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TIESTO インタビュー/LOUD81号

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そもそも、特にハウス以降のダンス・ミュージックはトランス的作用の強い音楽であるということを大前提にすると、じゃあトランスって一体なんなんだよ?‥・多くの人はそう思うに違いない。ギャルトラ?ビシトラ?ダチトラ?ジャートラ?ゴアトラ?それに人よってトランスのツボは違うし、その時々の気分や空気、はたまた場所やクラブ・スペースによってもトランスのツボは違うものだ。だからいちいち‘トランス’なんて言葉で括らなくてもいいじゃないの。テクノもハウスも音響もブレイクビートもトランスするじゃないか。そう、全くもってその通り。この答えはかなり有効だし限りなく真実に近い。でもこれじゃ『じゃあトランスって一体なんなんだよ?』という問いの答えにはならないのである、この2001年。誤解を恐れずに言えば、明らかにトランスはジャンルとして存在しているのが現在なのである(ただし、もちろんその境界線はないんだけど)。
 一般的には、現在のトランスとは、ハウス以降に進展してきたダンス・ミュージックにおいて(ただし、特にヨーロッパ)、ここ近年人々が最もトランス状態を感じるような音やスタイルを抽出して様式化/形式化させた音楽(その点でサイケデリック・トランスとは区別されたし)ということになるのだろうが、要するに最大公約数的だからこそ‘王道’でありキャッチーであり、いわゆるポップ・ミュージックとして通用する浸透力を持ち合わせているのが現在のトランスである。どんな人でも平易にトランス感を体験できちゃうという、こんなにもある種‘高性能’なサウンド。たから、そこでは果たして本質的にトランスできるか否かなんてことが問題なのではないことはいうまでもない。大いなる入口なのだから。フロアであの容赦ないメロディとパッドとブレイクの波に身を預けたことが一度でもある人なら分かるはずである。
 そこで、ティエストである。昨今のトランス・ブームの起爆剤となったダソチ・トランスの最高峰の一人で、昨年はデリリアム「Silence」のリミックスで、リミキサーとしてもトップに登り詰めたティエスト。そしてシステムF(フェリー・コーステン)と並ぶ双璧として、グリエラ名義では彼とタッグまで組んでいるティエストは、そんな入口としてのトランスを代弁する存在として圧倒的な人気を誇るDJである。が、ここまで前振りしておきながら、彼のアルバム『lnMyMemory』(カッティング・エッジ)は、いわゆるそんな入口としてのトランスも踏まえつつも、時としてそれとは異なるサウンドを展開している点が特徴かもしれない。言わば最小公倍数的なディープで本気でヤバいトランスの世界。それは現行のトランスのその先にあるもの、ともいえなくもない。彼のトランス感とは、やはり伊達じゃないのだ。また、そんな一面を感じさせることで、そもそもシステムFとは全くキャラクターだったということも分かる内容ともなっている。10年以上もトランスと向き合ってDJをしてきた彼ならではのトランスとは、やはりある種ジャンルを超越したものなのだろう(それは彼の【all time favourites】の欄からも分かるかも)。そんなわけで、彼のトランスを聴けば、現在のトランスを通過したうえでだが、きっと今一度根本的な部分というものを改めて感じさせてくれるに違いない。そもそも、特にハウス以降のダンス・ミュージックはトランス的作用の強い音楽で、トランスとはジャンルではないということを。アルバム制作が正に佳境という最中にDJティエストをキャッチ、新作についてきいてみた。

★アルバムのタイトルは決まりましたか?
「考えている最中で、明日レコード会社の人たちとタイルについて話し合う予定」

★自分の希望は何かあるんですか?
「85パーセントくらいの確率で『Magic Journy』になると思うけど(編注:最終的に『In My Memory』となった)」

★あと何曲ぐらい仕上げれば完成するんですか?
「今週の金曜日に2曲ミックスダウンして、来週にもう2曲やればおしまいだ。もうレコーディングは全て終わってるけど、調整をしたい曲がいくつかあってね。9曲も一気に作るのは大変だったよ。1曲作ってしばらく間をおけばインスピレーションがわくから次の曲を作るのは簡単だけど、去年は自分の曲をたくさん作っただけじゃなく、他の人の曲をリミックスしてアイディアが枯渇した。でも、アルバム制作は楽しいね。また作るけど・・・来年ね」

