放された時にどうなるんだろうと思ってね。それを重力という大きなルールに例えてみたんだ」
——他にも何か制作のインスピレーション源はありましたか?
B「日常生活からインスピレーションを自然と受けているかもね。本、美術、旅行...」
S「綺麗な女の人や、その人の素敵な香り...(笑)」
B「ははは(笑)」
——インディー・ロック的なテイストを増した今作において、現在のヤンガー・ブラザーを最も象徴しているサウンドになったと思う曲はどれですか?
S「2曲目の「All I Want」だね。エレクトロニック・ミュージックと楽器を使った音楽とのコラボレーションが上手くできた。すごく満足している」
B「この曲は、トランスでもないし、アンビエントでもない。もちろんポスト・ロックでもエレクトロニカでもない。ちなみに、よくインタビューで“今回はトランスものですか? それともアンビエントですか?”と聞かれるんだけど、なんでその二つしかないの!? 僕らがトランス・アーティストだから? それっておかしいでしょ! これまで僕らは本当にいろんな音楽を聴いてきた。それら全ての影響を、僕ら独自の音楽としてヤンガー・ブラザーで表現しているんだ」
——ヤンガー・ブラザーのライヴを収録したツイステッドのDVDも先日リリースしましたね。こちらの見どころについては、どう考えていますか?
S「クラウド全員がバースデー・ソングを僕に歌ってくれているシーンかな。個人的にはそのシーンが一番好きだね(笑)」
——最後にメッセージをお願いします。
S「今は音楽をダウンロードし、MP3で手軽に聴ける時代だけど、今作はしっかりしたクオリティーのサウンド・システムで聴いてもらうのを前提につくっている。だから、僕たちの作品をCDで聴いてくれようとしている、ラウドの読者に感謝するよ!」
interview & text SOICHIRO NAITO
translation KEIKO YUYAMA


