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THE ORB インタビュー/LOUD131号

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アンビエント・ハウスの重鎮がKOMPAKTレーベルと奏でる、新トリップ・ミュージック


 '80年代終盤のイギリスで巻き起こっていたアシッド・ハウス&バレアリック・サウンド・フィーバーの最中に、特異な才能として登場したアレックス・パターソン。ハウス・ミュージックの手法をベースに、そこにサイケ&プログレッシヴ・ロック、レゲエ/ダブ、環境音楽、民族音楽などなど、およそ考えられる“気持ちいいサウンド”を片っぱしからミックスし、当時最も快楽的でトリッピーな音楽をつくり出すことに成功した人物だ。クラブ・シーンにおけるチルアウト/レイドバック・サウンドの元祖とも言えるだろう。アンビエント・ハウスという言葉を生み出した自身のプロジェクト、ジ・オーブで展開した音楽は爆発的な人気を獲得、セカンド・アルバム『U.F.Orb』(92年)では、なんと全英チャートNo.1に昇りつめるという快挙も達成している。THE KLF『Chill Out』やプライマル・スクリーム「Higher Than The Sun」といった名作、名曲の制作にも関わっており、その点では既にレジェンドの域に達しているとさえ言える。
 その後もコンスタントに作品をリリースし、現在に至るまでクラブ・ミュージックに様々な影響を与えてきたジ・オーブが、約2年ぶりとなるニュー・アルバム『オーキー・ドーキー・イッツ・ジ・オーブ・オン・コンパクト・ディスコ』をリリースした。タイトルからも推察できる通り、今作はドイツのレーベルKOMPAKTからリリースするために制作されたトラック集で、従来のジ・オーブ・サウンドにプラスして、KOMPAKTのカラーも打ち出された内容となっている。KOMPAKTはダビーなミニマル・ハウスやアンビエント、さらにクリック・ハウスへ向かう潮流を形成したとして注目を集めているレーベルだが、そんなKOMPAKTならではのテイストと融合した新生ジ・オーブ・サウンドは、涅槃度、彼岸度がアップしたディープなもの。トリップ・ミュージックの最先端といった趣きだ。
 旧知の仲であるトーマス・フェルマンとベルリンにて制作したという今作について、アレックス・パターソンから話をきいた。


大きいサンプルを引き伸ばしてからマッシュ状にする。それが俺の得意技だ。
そして、そこに何か変なノイズを入れる。
それをまたマッシュにかけて、加工したものを切り離していくと、完全に違う音ができあがるんだ。
このやり方でKOMPAKTっぽいノイズができる。