★手元に何曲か届いているんですけど、ダウンテンポやブレイクビーツなどもあるんですね。全体的にはどういうトーンのアルバムになるんですか?
「いろいろな雰囲気の曲が入っているアルバムだ。それぞれの曲にはストーリー性を感じさせるものがある。まとめて言うのは難しいけど、リスナーを9曲それぞれの旅へ連れて行くようなアルバムだと思ってほしい。マジック・ジャーニーなんだ。一般的に僕はトランスDJだと思われているけど、このアルバムを聴いて僕はただDJであるだけでなくてアーティストでもあると認識して欲しいな」

★トランスにこだわる理由はないということですか?
「いや、トランスといっても古いタイプのトランス・アルバムは作りたくなかったんだ。トランスにもいろいろな音があり、新しい音を作っていきたいと思った。トランス
の幅を広げてステップ・アップさせたのがこのアルバムだ」

★あなた独自のスタイルの‘トランス’ということですか。
「ああ。パーティーでDJするとき、僕はブレイクビーツをかけない。ブレイクビーツは家で聴くものだから。アルバムに入っているブレイクビーツの曲も家で聴いて欲しいと思って作ったんだ。他のトラック、ハードなトラックにはポップなものやプログレッシヴなものがあるけど、それは僕の新しいスタイルのトランス・トラックと言える」

★『Revolution』というMIXCDでは‘アップリフティング&プログレッシヴ・トランス’と銘打ってましたけど、あなたの思うトランスとは具体的にどんなサウンドなのか教えて下さい。
「うーん…自分の音を説明するのって難しい。もう僕は16年もDJをしていて、いろいろな人に会い、いろいろな音に影響されてきた。だんだんと自分のサウンドが確立されてきたんだと思うんだ。僕は音楽をジャンルではなくフィーリングで区別してる。誰が作ったのかわからない曲を聴いても『あ、これティエストの曲だ』って分かるような音、それが僕の音だと思う」

★あなたの音と他のトランスの速いの一つに、ヘヴィなべースラインがあると思っているのですが、その点に関してはどうですか?
「そうだね。クラブでダンスをする人にとってはヘヴィなべース、おなかに響いてくるような音が必要だと思ってるんだ。あとは高音もね。高い音を聴くと心が高揚する
から。自分が他の人よりも良いかどうかはわからないけど・‥自分だったらこういう曲をクラブで聴きたいというような曲を作るように心がけてる。あんまりクラブに行かない人がクラブ受けする曲を作るのは難しいだろ?プロデューサーだって同じなんだよ。家でミックス・レコードをただ聴いてマネするだけの人が多いからロクなものができないしシーンから遅れている。最近はそういうプロデューサーが多いね。もちろん例外はいるけど」
★あなたはUKをはじめヨーロッパ各地で活躍していますが、そういった経験も音にダイレクトに反映させているんでしょうね。
「もちろんだ。それぞれの国に違った特色があるからね。いろいろな人に会ってインスピレーションを受け、それが僕の考え方や人生に影響を与える。もちろん音楽にも。外国でプレイするときにはいつも最高のプレイをしなければいけないと思ってるよ。だって、例えば日本では年に3回ぐらいしかプレイしないとすると、1回でも良くなければ、みんなから何ヶ月も『この前のティエストは良くなかったね』って言われるじゃない?だから気合いが入るんだよ。いろいろな国でDJするのは楽しいよ。オーディエンスの反応も違うから。例えばイギリスではみんなブレイクダウンの前に叫ぶんだけど、オランダではブレイクの後に叫ぶんだよ」

★ちなみに、あなたにとっての究極のトランスとはどんなものなんでしょうか?
「聴いていて一時間経ってしまったことにも気付かないような音。トランス状態にさせてくれるような音ってことだよ」

★DJをしているときには、そのような状態になることが多々あるんですか?
「DJをしているときにはないよ。集中しているからね。家で音楽を聴いていてトランス状態になることの方が多い」

★今作で特にプレイした場所が反映されているようなトラックはあるのですか?
「うーん、例えば「Flight 643」は飛行機についての曲なんだけど、アムステルダムからニューヨークに行く飛行機の中でこの曲が浮かんだんだ。テーマはコントロールを失うこと。飛行機に乗ってしまえば誰もどうしようもできないだろ?そんなテーマの曲を作ってみたかったんだ。曲の中盤にノイズが入って、その後にバイアスドラムが戻ってくるところがクラブですごく受けるよ」

