INFECTED MUSHROOM インタビュー/LOUD148号
PSYトランスのネクスト・レベルに進出
イスラエル出身のアミット・デュヴデヴとエレズ・アイゼンからなるPSYトランス・ユニット、インフェクテッド・マッシュルーム。10年以上の活動歴を誇る、シーンのビッグ・ネームだ。かつては幽玄優美なサウンドを持ち味とし、“モーニング・トランス”の代表格として知られていた彼ら。近年はロックのフィジカルさに傾倒した、屈指のフルオン・アクトに数えられている。
そんなインフェクテッド・マッシュルームが、活動拠点をイスラエルからロサンゼルスに移し、約2年ぶり6作目となるニュー・アルバム『Vicious Delicious』を完成させた。この作品では、常に未知の領域を開拓してきた彼ららしい、新機軸のエレクトロニック・サウンドを聴くことができる。
さらなるPSYトランスの可能性を探り出した二人に、電話で話を聞いた。
新作はPSYトランスに留まらず、ヒップホップからアンビエント、ヘヴィ・メタルまで、様々な音楽的要素を取り入れたエレクトロニック・ミュージックのアルバムだ。(アミット)
(本文)
interview with AMIT DUVDEV
初のロサンゼルス録音
—前作『IM The Supervisor』は、PSYトランスにロックや'80sヴォーカルの要素を大胆に取り込んだ、実験的な作品でしたね。
「アーティストとしての面白さを保持するためには、常に進化し続けることが大切だと俺たちは思っているんだ。同じことを何度も繰り返したら、退屈なバンドに成り下がっちまうからな。情熱を保つために、各アルバムで違った世界を創り続けているのさ。今回の『Vicious Delicious』も、これまでのインフェクテッド・マッシュルームとは全く異なる作品に仕上がったね。初のロサンゼルス録音ということで、アメリカで体感した様々な音楽からの影響を取り入れているよ」
—新作を聴いて、“今のインフェクテッド・マッシュルームをPSYトランスの括りで紹介するのは、的はずれかもしれない”と思いました。
「あぁ。新作はPSYトランスに留まらず、ヒップホップからアンビエント、ヘヴィ・メタルまで、様々な音楽的要素を取り入れたエレクトロニック・ミュージックのアルバムなんだ。つまり、可能な限り多様な音楽性を取り入れたアルバムなのさ。2年間という制作期間をかけて俺たちがベストを尽くした結果、自信作に仕上がったよ」
—それでは、各楽曲について聞かせてください。まずはシングル・カットされた1曲目の「Becoming Insane」から。フラメンコ・ギターを全面に出した、斬新なヴォーカル・PSYトランスとなっていますが、このアイデアはどこから?
「俺たちはメキシコへ行く機会が多くて、以前からメキシコの音楽を結構聴いていたから、今作にスパニッシュ・ギターを取り入れたいと考えたんだ。メキシコ出身のロック・バンド、キンキーのヴォーカリスト、ジル・セレソがスペイン語の歌詞をのせて歌ってくれたよ。彼はロサンゼルス在住なんだ」
—「Becoming Insane」のテーマを教えてください。
「地面が崩壊し、人間が正気を失った状態を歌っている。俺が書いた歌詞をジル・セレソがスペイン語にアレンジしたんだ」
—他にも今作には、フィーチャリング・アーティストを迎えて新天地を開拓している楽曲があります。なかでもカナダのヒップホップ・アーティスト、スウォレン・メンバーズを迎えた「Artillery」は注目ですね!
「俺たちは、実は長年ヒップホップを愛聴してきたんだ。ロサンゼルスで出会ったスウォレン・メンバーズがアルバム参加を希望したから、今回共演することになったのさ。「Artillery」は、俺が特に気に入っているパワフルな1曲だよ。初めてヒップホップのグルーヴを取り入れたから、面白いコラボレーションになったな」
—ちなみに、どんなヒップホップ・アーティストが好きなんですか?