―今回KOMPAKTレーベルから作品をリリースするに至った経緯を教えてください。どのように交流は進んでいったのですか?
「三年くらい前だったかな、彼らに3曲入りのCDを送ったんだ。KOMPAKTっぽいと思ってね。そうしたら反応があって“1曲はイマイチだけど、残りの2曲は気に入った”ってことで話が進んでいった。それで、まず二年前にEPの「Kompassion」をやって、その後も小さい作品をちょこちょこと出してきたんだ。前作の曲「From A Distance」の限定ヴァイナル仕様はKOMPAKT系列のEXTRA KOMPAKTからのリリースだし、彼らのポップ・アンビエント・シリーズのための曲が欲しいと言われて、2003年と2005年にもEPを出してる。これは来年もやる予定だよ。だからKOMPAKTとの付き合いは結構長いんだ。元々は友達の関係で、DJ用として彼らが出している作品は、ほとんど全部持っていたしね。まあ俺自身が1995年あたりからKOMPAKTの母体的存在であるGASや、PROFANっていうレーベルの作品に夢中になっていたから、自然の流れって感じだよ」
―KOMPAKTのどんな点に魅力を感じていますか?
「まず組織として、彼らはとてもフレンドリーで結束が固い。KOMPAKTのオフィスにいる人達全員が、自分らのリリースする作品が好きだから働いているし、音楽をよくわかっている。意識が高いんだ。レーベルによっては、あらゆるタイプの音楽に手を出していたり、スタッフが音楽知識ゼロということも珍しくない。実際、そういうレーベルとも関わったことがあるよ。そう言えば昔、俺達が音楽を始めた頃、自分達で小さいレーベルをやっていたときは、本当に楽しかった。だけど、ある日メジャーのレコード会社がやってきて札束をちらつかせ始めたんだ。まるでエイリアンの襲撃を受けているのと同じくらい最悪だった(笑)」
―KOMPAKTはBASIC CHANNELと並んで、ダビーなミニマル・ハウスを極限まで押し進めた前衛的かつ先駆的なレーベルです。昨今はマイケル・メイヤーを筆頭にクリック・ ハウスと呼ばれるようなエレクトロニックなハウスでも定評があります。あなたはこのレーベルが打ち出してきたサウンドをどのように解釈していますか?
「ともかくKOMPAKTの音は常にアップデートされた内容で、今のところ先端をいっていると思う。十年前の古いテクノとかハウスとは全く違うものを聴かせてくれるね。彼らには時代に合った正しいソフト、アーティストと音を見極める力があるんだろう。音の技術面についてはトーマス・フェルマンと話すべきだな。俺は音を技術的な観点から分析しない方だし、一口にKOMPAKTの音と言っても、アーティストによって持ち味が違うから。 マイケル・メイヤーだって、KOMPAKTの枠組みの中で、彼のやり方で音をつくっているわけだしね」
―今作『オーキー・ドーキー・イッツ・ジ・オーブ・オン・コンパクト・ディスコ』ですが、前半はKOMPAKTレーベルのイメージとリンクするような独特のサウンドで、後半で美しいサウンドトラックのような、ゆったりとしたサウンドへと移行していきます。どのような内容のアルバムにしたかったのか教えてください。
「全くその通りで、前半のハードでヘヴィーなトラックから、ゆっくりと聴けるアンビエント・ワールドに移っていく流れをイメージしてつくったんだ。次のアルバムは今作の後半部分みたいな内容にしたいって思ってる。全部アンビエントでビートがほとんどない作品にしたいんだ。トーマスと俺はそれが得意だしさ。今作の終わりの方に収録されている曲「Tin Kan」には、ドラム・ベースが入っているけど、すごく軽いタッチでハッピーな曲だろ? ああいった感じがやりたい。このアルバムには、その対極にある様な超へヴィーな曲「Captain Korma」も入っているから、なんか不思議ではあるけどね」
―レコーディングはどこで行ったのですか? ドイツのベルリンですか。
「ああ、ベルリンにあるトーマスのスタジオでね」
―今作は全曲がトーマス・フェルマンとの共作です。昔からあなたは彼と組んで作品を手がけてきましたが、彼との作業で最も魅力的な部分を教えてください。
「料理してくれるところ。冗談じゃなく彼は本当に素晴らしいシェフで、レコーディングの合間に美味いランチやディナーを作ってくれるんだ。それ以外の答えが見つからないくらい最高だよ。料理はミキシングと似ているから、色々な材料の調合が上手い料理人じゃないと優れたミキサーにはなれない。だから、いろんな意味で彼が料理の達人であるところが魅力だね」
―作曲、レコーディングはどのように進めたんですか?
