JUNO REACTOR

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JUNO REACTOR インタビュー/LOUD119号

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もはや説明不要とも言えるトランス界の巨匠、ジュノ・リアクター。当初はベン・ワトキンスを中心にアレックス・パターソン(ジ・オーブ)、ステファン・ホルウェック(トータル・エクリプス)の3人で活動していた。現在はベン・ワトキンスのプロジェクトとして、その都度曲にあったゲスト・ミュージシャンが参加する形態をとっている。近年はアフリカン・ドラムの大御所、アマンポンドや和太鼓ユニット、ゴクーをフィーチャーした展開で、ジュノ・リアクターらしい、おおよそエレクトロニック・ミュージックだけではつくりえない有機的なグルーヴ感を合わせ持つオリジナル・サウンドに磨きをかけてきた。
 昨年は映画“マトリックス”および“アニマトリックス”のサウンド・メイキングのため、自身のアルバム制作を一時中断、シングル「Zwara」のリリースのみに留まっていた彼が、遂に4年振りとなるオリジナル・アルバム『Labyrinth』を完成させた。“アニマトリックス”の監督を務めた森本晃司氏とのコラボレーション始動の為に来日していたベンに話を聞いた。


―『Labyrinth』のコンセプトを教えてください。
「ラビリンスとは迷宮のことだけど、迷路とは違うんだ。迷路はあれこれ迷いながら進んでいくものだけど、迷宮は進むべき道が一つしか決まっていないんだ。作品をCD1枚に突っ込んで“ラビリンスというコンセプトはこうですよ”と説明するのはちょっと難しいんだけど、最終的には「Navras」に向かって、進んでいくように仕上げたつもりだ。どのタイトルも見えない的と戦っているような今のコンフューズした世界情勢をテーマに書いているんだよ」
―「Conquistador I」では、ガムランやスパニッシュ・ギター、女性コーラスがフィーチャーされています。私達のオーガニックな感情に訴えかけてくる曲ですね。ここでタズ・アレクサンダーはどんなことを歌っているのですか?
「自然の力や生死など、人智が及ばない事象のショックについて。それとクリスチャ二ティ(編注:キリスト教的な信仰精神のこと)。例えば今現在、ブッシュがイラクに侵攻しているのには、アメリカ、またはキリスト教は正しく、イスラム教は正しくない、というような考え方が根本にあると思うんだ。キリスト教は昔も自分達の信仰は正しくて他は間違っているというような考え方で布教を行い、南米などを侵略したんだよ。昔も今も宗教を盾に力で支配することのパラレル・ストーリーをここでは歌っているんだよ」
―一転して「Conquistador II」ではエレクトロニックかつ人工的な要素が登場します。ここで加工された呪術的なヴォイスが歌っているのはどんなことですか?
「パート1に対しての答えなんだ」
―その答えとは何ですか?
「答えとは言ったものの、答えというのものはないから、それが確固たる答えにはならないんだ。非常に説明しづらいな。音のインストゥルメントとして歌わせている部分もあるんだよ。南米の宗教観ではクリスチャニティとブードゥーの関係がリンクしていると思うんだ。そういう部分をこの曲では表現しているんだよ」
―IとIIの対比が征服者であるコンキスタドール(編注:スペイン語で“征服者”を意味するが、とくに16世紀のアメリカ大陸征服者を指す。彼らは領土拡大のため文明を破壊し黄金を略奪したが、キリスト教の正義の名において原住民を教化するという大義名分を掲げていた)と現代におけるテクノロジーの支配を比喩しているようにも感じました。
「テクノロジーの支配というのも、言われてみればそうかもしれないな。もともとこの曲については支配されることに対しての怒りや革命的なことの力を表現したつもりだよ。でも結果的に、君が提案したことは伏線としてあるかもしれないな」
―「War Dogs」ではスパニッシュ・ギターと中東を連想させるフレーズが印象的ですし「Zwara」にはゴクーやアマンポンドが、「Navras」にはイランやインドのアーティスト達が参加していますね。こうした民族音楽からのインスピレーションはどこで得るのですか?
「色々な国の音楽に興味があるんだ。パレットで色々な絵の具を混ぜ合わせて色をつくっていくように、色々な国の様々なエレメントを混ぜて込みたいんだよ。一ケ所に固執するのは嫌で、俺は常に新しいエレメントを求めているんだ。過去の作品で、インドの音楽を使ったジュノの曲ってないよね? 自分でも憶えていないんだけど(笑)。ウォシャウスキー兄弟(編注:“マトリックス”シリーズの監督)からインドの音楽を使ってくれ、と依頼されて初めて使ったんだよ。これまでインドについて、自分の中ではゴアのイメージが強過ぎて拒絶反応を起こしていたんだ。でもやらざるをえない状況になって、インドの音楽を聴いてみたらすごく奥深く、新鮮味が感じられたんだ」
―「Navras」ではシャンティ・マントラ(編注:古代インドの聖典“ヴェーダ”に記載されている祈りの言葉)が唱えられていますよね。
「シャンティ・マントラが唱えている暗闇から光明へと向かう内容に感銘を受けているんだ。でもこの曲で表現しているのはタイトルが表す9つの感情(編注:ナヴラスはサンスクリット語で愛、歓喜、悲しみ、怒り、勇気、恐れ、嫌悪、驚き、安らぎを表している)なんだよ」
―では最後に今後の予定を教えてください。
「今ちょうど、エイジアン・ダブ・ファウンデーションの新しいアルバムで、プロデュース的な仕事をしているんだ。それとツアーを今年の11月にメキシコで行う予定だよ。俺がコンキスタドールだな(笑)」

interview & text 高橋 亮
question 平田知昌
translation 真鍋孝太郎