★‘643’って数字はフライト名だったんですね。他には?
「“suburbanTrain”はダンスフロアにおける‘旅’について・・・この曲の構成はまるで電車みたいだと思う。止まったり動いたりするところがね」

★アルバム全体を通じて一つのストーリーとしても完結しているんですか?
「終わりの無い旅かな…あいまいだけど。旅はまだ始まったばかりだ。DJが自分の音楽をつくることはとても重要だと思う。DJは今やポップスターみたいになっているけど、自分の音楽も作れないようじゃポップスターとは言えないだろう」

★そもそも何がきっかけでトランスに惹かれるようになったんですか?
「僕は自分のフィーリングに従う感情的な人間なんだ。トランスはすごく感情的な音楽だから、初めて聴いたときすぐに好きになった。それにトランスのシーンは他の
シーンよりフレンドリーだと思うんだ。残念だけど自分がいかにオシャレかということをクラブに自慢しに行くようなシーンが多いなか、トランスは違ったんだ」

★ちなみにオランダでも15歳じゃクラブに行けないんですよね?
「アハハ、うん。僕が15歳のころは、友達にミックステープを作ったり、服屋においてもらったり、友達の家のパーティーでDJしたりしていたんだ。オランダでは18歳以上じゃないとクラブにいけないんだよ」

★どんなアーティストから大きな影響を受けたんですか?
「いろいろ…若い頃はアイアン・メイデンみたいなハードロック・バンドが好きだった。ラウドネスっていう日本のハードロックバンドも好きだった」

★本当に?(笑)。
「子供のときね(笑)。そのあとヒップホップが好きになって、いろいろなジャンルをたくさん聴くようになった」

★ずいぶん音楽的な好みが変わったんですね。
「でも、ヘヴィー・メタルとトランスを客観的に聴くと、どっちもエモーショナルな音楽だと思うし、オランダではヘヴィー・メタルが好だった人がトランスを聴くようになるってことって多いんだよ。ま、オランダもそうだけど、やはりトランスを聴く人はハマるタイプの奴が多いと思う。音楽の良さは聴いてみないと分からないからね」

★では、最近のクラブ・シーンについては、どのような見解をもっているのか教えて下さい。
「トランスのシーンはこの3年間で大分変わってきた。オランダ人が作ったダッチ・トランスは一時期すごく流行ったけど、もう廃れてきた。僕はただ自分のやりたいことをやる。もちろん大きいコマーシャルなパーティーではまだ流しているし、ダッチ・トランスのサウンドが好きな人は多い。でもよくクラブに遊びに行っている人たちの中では、もっとディープなサウンドに人気あるだろ。ディープでプログレッシヴなサウンド。これはディープな音楽とコマーシャルな音楽の中間にあるサウンドだよね。オランダで大きなレイヴが最近たくさんあって、1ヶ月に2つぐらいあるんだけど、大体22歳以下の人たちはレイヴに行って、22歳以上の人たちはクラブ行くんだよ」

★自分の活躍するフィールドはコマーシャルとディープ、どちらに立脚させるべきだと思っているんですか?
「そのことは考えない。もちろんDJをしているときにはお客さんの反応を見て、もっとハードなスタイルが欲しかったらハードなレコードをかける。だから、その意味では僕はDJというよりエンターテイナーの部分もあるな。でも僕は曲を制作するときには自分の作りたい曲を作る。その曲のウケが長くてメインスリームになると嬉しいし、しかもアンダーグラウンドでもウケがいいことも嬉しいんだよ」

★人生における最終的な目的は何ですが?
「昔は僕の最終的な目的はDJになることだった。それでDJになって、オランダで一番有名DJになることにしたんだ。そして、それは達成した。そのあとは曲を制作することだったけど、それもできた。今の目標は人生を楽しむことだね」

★ところで、あなたがリミックスを辛がけ去年大ヒットしたデノリアム「Silence」についての感想は?
「僕が手がけたリミックスではそれがトップだよ。元の曲もすごく好きだし、そのリミックスのおかげでDJ活動も忙しくなったから。アルバムの制作が終わったらデイヴ・マシューズ・バンドの曲をリミックスするんだけど、今年はDJ活動が忙しいからリミックスは2つくらいしかできないね」

インタビュー 谷上史憲
翻訳      Ben Munro