「曲のイメージが最初から頭の中にあるときと、色々とやっていくうちに曲ができあがっていくのと、半々くらいの割合だね。基本的には、大きいサンプルがあって、それを引き伸ばしてからマッシュ状にする。それが俺の得意技だ。そして、そこに何か変なノイズを入れる。別に楽器の音である必要はないけど、個人的にはギターの音がすごく好きかな。それをまたマッシュにかけて、加工したものを切り離していくと、完全に違う音ができあがるんだ。このやり方でKOMPAKTっぽいノイズができる」
―制作期間はどのくらいでしたか?
「二時間で完成した曲もあったな。例えば「Snowbow」と「Beatitude」は、両方ともランチとディナーの間につくった(笑)。労働の活力源として、美味い飯に勝るものはないって! “このアルバムをつくるのに費やした時間=何回トーマス・トーマス・フェルマンのディナーを食べたか”で思い出すくらいだ(笑)。制作期間は構想を練っていた期間もいれると大体一年半だけど、実際のレコーディングは三ヶ月に一回位のペースでベルリンに通って、月曜から金曜までスタジオにいたから、トータルで八週間くらいかな。トーマスのスタジオは彼の自宅の中にあって、レコーディング以外は食事をして、テレビでサッカーの生中継を観るだけの生活なんだ。俺達は二人ともサッカー狂で、音楽を愛しているから、一緒にいるのが楽しい。それは大切だし、すごく特別なことだと思うんだ。お互いのことをプラザーって呼び合ってるよ」
―今作のような“KOMPAKTっぽいサウンド”をつくるのに苦労はありましたか? やりがいや面白かったことなどもありましたら、教えてください。
「まあ大変は大変だったけど、楽しかったよ。結果として二人の男が良いムードの中でつくった作品だからね。正直言って、ああいった音は自然に発生したものなんだ。俺達がやってきたアンビエント・ハウスが、さらに自然な方向性になったというか...。最も苦労したのは、KOMPAKTの枠組みにあったものをつくらなくちゃいけないことだった。例えば、俺は超ぶっといレゲエのベースラインが入った曲とか大好きだけど、それはKOMPAKTっぽくないだろ? あとインディアンやエジプシャン・タブレット調の要素を取り入れたくても、それはKOMPAKTには合わないからNG、だとか。でも、そういったコントロールも音楽的な修行のひとつなんだよ。ヨガみたいなね。全く自由を奪われているわけじゃなくて、一つの形式の中で、どれだけ自分を表現できるかがポイントなんだ。自己鍛錬だよ。面白かったことは、さっきも言ったようにイギリスを離れてベルリンでレコーディングできたこと。特に8月はドイツではキノコが旬で、毎日美味いキノコを食べたな。ほら、イギリスはあんまり旬の野菜とかないからさ、俺にはそれがすごく新鮮に感じられるんだよ。アスパラガスの季節があったりしてね」
―ジ・オーブの音楽はとてもトリッピーで、今作でもそのトリッピーなムードは存分に発揮されているように感じます。あなたの音に対するイマジネーションの源は何なのか教えてください。また作曲の際の着想はどんなことから得ることが多いのですか?
「イマジネーションの80%は目から来て、あとの残り20%は自分自身の音づくりのテイストから成り立っている。俺は目を沢山使うんだ。常に大量のサンプルに目を光らせて、良いものを選び抜くためにね。誰も持っていないレコードを見つけて、そこからサンプルしたりインスピレーションをもらったりする。その点で、いろんな音楽にオープンでいることが大事だね。一曲まるごと聴いたら全然好みに合わないと思うものでも、その中の気に入らない要素を取り出して書き直してみたり、新しく自分のメロディーを加えることで、自分の音とノイズさえしっかり見えていれば、盗作じゃない新しい曲ができあがる。まあ、イマジネーションは色々な形で湧いてくるものだけど、そのときに自分の中で何が起こっているのかを把握することが一番大切だ。あとは人が真似したくなるような、自分だけの音づくりを心がけること。それがジ・オーブの原点だ。俺達が1991年に出したファースト・アルバムは、それまで誰も耳にしたことがない、いろんな種類の音楽が融合した音だった。そういったマルチ・カルチュラルなリンクを張った前例のないスタイルは、世間からオリジナルなものとして受け入れられた。あれから十五年経った今、同じくらい新しいことをやるのは楽じゃないよ。でも俺達はいつだってベストを尽くしてきたし、あのレコードを今聴いても良い作品だって思えるのは素晴らしいことだ」
―今後の活動予定や計画を教えてください。
「今作と同じタイミングで、もう一つのアルバム『Old Sessions』がリリースされるんだ。今までに出したアルバムの中に収録されなかった曲ばかり集めたものだよ。UKで4000枚限定で発売されるから、日本では輸入盤のみの取り扱いになると思う。あとは来年二枚アルバムを出す予定だよ」


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Okie Dokie It's The Orb On Kompakt Disco

(JPN) V2 / V2CP 153