「ジェイZ、それからランDMCやパブリック・エナミー、サイプレス・ヒルなどのオールドスクール系が好きだな。あっ! エレズがきたから、ここで交代するぜ。今日はサンキュー!」
interview with EREZ AIZEN
PSYトランスは僕らの全て
—今、アミットとコラボレーションの話をしていたんです。ちょうど「Artillery」について聞いたところでした。
「スウォレン・メンバーズとのヒップホップ・コラボレーションは予期しなかった展開だったな。今作で最も印象深くて楽しい共演だったし、嬉しい驚きに満ちていたよ!」
—8曲目に収録されている、アンビエント・タッチのダウンテンポ・ナンバー「In Front Of Me」には、ブランドン・マッカロクという、LAのロック・シンガーを迎えていますね。「Becoming Insane」、「Artillery」、「In Front Of Me」では、それぞれ異なるシーンで活躍するアーティストとコラボレーションしていますが、その醍醐味は何だと思いますか?
「コラボレーションで得た新しい感性を、僕らの音楽に取り入れられることが一番の醍醐味だ。異なるジャンルのアーティスト達と共作するたびに、彼らからは良い刺激を受けるよ。だから、僕らは様々なアーティストから影響を受けるべく、ロサンゼルスに移住したのさ。「In Front Of Me」では、曲を書いた後にオーディションをして、一番気に入ったアメリカ人ヴォーカリストのブランドンを起用したんだ」
—あなたたちが、デビュー当時から培ってきた、PSYトランス・スピリットみなぎるインスト楽曲も今作にはありますね。あなたたちが大切にしているPSYトランス観とは、どんなものですか?
「PSYトランスは僕らの全てだから、言葉では言い表せないよ。僕らにとっては、最も夢中になれる、中毒性のあるゲームのようなものなんだ。世界で一番の音楽だと信じているよ!」
—今作の収録曲は、先日の来日公演で先行披露していましたね。手ごたえはいかがでしたか?
「素晴らしかった! 日本のファンは、昔からインフェクテッド・マッシュルームをずっと支持し続けてくれている、世界で最もオープンマインドなリスナーだよ。過去の音楽性から大きく異なる『Converting Vegetarians』を発表した際も、日本のファンはいち早く良い反応を見せてくれたんだ。先見の明があると思う」
—今作には様々な音楽性が詰め込まれていますが、制作中に息抜きで聴いていた音楽を教えてください。
「息抜きで聴いていたのは移動中ぐらいだったけど、ドリーム・シアター、パンテラ、システム・オブ・ア・ダウン、トゥールからスティング、デペッシュ・モードまで、いろいろ聴いていたよ」
—ところで、アルバムのアートワークは、かなりホラーなんですが...。
「アートワークは、僕らが大ファンの、デビッド・ホーというアーティストに依頼したんだ。彼はヘヴィ・メタル系雑誌の表紙やCDジャケットのアートワークを手がけている有名な人で、その才能は実に素晴らしい。あれっ!? デビッド・ホーって日本人だと思っていたよ。画風が、日本のハードコアなマンガを彷彿とさせるから」
—たしか台湾の方だと思いました。サイケデリック・ハードコアな作風ですよね(笑)。では、最後に気になっていることを一つ...。インフェクテッド・マッシュルームは、あなたの長髪とアミットのスキンヘッドですっかりお馴染みです。アミットはどれぐらいのペースで髪を剃り、あなたは何年髪を切っていないのでしょうか?
「アハハ。もう10年以上切っていないなぁ(苦笑)。ちょっと待って、アミットにも聞いてみるよ。なぁ、どれ位のペースでそれ剃ってんの? 二日に1度だってさ(爆笑)」
—ありがとうございました(笑)。
「今日はどうもありがとう。日本のみんな、今後も応援よろしくね!」


